乗馬用鞭(むち)
珍しいコンセプトのジュエリーです。
モチーフはフランス語で「Cravache」と呼ばれる、乗馬用鞭(むち)です。
騎手(ライダー)が馬を早く走らせるために使う棒のことです。
ヨーロッパにおいて馬は神聖な動物。
古くはギリシア神話でたくさんの「馬」が登場します。
ヨーロッパで馬術は既に16世紀に始まり、1866年にはフランスで馬術の競技会が行われた記録があります。
こんなエメラルド尽くしの贅を尽くした鞭(ホイップ)まで作ってしまうのも、納得です。
透明度の高い美しいエメラルド
エメラルドは6石。
透明度の高い、明度のある美しいエメラルドです。
エメラルドは結晶の多い宝石ですので、これほど目だった内包物がないエメラルドは少ないです。
石と石の間は遮りのないカリブレカットにされています。
石と石の間に隙間がない、完成度の高いカリブレカットです。
続いて棒の部分にダイヤモンドがぎっしり敷き詰められています。
何とその数10石。
すべてローズカットにされています。
細い棒の中に埋め込むようにダイヤモンドをセットし、縁にはミルグレインが打たれています。
全体はイエローゴールドで、ダイヤモンド周りの表層のみがプラチナになっているデリケートさ。
ホイップ(鞭)のシルエットもミニチュアのように忠実に再現されており、高貴な馬文化が背景に感じられる作品です。
1900年-20世紀初頭のフランス製。
18カラットゴールド。
注:チェーンは付いていません。
動画も撮影しています。
ホイップ(乗馬用鞭)のペンダント(エメラルド)
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アンティークジュエリーで使われる貴重な宝石の一つにエメラルドがあります。
ベリル宝石の一種で、同種の宝石にアクアマリンがあります。
5月の誕生石であり、心に安らぎを与える「愛の石」としても有名なエメラルド。
エメラルドの歴史
エメラルドの宝石としての歴史は、紀元前4000年前のバビロンまで遡ります。
これは宝石の中で最も古い歴史といわれており、エメラルドはまさに人類最古の宝石なのです。
バビロンとは、現在のイラク周辺にあたります。
当時バビロンはバビロニア帝国の首都でエメラルドは既にこの時代に「ヴィーナスに捧げる宝石」として取引があったという、文献が残っています。
エメラルドの最古の採掘場があったのはエジプトと言われていますが、エジプトの女王クレオパトラもまた、エメラルドの魅力に取り付かれた人物です。
自らエメラルドの鉱山を所有して宝飾用や、砕いて粉末状にしてお化粧用のパウダーとして使用したと言われています。
かのジュリアスシーザーが、その若さを保つためにこよなく愛したことでも知られています。
古くはインカ帝国でも既にエメラルドが使われていたそうです。
エメラルドはまたヨーロッパの王族にも愛された宝石です。
下記は19世紀初頭、 アンリ・ドルレアン (オマール公)(1822-1897)が所蔵していたエメラルドのネックレスです。
c) Christies
エメラルドの組成
エメラルドは性質の異なる火成活動が重なることで始めてできる宝石です。
貴石の中でもインクルージョンに富む宝石で、「石れい」と呼ばれる内包物や、細かい傷があるのが一般的です。
「欠点のない人はいないのと同じように、 エメラルドの完全無傷の石はない」とよく言われるとおり、エメラルドの組成上インクルージョンは避けられないものです。
現代ではそもそも良い品質のエメラルドが取れなくなってきているということもあり、
それらの欠点を補うために、ほとんどの物がオイルトリートメント処理をされていますが、オイル処理が本格化するのは戦後ですのでアンティークジュエリーで用いられているエメラルドは(それらが取り替えられていない限り)、オイル処理はそれほどなされていません。
また戦後のエメラルドでオイル処理よりずっと問題なのは、しかし、色を濃くするために石を色づけしていまうこと。
これは石自体を変えてしまうことになりますから、宝石の価値に大きく影響します。
コロンビア産エメラルド
1538年からスペインの開拓者たちがコロンビアでエメラルドを採掘し、世界中に輸出をします。
アンティークジュエリーでは、コロンビア産と思われるエメラルドをよく見ることができます。
