とても珍しいロングチェーンのセンチメンタルジュエリー
19世紀前半(1820-30年頃)のフランス製。
アンティークチェーンの大半は19世紀後期に作られたものなので、ひときわ古いロングチェーンです。
何と言っても、チェーン部分と留め具部分の間にある「手のモチーフ」が貴重です。
花綱を、ものすごくしっかり握り締めている様子が表現されています。
横幅4ミリ程(手首まで入れた手の縦幅が1センチ強)の小さな面積の中で、握り締めた親指、手の窪み、指一本ずつリアルに表現した素晴らしい彫金技術が見事です。
手首部分や花綱は立体的でデコラティブ。
19世紀らし美しいセンチメンタルジュエリーです。
古代を想わせる変わったチェーンの網み
落ち着いた色合いのチェーン部分も味わい深いです。
1ミリx2ミリの細身で細かな編み目のチェーンは、前後左右に透かしが入った凝ったもの。
四角形のあまり見ないタイプの形です。
ゴールドのマットな色合いといい、当時流行していた古代回帰の中で作られたチェーンなのでしょう。
手にするとにチェーンが滑らかにすべり、その滑らかさに驚かされます。
手首部分からチェーンが二手に分かれているのも粋。
全体は65.5センチの長さですが、チェーン部分が2重になっているため(ここには留め具はないの、ばらばらにはなりません)、留め具を留めない状態で首に通せば、長さ130センチ近くの一重のロングネックレスになります。
留め具のところもとても凝った作りです。
留め具のネジを回転させ緩めてから、留め具を横にスライドさせることで開閉する作り。
ネジを巻き戻せばロックされるので安心です。
マットで落ち着いた色合いの地金はすべて18Kゴールド。
ネックレスとしても秀逸ですが、一番下の写真のように細身でマットなチェーンを活かしてブレスレットのようにアレンジしてもとても素敵です。
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アンティークジュエリーの中には、個人的な愛情や思い出を表現したセンチメンタルジュエリーと呼ばれるジュエリーが存在します。
センチメンタルジュエリーは大きく分けて「宗教的な信仰を誓うもの」「故人を偲んだモーニングジュエリー(mourning jewelry)」「愛する人との永遠の愛を誓うジュエリー」に分けられます。
ここではラヴジュエリーについて書きますが、モーニングジュエリーについては下記をご参照ください。
センチメンタルジュエリー モーニングジュエリー(mourning jewelry)
センチメンタルジュエリーがヨーロッパで製作されはじめたのは1800年前後からです。
下記は18世紀末のハートモチーフの胸飾り。
後ろの構造から元々衣類に縫い付けられていたものと思われます。
ロケットやブレスレットのクラスプに、小さな肖像画を入れたセンチメンタルジュエリーもイギリスで1830年頃に流行します。
目だけ描かれた肖像画をジュエリーにするというのも1780年代から流行します。
ポイントは肖像画に描かれた人を特定するのが難しく、秘密にできるということです。
下記はヴィクトリアアルバート美術館所蔵の「lover's eye」のブローチ。
製作年度は1800-1820年。
(c)Victoria and Albert Museum, London
フランスでもセンチメンタルジュエリーは作られましたが、数は少ないです。
またイギリスのやや大げさなほど「約束」を前面に出したものではなく、ハートや花などのモチーフ(そのモチーフが持つメッセージ性)を上手に生かしたもの。
手で愛情を表現したものなども好まれました。
センチメンタルジュエリーは、文字が彫られたものもあります。
下記は当店で販売済みのシール(印章)。
「plus loin plus serre(離れれば離れるほど(心は)近くに)」というロマンティックな愛の言葉が彫られています。
またセンチメンタルジュエリーのラヴジュエリーのモチーフの一つとして人気が高かったのが、ハートです。
ハートの起源は古く、中世にまで遡ります。
キリストが「自らのハートを人々への愛の証として見せる」ということから始まります。
心臓は愛と感情が宿る大切な場所ということで、ハートモチーフのジュエリーは愛情や幸福を象徴しています。
下記は当店で販売済みのダブルハートのペンダント。
エナメルで描かれた花はパンジー(pensee)、花言葉は「私を想って」です。
下記はイギリス、ヴィクトリアアルバート美術館所蔵のハートモチーフのリガード(Regard)ペンダント。
ハートと南京錠で、「あなたが私のハート(心)の鍵を握っている」と言うメッセージを伝えています。
また使用されている宝石は左からルビー(ruby)、エメラルド(emerald)、ガーネット(garnet)、アメジスト(amethyst)、ルビー(ruby)、ダイヤモンド(diamond)でその頭文字をとって「Regard」のメッセージが込められています。
(c)Victoria and Albert Museum, London
下記もイギリス製のダブルハートのペンダントで、ヴィクトリアン後期の製作です。
ダブルハートと鍵がモチーフの何ともロマンチックなモチーフです。
ハート以外に、「手」も愛を表すモチーフです。
センチメンタルジュエリーと言えば「REGARD」を抜きに語ることはできません。
宝石を並べるとそこには「REGARD(敬愛)」のメッセージが浮かびます。
R(ルビー) E (エメラルド) G (ガーネット) A(アメジスト) R(ルビー)D(ダイヤモンド)。
このような宝石の頭文字を取って表現されたジュエリーとしては「REGARD」の他には「DEAREST」などがあります。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
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