アールヌーボーのジュエリーはフランスだけではありません
アールヌーボーの影響が顕著に見られるジュエリーですが、オランダで作られたジュエリーです。
うねった曲線の美しさの一方で左右対称でもあり、ヨーロッパ内陸部の影響が見られます。
下部のダイヤモンドは厚みはないですが、直径5ミリと大きさはたっぷりあります。
このローズカットダイヤモンドは完全に真円ではなくティアドロップに近い形。
この部分が自由に揺れて、その形や存在感ある大きさゆえに印象に残ります。
全体はアールヌーボーらしい「葉」をモチーフにしています。
右各3つに分かれた葉の一枚一枚に、そして左右の葉の間と真ん中のトライアングルのモチーフの中にも2石のダイヤモンドが埋め込むように深くセットされています。
縦長のトライアングルですっきりとしたシルエットです
ペンダント部分は縦長のトライアングルになっていて、その細いラインがとても洗練されています。
葉は有機的な曲線で描かれていますが、中心部分の細長のトライアングルのあたりは直線的なラインでユーゲントシュティールにつながっている動きです。
トライアングルのモチーフと台座の間には僅かにスリットが入っていて、これはもちろん削りだしています。
これだけの細さですから、難しい作業です。
そしてこのトライアングルや葉の縁には細かくミルが打たれています(縁のギザギザ)。
オランダのアンティークジュエリーは下手をするとぼてっとして垢抜けないのですが、このネックレスは繊細さがあり仕上げも精密。
レベルの高い作品です。
全体の地金は銀で、裏面がイエローゴールドバックになっています。
チェーンも銀製で、明らかにハンドメイドであることが分かるオリジナルチェーンです。
斜めから見た時にゴールドの美しい輝きが見えるのも、ゴールドバックの魅力です。
チェーンの長さは48センチ。
1890年頃のオランダ製。
動画も撮影しています。
アールヌーボーローズカットダイヤモンドペンダントネックレス(オランダ)
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知られざるアールヌーボーの本質
しなやかな曲線と自然への感性。
日本でも人気の高いアールヌーヴォー様式ですが、その「本質」は意外に知られていません。
アールヌーヴォーは19世紀末(1900年前後)、あらゆる芸術領域を席捲した装飾様式です。
ジュエリーの世界でアールヌーボーは、「貴石をシンメトリーにセッティングした従来のジュエリー作り」から「宝石的価値ではなく色によって選別した石を、美しく彫金されたゴールドにニュアンスカラーのエナメルと共にセットしたジュエリー」への脱皮をもたしました。
アールヌーボーと言うと柔らかな曲線から「ロマンチックな自然主義」と言うイメージが強いことでしょう。
しかしその根底には世紀末ならではの「デカダンス」があります。
溢れんばかりに花をつけた枝や、豊かに広がりうねる長い髪といったアールヌーボーの典型的な図柄の裏には、「自然の残酷さや死」が念頭にありました。
アールヌーボーのジュエラーとパリ万博(1900)
ジュエリー界でもっとも早く「アールヌーボー」の言葉を使い出したのは、ルネ・ラリック(Rene Lalique)。
下記は1902年にイギリスで発行された「Magazine of Art」に掲載されたルネラリックのジュエリーデッサンです。
女性の顔と睡蓮が描かれたペンダントのデッサンですが、この頃はまだルネラリックはロンドンでは広くは知られていませんでした。
1900年のパリ万博では、ルネ・ラリック、メゾン・ヴェヴェール(Maison Vever/ヴェヴェール工房)、ルシアン・ガリヤール(Lucien Gaillard)の3人がジュエリー部門でグランプリを獲得します。
下記は1900年頃に製作された、ルシアン・ガリヤールの青い鳥の髪飾り。
鼈甲とプリカジュールエナメル、目の部分にダイヤモンドが入れられています。
アールヌーボーは東洋の美意識、特に日本の芸術に強い影響を受けましたが、この作品は私たち日本人が見ても、日本的な美しさを感じる作品ですね。
この万博では、ジョルジュ・フーケ(Georges Fouquet)とウジェーヌ・フィアートル(Eugene Feuillatre)が金賞を受賞しました。
ジョルジュ・フーケは1898年にランの花をモチーフにしたジュエリーでアールヌーボーの作品を初めて手がけます。
そしてポスターアーティストのアルフォンス・ミュシャと一緒に、いくつものプレートをチェーンでつなげたジュエリーを発表します。
下記は1900年にアルフォンス・ミュシャがデザインした、宝石商ジョルジュ・フーケの店舗です。
ステンドグラスやモザイクタイルの装飾等、ミュシャがポスターの中で描いたアールヌーボーのテーマや曲線が再現されています。
今日、このインテリアショップの内装は、パリのカーナヴァル美術館で見ることが出来ます。
また同年代のジュエラーの中でルネラリックと並び賞賛を浴びていたのが、ベルギーのジュエラーであるフィリップ・ウォルファー(Philippe Wolfers)です。
アールヌーボージュエリーに関して更に詳しい情報は、アールヌーボー(アールヌーヴォー)のアンティークジュエリーの特徴と魅力をご参照ください。
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