よくピアスで見るタイプのセッティングです
とても珍しいデザインのリングです。
このような真珠のセッティングは通常、同時代のアンティークピアスでよく見かけます。
最初ピアスから加工されたものかなと思いましたが、刻印も入っていますしオリジナルです。
類似したピアスとセットで作られたものかもしれまんせん。
天然真珠を複数のゴールドの爪で留めています。
色も良いきれいな艶のある真珠です。
その左右両側には小さな真珠で合計4粒の真珠です。
小さい方の真珠ははフクリン留めされています。
横から撮影した写真を見ると分かりやすいですが、ゴールドの輪っかを使って正面から見た時に高さが整うようにしています。
フルールドリスの爪
メインの大きな真珠2粒のセッティングが特に特徴的です。
台座から長く伸びた細いゴールドの爪はフルールドリス(百合の紋章)になっています。
真珠の大きさに対して長く存在感のある爪で、爪が装飾の役割も果たしています。
小さい方の真珠の台座はちょっとおどろくほど長い筒状になっています。
高さを出すためです。
面白い作りの見応えのあるリングです。
メインの真珠が直径3ミリ程と小ぶりですが、指輪自体は小さくなく堅牢でしっかりとした作りで、重さもしっかりあります。
19世紀後期のフランス製。
18カラットゴールド。
指輪サイズは17号です(有料でサイズ直し可)。
動画も撮影しています。
天然パール アンティークゴールドリング(フルールドリス)
小さな写真をクリックすると大きな写真が切り替わります。
百合とフランス
フランスでの百合の歴史は、フランク一族の王が天使からユリを授けられたという5世紀の伝説にまで遡ります。
「クローヴィスがアラマン族との戦いに苦戦していた時、天使が現れて百合を渡すると軍の士気が上がりアラマン族を撤退させることができた」と言われています。
ブルボン家が、白ゆりを尊び王家の権力の印がユリで飾ったのは、この伝説に由来すると言われています。
他にも百合の花は、ルイ9世は十字軍遠征の際に用いられたり、ジャンヌ・ダルクが持っていた旗に刻まれたりと、フランスの重要な歴史の局面に頻繁に登場してきます。
百合はまた聖母マリアを表し、中世以降の芸術には、マリア像の周囲にはユリの花がよく見られます。
下記はユリをモチーフにしたブローチ。
フルールドリス
フランス国王の紋章は白百合「フルール・ド・リス(fleur de lys)であるということをご存知の方も多いでしょう。
フルール・ド・リス(fleur-de-lys/fleur-de-lis )はフランス語で「ユリの花」を意味し、アイリスの一種を様式化したものです。
フルール・ド・リスはフランスの王家の紋章でした。
王政から共和制に移ったとき、共和制はフランス王家の象徴であったフルール・ド・リスを公式には使用しませんでした。
しかしながら現在でも、フルールドリスはフランスの永遠のシンボルで、Lys(百合)はフランスの国花です。
宗教的にも、フルール・ド・リスは聖三位一体の象徴であるとされています。
下記は18世紀のフルールドリスのブローチ。
フランス以外のフルールドリス
ところでフルールドリスというとフランスのイメージが強いと思いますが、それ以外のヨーロッパの国でも愛されてきたモチーフです。
例えば、フィレンツェの紋章にも使われています。
フルール・ド・リスのアンティークジュエリーは、純粋にジュエリーのモチーフとしても非常に美しい様式です。
左右対称のシンメトリーなシルエットは身に着けたときにしっくりと落ち着き、正統で品の良い趣を与えてくれます。
下記は推定ロシア製のペンダントで、石と石の間にフルールドリスが刻まれています。
フルールドリスのジュエリーの持ち主
フランス王家のシンボルと言うことで、「フルールドリスのアンティークジュエリーの持ち主は王族などの特別な人のものだったのではないか?」といったご質問も時々頂きます。
実際、フルールドリスをモチーフにしたジュエリーは非常に少ないです。
古い時代になればなるほど、18世紀には王家とゆかりのある人しかフルールドリスのジュエリーを身に着けることは許されなかったでしょう。
しかしフルールドリスのモチーフ自体は、王政が消滅した後も作られつづけます。
例えば最後の貴族文化を誇ったベルエポックの時代には、古典的なモチーフが好まれたということもあり、美しいフルールドリスのアンティークジュエリーが生み出されています。
先に書いたとおり、王政から共和制に移ったとき、共和制はフランス王家の象徴であったフルール・ド・リスを公式には使用しませんでしたから、共和制に入ってからはフルールドリスは「公的には」革命前のように「フランス王家の存在」を表すことはありませんでした。
下記はベルエポック時代の優美なフルールドリスをモチーフにした指輪。
しかしではボウノット(蝶結び)や他のお花のような他のジュエリーモチーフと同じであったかと言うとやはり異なります。
王政が終わりフルールドリスがかつてのように公にはフランス王家を称するものではなくなっても、フルールドリスを表したジュエリーを身に着けることにより、王党派であることを「密やか」に現した面があるようです。
フルールドリスは指輪のショルダー部分など、一見あまり分からないところに描かれていることもあるのですが、それはやはり密やかな主張のためだったのかもしれません。
そうした意味では、後年になって作られたフルールドリスもやはり、フルールドリスのジュエリーを所有する人は限られていたと考えられます。
フランスの歴史の中では、こうした「モチーフ」が秘められた言葉になり、その人の信条や出自を示すことがあります。
フルールドリスのアンティークジュエリーは、フランスの歴史の中で他のモチーフにはない背景を持ったジュエリーであるといえます。
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