ベルエポック時代のハートペンダント
このような丸すぎない、洗練されたハートシェイプのペンダントはフランス、ベルエポック時代のジュエリーで見られます。
シェルシュミディでもこれまで何度か類似したものを扱ってきましたが、似ていても2つとして同じものはないのです。
こちらのペンダントで描かれているお花は、花の垂れている感じがスズランに見えます。
鈴蘭はアールヌーボー期に特に好んでモチーフにされた花です。
フランスでは5/1に愛する人へすずらんの花を贈る習慣があります。
そんな幸せを象徴する花であるため、ハートモチーフの中に描かれることが特に多い花です。
5つの花が垂れていて、2つが彫金、2つが真珠、中心の1つにはガーネットがセットされています。
明るさのあるきれいな赤色のガーネットです。
2カラーゴールドの金細工
金細工も、この時代のフランスらしいレベルの高さです。
全体はイエローゴールドですが、花の上部の部分が少しグリーンを帯びたグリーンゴールドになっていて、この部分の彫金が細やかで見応えがあります。
このようなカラーゴールドのジュエリーは、フランスのアンティークジュエリー以外ではまず見られません。
そのためかイギリスの市場ではちょっと驚くような価格で取引されているのを見ます。
カラーゴールドのジュエリーは、フランスのジュエリーでも製作された年代が限られていて、アールヌーボーの頃か19世紀初頭のジュエリーに見られます。
全体は、鏨(たがね)打ちで細かく艶消しが施されていてマットな質感です。
丸すぎず可愛すぎない、ほどよくふっくらとしたシルエットが魅力的なペンダントです。
ロケットのようにも見えるシルエットですがロケットではなく(開きません)、ペンダントです。
1900年頃のフランス製。
18カラットゴールド。
注:チェーンは付いていません。
動画も撮影しています。
アンティークハートペンダント(カラーゴールド ガーネット)
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アンティークジュエリーの中には、個人的な愛情や思い出を表現したセンチメンタルジュエリーと呼ばれるジュエリーが存在します。
センチメンタルジュエリーは大きく分けて「宗教的な信仰を誓うもの」「故人を偲んだモーニングジュエリー(mourning jewelry)」「愛する人との永遠の愛を誓うジュエリー」に分けられます。
ここではラヴジュエリーについて書きますが、モーニングジュエリーについては下記をご参照ください。
センチメンタルジュエリー モーニングジュエリー(mourning jewelry)
センチメンタルジュエリーがヨーロッパで製作されはじめたのは1800年前後からです。
下記は18世紀末のハートモチーフの胸飾り。
後ろの構造から元々衣類に縫い付けられていたものと思われます。
ロケットやブレスレットのクラスプに、小さな肖像画を入れたセンチメンタルジュエリーもイギリスで1830年頃に流行します。
目だけ描かれた肖像画をジュエリーにするというのも1780年代から流行します。
ポイントは肖像画に描かれた人を特定するのが難しく、秘密にできるということです。
下記はヴィクトリアアルバート美術館所蔵の「lover's eye」のブローチ。
製作年度は1800-1820年。
(c)Victoria and Albert Museum, London
フランスでもセンチメンタルジュエリーは作られましたが、数は少ないです。
またイギリスのやや大げさなほど「約束」を前面に出したものではなく、ハートや花などのモチーフ(そのモチーフが持つメッセージ性)を上手に生かしたもの。
手で愛情を表現したものなども好まれました。
センチメンタルジュエリーは、文字が彫られたものもあります。
下記は当店で販売済みのシール(印章)。
「plus loin plus serre(離れれば離れるほど(心は)近くに)」というロマンティックな愛の言葉が彫られています。
またセンチメンタルジュエリーのラヴジュエリーのモチーフの一つとして人気が高かったのが、ハートです。
ハートの起源は古く、中世にまで遡ります。
キリストが「自らのハートを人々への愛の証として見せる」ということから始まります。
心臓は愛と感情が宿る大切な場所ということで、ハートモチーフのジュエリーは愛情や幸福を象徴しています。
下記は当店で販売済みのダブルハートのペンダント。
エナメルで描かれた花はパンジー(pensee)、花言葉は「私を想って」です。
下記はイギリス、ヴィクトリアアルバート美術館所蔵のハートモチーフのリガード(Regard)ペンダント。
ハートと南京錠で、「あなたが私のハート(心)の鍵を握っている」と言うメッセージを伝えています。
また使用されている宝石は左からルビー(ruby)、エメラルド(emerald)、ガーネット(garnet)、アメジスト(amethyst)、ルビー(ruby)、ダイヤモンド(diamond)でその頭文字をとって「Regard」のメッセージが込められています。
(c)Victoria and Albert Museum, London
下記もイギリス製のダブルハートのペンダントで、ヴィクトリアン後期の製作です。
ダブルハートと鍵がモチーフの何ともロマンチックなモチーフです。
ハート以外に、「手」も愛を表すモチーフです。
センチメンタルジュエリーと言えば「REGARD」を抜きに語ることはできません。
宝石を並べるとそこには「REGARD(敬愛)」のメッセージが浮かびます。
R(ルビー) E (エメラルド) G (ガーネット) A(アメジスト) R(ルビー)D(ダイヤモンド)。
このような宝石の頭文字を取って表現されたジュエリーとしては「REGARD」の他には「DEAREST」などがあります。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。