希少なアールヌーボーのサインドピース
1902年に開催された装飾展示会「L'Art Decoratif au Salon de 1902」の刻印の入ったアールヌーボーのリング。
作家J Guerinのサインが入った、サインドピースです。
アールヌーボー期には作家性の強いジュエリーが作られますが、実際に署名の入った「サインドピース」はとても少ないことで知られています。
とりわけペンダントやブローチに比べてアールヌーボーの指輪は数が少なく一層希少です。
これはプロの中では知られた事実で、この指輪を仕入れた後にイギリスやフランスのディーラーの仲間たちに見せたところ「指輪というところがまた良いね」と皆さん、口々におっしゃいます。
アールヌーボーのリングがまず希少で、またアールヌーボーで実際に作家のサインが入ったものも希少とダブルで希少なのです。
刻印からは「Salon 1902 J Guerain」と読めます。
アールヌーボージュエリーの王道を行く題材
指輪のモチーフは、女性と草花です。
豊かに広がりうねる長い髪を持つうっとりするほど美しい女性の姿は、アールヌーボー気に好まれた典型的な絵柄です。
また女性の座っている曲線たっぷりで豊かに広がる草花は、新たな生命をその身に宿すという観点から、「女性」と同様にアールヌーボーの作家に好まれて描かれた題材です。
触れると重量感もたっぷりあることが伝わってきます。
実際平均的なアンティークリングの3倍ほどの重さがあります。
滑らかで重みがあり触れるからにクオリティーの高さが伝わってくるジュエリーです。
18カラットゴールド。
フランス製。
指輪サイズは9号(有料でサイズ直し可)。
動画も撮影しています。
アールヌーボー サイン入りリング J Guerin(1902年)
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知られざるアールヌーボーの本質
しなやかな曲線と自然への感性。
日本でも人気の高いアールヌーヴォー様式ですが、その「本質」は意外に知られていません。
アールヌーヴォーは19世紀末(1900年前後)、あらゆる芸術領域を席捲した装飾様式です。
ジュエリーの世界でアールヌーボーは、「貴石をシンメトリーにセッティングした従来のジュエリー作り」から「宝石的価値ではなく色によって選別した石を、美しく彫金されたゴールドにニュアンスカラーのエナメルと共にセットしたジュエリー」への脱皮をもたしました。
アールヌーボーと言うと柔らかな曲線から「ロマンチックな自然主義」と言うイメージが強いことでしょう。
しかしその根底には世紀末ならではの「デカダンス」があります。
溢れんばかりに花をつけた枝や、豊かに広がりうねる長い髪といったアールヌーボーの典型的な図柄の裏には、「自然の残酷さや死」が念頭にありました。
アールヌーボーのジュエラーとパリ万博(1900)
ジュエリー界でもっとも早く「アールヌーボー」の言葉を使い出したのは、ルネ・ラリック(Rene Lalique)。
下記は1902年にイギリスで発行された「Magazine of Art」に掲載されたルネラリックのジュエリーデッサンです。
女性の顔と睡蓮が描かれたペンダントのデッサンですが、この頃はまだルネラリックはロンドンでは広くは知られていませんでした。
1900年のパリ万博では、ルネ・ラリック、メゾン・ヴェヴェール(Maison Vever/ヴェヴェール工房)、ルシアン・ガリヤール(Lucien Gaillard)の3人がジュエリー部門でグランプリを獲得します。
下記は1900年頃に製作された、ルシアン・ガリヤールの青い鳥の髪飾り。
鼈甲とプリカジュールエナメル、目の部分にダイヤモンドが入れられています。
アールヌーボーは東洋の美意識、特に日本の芸術に強い影響を受けましたが、この作品は私たち日本人が見ても、日本的な美しさを感じる作品ですね。
この万博では、ジョルジュ・フーケ(Georges Fouquet)とウジェーヌ・フィアートル(Eugene Feuillatre)が金賞を受賞しました。
ジョルジュ・フーケは1898年にランの花をモチーフにしたジュエリーでアールヌーボーの作品を初めて手がけます。
そしてポスターアーティストのアルフォンス・ミュシャと一緒に、いくつものプレートをチェーンでつなげたジュエリーを発表します。
下記は1900年にアルフォンス・ミュシャがデザインした、宝石商ジョルジュ・フーケの店舗です。
ステンドグラスやモザイクタイルの装飾等、ミュシャがポスターの中で描いたアールヌーボーのテーマや曲線が再現されています。
今日、このインテリアショップの内装は、パリのカーナヴァル美術館で見ることが出来ます。
また同年代のジュエラーの中でルネラリックと並び賞賛を浴びていたのが、ベルギーのジュエラーであるフィリップ・ウォルファー(Philippe Wolfers)です。
アールヌーボージュエリーに関して更に詳しい情報は、アールヌーボー(アールヌーヴォー)のアンティークジュエリーの特徴と魅力をご参照ください。
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