下記は数年前にササビーズで高額な値段で取引された17世紀初期、ルネサンスの頃のスペインのジュエリー。
コロンビア産のエメラルドが用いられています。
下記は当店でエメラルドの胸飾り。
やはりイベリア半島のジュエリーです。
大航海時代、コロンビアで採れるエメラルドを制していたのはスペインとポルトガルでした。
当時のイベリア半島のジュエリーの一部で、コロンビア産の良質なエメラルドを見ることができます。
コロンビアエメラルドの色と鉱山
初期のエメラルドは、コロンビア西部にあるMuzo鉱山から来ています。
初期のMUZOエメラルドはその素晴らしい温かみのある色が特徴です。
その柔らかい温かみのある色の秘密は、石にほんの僅かに含まれる黄色の色素です。
MUZO鉱山のエメラルドは早々に枯渇して、それ以降に採掘されたコロンビア産のエメラルドはChivor鉱山のエメラルドになります。
Chivor鉱山のエメラルドは、Muzoのエメラルドに比べて僅かに青みを帯びています。
以降、Chivor鉱山も枯渇してそれ以降に採れたエメラルドは、上記の2つの鉱山のエメラルドに比べて暗い色になります。
モダンジュエリーに用いられているエメラルドはこれらのエメラルドです。
コロンビア産以外のエメラルド
コロンビアエメラルド以外のアンティークジュエリーで使われうるエメラルドの産地としては古くはエジプト、そしてロシア(1830年代にウラル山脈で発見される)です。
下記は1840年頃のフランス製エメラルドの指輪です。
ロシア産の淡い緑色のエメラルドが用いられています。
ブラジルでもエメラルドは取れますが、20世紀に入ってから鉱山が発見されていますので、アンティークジュエリーにはほとんど使われていません。
エメラルドのカッティング
エメラルドのカッティングはスクエアのいわゆる「エメラルドカット」にされることが多いです。
これはなぜかと言いますとエメラルドの組成上、四角形のいわゆるエメラルドカットが一番無駄がないからです。
下記はアールデコ期の非常に短い期間にカルティエなどのハイジュエラーが好んだカリブレカットに施されたエメラルド。
やはりスクエアカットにしたエメラルドを爪を用いずにセットしています。
こちらもエメラルドのアールデコリング。
やはりエメラルドがカリブレカットにされていますが、エメラルドのカリブレカットはルビーやサファイヤに比べても圧倒的に難易度が高く少ないです。
下記は1880年頃のエメラルドとダイヤモンドのペンダント。
数年前にクリスティーズのオークションに高値で出展されていました。
エメラルドカットのダイヤモンドと洋ナシの形にカットされたエメラルドでショーメのサイン入り。
これだけの作品でありながらエメラルドは完全な透明でないことがお分かりいただけますでしょうか?
エメラルドは組成上、ある程度の大きさになりますとインクルージョンは避けられなくまったくの透明であることが難しい宝石です。
アンティークジュエリーでは円形にカットされたものなど、現代のエメラルドジュエリーではあまり見ないカッティングの石も存在します。
下記は当店にて販売済みのカボションカットされたエメラルドです。
カボションカットにするということは、光の反射に頼らない分、資質の良い宝石が必要になります。
それが前述しましたように組成上、インクルージョンが多くなりがちなエメラルドでカボションすると言うのはきわめて高品質なエメラルドが必要になります。
カボションカットされた美しいエメラルドは特に20世紀初頭、カルティエの作品で時々見られますが、アンティークジュエリーにおいてもきわめて稀な存在です。
エメラルドの価値
宝石の価値を損ねてしまう人口処理がなされていないカラーストーンは、近年すざまじく値上がりしています。
特にルビー、そしてエメラルドはその代表です。
天然のカラーストーンの価値が上がるにつれて、無処理のアンティークジュエリーのカラーストーンも(残念ながら)評価が高まっています。
下記は当店にて販売済みの18世紀のエメラルドの指輪。
これだけ古い時代のしかもある程度大きさのあるエメラルドが用いられたジュエリーをご紹介するのは非常に困難になってきています。
アンティークジュエリーで特に石にある程度大きさのあるエメラルドのジュエリーは今後ますます貴重になっていくでしょう。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。