一目でアルルのジュエリーであることが分かります
南仏アルルのビジュードプロヴァンスです。
二重に波状に広がる花びら、細い波状に削りだした金細工のジュエリー、南仏の中でもアルルのジュエリーであるということがすぐに分かります。
これまで何度か類似した、指輪及びピアスを扱ってきました。
いずれも中心にはダイヤモンドが用いられるのも特徴です。
花びらは二重に描かれていますが、このゴールドの色が純金に近い色であることも特徴です。
ハートの形のダイヤモンド
透明度の高い強い煌きのダイヤモンドが用いられています。
実はアルルはフランスで唯一、ダイヤモンドが採れた地です。
もちろん今は枯渇しています。
アルルのジュエリーの大半は宝石がダイヤモンドで、それらのダイヤモンドがいずれもこの時代には類を見ないほど透明度が高いのはアルルのダイヤモンドが用いられているからです。
(19世紀後期までフランスのそれ以外のアンティークジュエリーでは、大概もっと透明度の低いインド産のダイヤモンドが用いられています。)
ローズカットにされていますので、通常でしたらこの時代のダイヤモンドはこのような強い透明感はないはずですが、アルルのダイヤモンドは抜群に煌きがあります。
またこの時代、ローズカットは破片のように薄いことが多いですが、とても厚みのあるダイヤモンドが用いられています。
ダイヤモンドは少し角ばったハートのような形をしています。
元々このような形のダイヤモンドがあり、その形をいかし周りを囲うようにダイヤモンドをセットしたのでしょう。
他に例を見ない、魅力的な形のダイヤモンドを、お花の形の台座が囲います。
19世紀の初期ー中期のフランス製。
指輪サイズは13号(有料でサイズ直し可)。
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フランスの地方ジュエリー
フランスのアンティークジュエリーの大半は、パリを中心とした貴族社会を中心に展開します。
しかし地方特有の特徴が見られるジュエリーもあります。
地方ジュエリーと中央のジュエリーとの発展とは大きな違いがあります。
それはパリを中心にしたジュエリーは常に、貴族社会から展開していること。
一方で地方のジュエリーは17世紀までは貴族の装飾様式を模しながら、既に18世紀初頭からその地域特有の発展を見せ、その地域の有力な商家がその主役になっているところです。
そうした意味でいわゆる貴族的なソフィストケートとはまた異なった魅力を持ちます。
下記はプロの中で「良書」として長く愛好されてきたフランスの地方ジュエリーに関する本ですが、残念ながら今は廃盤です。
(フランスは歴史的に中央の政治戦略が強く、地方特有の衣装や装飾品は、長年あまり研究の進まなかったという側面を持っています)。
表紙になっているのはMariette Dayreの肖像画(1860年)。
南フランス、アルルのアルラタン博物館に所蔵されています。
この地域特有の衣装と、ソートワール(ロングネックレス)に3連になった短いネックレス。
大きめのイヤリングピアスにブローチ、髪飾りと当時のアルル地域の貴婦人のジュエリーを今に伝えてくれる絵画です。
ビジュードプロバンスの歴史
地方ジュエリーがもっとも豊かにみられるのは南仏(プロバンス、プロヴァンス)です。
南仏には特有の文化や衣装が発達し、経済的に豊かな場所でした。
この地域で作られたジュエリーを「ビジュードプロバンス(bijoux de provence)」と呼びます。
南仏と言っても広いのですが、いわゆる「プロヴァンス地方」の西のエリア。
特にフランスの中央から独立していた時代も長く経済的に豊かであったアルル(
アルルはフランスではおそらく唯一、少量ながらダイヤモンドが採掘された地域でもあります)、あとは港を持ち地中海貿易の中心地として発展したマルセイユ、プロヴァンス公国の首都であったエクサンプロヴァンスです。
この地域では、既に16世紀に「地域特有の衣装」が作られ始め、18世紀の後半には定着します。
ジュエリーは、必ず衣装(コスチューム)と共に発展するため、フランスで地方特有のジュエリーが生まれる可能性を最も多く持ったのがこのプロヴァンス地域でした。
地方ジュエリーが大きく発展するのは、18世紀を通じてです。
下記は画家Antoine Raspal(1738-1781)によるアルルの女性の肖像画。
Granat美術館所蔵。
胸元にマルタの十字架、腕にブレスレットが描かれています。
様々なビジュードプロバンス
以下にビジュードプロヴァンスの典型的なジュエリーをいくつか挙げます。
アルル地域で作られたアルルのダイヤモンドのリビエールネックレス。
こちらも南仏のネックレスでとても古い時代のものです。
こちらは南仏のストマッカー。
ストマッカーと言いますとノルマンディー地方のジュエリーのイメージが強いかもしれませんが、南仏特有のストマッカーも少なからずあります。
南仏のリングは特徴的で、下記のリングは二重に波状に広がる独特の花びらの作りでアルルのリングであることが分かります。
ビジュードプロヴァンスに、十字架(クロス)の比率はとても多いです。
なぜならこの地域では、クロス(あるいはソートワール)こそが「富の象徴」であったからです。
プロヴァンスの十字架にはいくつかのとても特徴があるデザインが見られます。
例えば下記は、当店で販売済みの「Croix Capucines」と呼ばれるタイプのもので、コーン型の頂上に小さなローズカットダイヤモンドをセットします。
また南仏のクロスでは、キリストは描かれません。
下記も南仏の特徴が出たクロスです。
花の形をしたモチーフで描かれたクロスは、19世紀末から見られます。
モチーフの底部に黒いエナメルが入れられたものも南仏のクロスでよく見ることができます。
南仏のソートワール
南仏プロヴァンスでは、ソートワールの「連の多さ」は社会的ステータスを表すと考えられていました。
そしてチェーンに十字架やメダル(メダイヨン)、時には時計を通しました。
時計を通すときはあらかじめ胸の辺りにそれ用の小さなポケットも作られました。
下記は1900年頃の絵葉書で描かれた「アルルの女性たち」。
当時のソートワールの装いが分かる一枚です。
マルセイユでは、子供が生まれるごとにこの連を一つずつ足していきました。
下記は1866年に描かれたマルセイユの女性。
首に何連ものチェーンを重ねています。
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