ハーフ真珠とローズカットダイヤモンド、19世紀ならではの組み合わせが愛しい指輪
1900年頃に流行するクロスオーバーリングの変形の一つですが、1900年より少し前の、19世紀後期に作られた作品だと推定できます。
天然真珠はハーフカットされています。
大小さまざまな大きさの真珠が3石使われていますが、それぞれかなり色合いが異なるのも面白いです。
特に一番大きいハーフパールがブルーグレイを帯びた珍しい色、艶があり神秘的です。
ダイヤモンドはこちらも大小様々ですが、いずれもローズカットされています。
指輪そのものが細身で小さめなのですが、ダイヤモンドは意外に大きさがあり、最大の石は直径3.5-4ミリ程あります。
しかもこうした複数のローズカットを用いたジュエリーでは、ローズカットダイヤモンドが破片のように薄いことが多いのですが厚みもあり、そのため深みのあるシンチレーションが出ています。
石と石の間をあけず、愛らしさを凝縮させたようなデザイン。
さりげなく良質な宝石がセットされていて、日本人好みの作品です。
3石x3石のクロスオーバーリング
小ぶりながらデザインの良さも目を引きます。
クロスオーバーリングの変形で、フランスではこの時代2石のみを用いた「トワエモワ」と呼ばれるクロスオーバーリングが流行しますが、その応用になります。
上下に3石ずつをあしらった面白い指輪デザインです。
真珠とダイヤモンド、それぞれ最も大きな石でクロスさせています。
ダイヤモンドの台座はホワイトゴールドで、真珠の台座はイエローゴールド(少しピンクを帯びたローズゴールド)にしているところも、凝っています。
この作りは表面から肉眼で見ているとほとんど気づかず、裏面から見たときに初めて気づくことでしょう。
フランス製。
18金ゴールドであることは確認できていますが、1.7グラムと2ミリに満たないので刻印は押されていません。
(2ミリ以下でも押されることもありますが、免責されるため押されない確率的に高くなります)。
指輪サイズは11.5号(有料でサイズ直し可)。
小さな写真をクリックすると大きな写真が切り替わります。
ローズカットダイヤモンドとは
ローズカットダイヤモンドは、ブリリアンカットが主流となっている現在においては珍しい存在で、「アンティークジュエリー」ならではの味わいのあるものとして人気があります。
ローズカットとは、底辺が平らでドーム上にもりあがった上部に三角形のファセットカットが施されたカッティングのことです。
表面に細かなファセットが入っていて、ダイヤモンドの上部にテーブル(平らな面)がなく、バラのつぼみが開いたように見えます。
ローズカットダイヤモンドの歴史
フランスでローズカットのダイヤモンドジュエリーは特に18世紀から19世紀半ばのジュエリーに見られますが、ブリリアンカットが19世紀半ばに登場してからも完全になくなるわけではなく、特に小さなダイヤモンドでは度々用いられ続けます。
ダイヤモンドのカッティングは大まかに言いますと
「ポイントカット→テーブルカット→ローズカット→ブリリアンカット」と変遷していきます。
ところでローズカットダイヤモンドはアンティークジュエリーの代名詞のように語られることが多いですが、現代でもカッティングそのものは可能です。
「ローズカットダイヤモンドだから必ずしもアンティークジュエリー」とは限らないということぜひ気に留めておかれてください。
ローズカットダイヤモンドは煌めかない?
またローズカットダイヤモンドはブリリアンカットのように「どこから見ても輝くよう計算されたカッティング技法」ではありませんので「ローズカットダイヤモンドは光らない」とおっしゃる方もいます。
しかし良質なローズカットダイヤモンドは控えめな輝きながらも、綺麗に煌きます。
下記は当店で販売済みの大粒のローズカットダイヤモンドのピアスですが、燦々と煌めくダイヤモンドが印象的です。
2種類のローズカット
また驚かれるかもしれませんが、一言で「アンティークダイヤモンドのローズカット」と言っても、実はローズカットも何種類かありそれぞれ異なります。
例えば下記は「ダッチローズカット(Holland cutting)」と呼ばれるものです。
ダッチローズカットは普通のローズカットよりカット面数が多く、ダッチローズカット・ダイヤモンドは、優れたカットの石が使われていることが多いです。
ちなみにその名前からも分るようにダッチローズカットはオランダで生まれましたが、オランダに限らずフランスなどのアンティークジュエリーでも見られます。
ダッチローズカットはよくローズカットの見本のように示されていますが、実際のアンティークジュエリーではもっとファセット面が少なく簡略化されたローズカット(「シンプルローズカット」と呼ばれることもあります)の方がむしろ多く見られます。
シンプルローズカット
他にも底がちょっと厚みがあるものとか、上部がドーム状にふくらんでいるもの等々、ローズカットも色々違いがあります。
ローズカットダイヤモンドの年代
ローズカットは主に17世紀半ばから19世紀半ばにかけてジュエリーに用いられます。
17世紀半ば以前はダイヤモンドはテーブルカットや原石に近いダイヤモンドが用いられており、1850年以降はオールドヨーロピアンカット(ブリリアンカットの一種)が登場します。
しかしながらその後も特に脇石などの小さめのダイヤモンドにはローズカットが施されることも多く、「ローズカット」と言うカッティングだけからそのジュエリー(あるいはダイヤモンド)の年代を特定することは難しいです。
下記は比較的後年の20世紀に入ってからのローズカットダイヤモンドのリングです。
ダイヤモンドのカッティングは年代を特定する大事な要素の一つには違いありません。
18世紀のローズカットと19世紀のローズカットには違いも見られます。
一般的に18世紀のローズカットのカッティングは19世紀のそれよりずっと平坦で、またダイヤモンドももっと中に黒い内包物の見られるものが多いです。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。