20世紀初頭の限定されたジュエリーにしか見ることができないカリブレカット(カリブルカット)技法
カリブレカットとは宝石のカッティングの名前ではなく、石留めの技法の呼称です。
メリットは連続する石の間に爪が見えないこと、石のすっきりした美しいラインが強調されるのが利点です。
ダイヤモンドを中心に添えて、その周囲をルビーやブルーサファイヤで囲んだこのような円形モチーフの指輪は、1920年代のフランスで作られた特徴的な指輪です。
今回非常にリーズナブルにお出ししているのは、周囲を囲むサファイヤがシンセティックサファイヤ(合成サファイヤ)だからです。
合成というとあまり高級でないイメージがあるかもしれませんが、この時代のカリブレカットにされたルビーやサファイヤにはハイレベルの作品にもかなりの頻度でシンセティックサファイヤが用いられています。
これはカリブレカットのサファイヤやルビーは対照色の挿し色として用いられましたから、何より「色」が優先されたからです。
複数の宝石を入れますので色の揃ったものを使う必要もり、時にはシンセティックルビーやサファイヤの方が好都合だったのです。
時にはオリジナルの状態で天然サファイヤとシンセティックサファイヤが混ざっているケースもあります。
ベゼルの内側は星の形、宇宙を感じさせるデザインもアールデコならでは
中心にはブルーサファイヤとのコントラストが印象的な透明なダイヤモンドがセットされています。
ダイヤモンドは中心のダイヤモンドがオールドヨーロピアンカット、周囲のダイヤモンドがローズカットと混ざっています。
ちょうど両方が用いられた時代ですから、時代の変遷を感じさせます。
べゼルのブルーサファイヤの内側はよく見ると星の形になっています。
飛行技術が発達したこの時代、宇宙への好奇心はかつてないほど増し、20世紀初頭のジュエリーには宇宙へのロマンを感じさせるジュエリーが作られています。
ダイヤモンドのべゼル面は全てプラチナ、裏側のベース部分は18金イエローゴールドです。
べゼル下のイエローゴールド部分には幾何学的な形で透かしが入り、優れたアールデコのデザイン性です。
またブルーサファイヤとダイヤモンドの間の環と、ブルーサファイヤの外側の円形モチーフのアウトラインには精緻なミルグレインが打たれています。
アールデコの中でも特に前半の1920年代の作品には、大胆なデザイン性の中にも繊細な細工が残っているところが魅力です。
指輪サイズは17号。
有料でサイズ直し可能ですが、現状かなり大きなサイズになりますので、大きなサイズダウンになりますと現状のような真円ではなく少し押しつぶれた円形になります。
詳しくはご相談ください。
1920年代のフランス製。
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カリブレカットとはフランス語でCalibre cut(カリブレカット)。
カリブレカットは20世紀に入ってから登場する石留めの技術で、特にアールデコ期のジュエリーにセットされた宝石に見られるカッティング技法です。
カリブレカットは石を留めるのに爪を使わずに、石の両側の縁をわずかに倒して留めます。
アールデコ期(1920年代)に同じ色の同じ形の連続する石を留める時に用いられた技法で、主にアクセントカラーとなる色石に用いられました。
希代のアールデコのジュエラーは、カリブレカットした宝石を用いた対照色が美しい作品を残しています。
下記はJ.E Coldwellのカリブレカットルビーとダイヤモンド、オニキスのブローチ。
下記は当店で販売済みのカリブレカットルビーに珍しくアクアマリンを合わせたリングで、補色の色の組み合わせが美しいです。
カリブレカットが施された代表的な宝石がブルーサファイアとルビーです。
しかしカルティエなどの一部のグランメゾンはエメラルドのカリブレカットで素晴らしい作品も残しています。
下記はジョルジュ・フーケのエメラルドとカリブレカットサファイヤ、ダイヤモンドのブレスレット(1925年作)。
下記は当店扱いのカリブレカットエメラルドのリング。
宝石を幾何学的な形にカットしスッキリとしたラインを強調することで、アールデコらしいシャープなラインが生まれます。
カリブレカットのメリットは何とっても石と石の間に爪が見えないこと。
小さな石を連続してラインを作る時、宝石がすっきりとして見えるのが魅力です。
その端正なラインは、非常に高い宝飾技術によって支えられています。
シャープでモダンなアールデコのアンティークジュエリーは世界的にとても人気がありますが、カリブレカットが施された宝石が配されたものはとりわけ探されています。
アールデコ期に作られたカリブレカットのジュエリーは指輪がもっとも多いですが、下記のようなネックレスやブローチなどでも見られます。
ちなみにこちらのネックレスのカリブレカットルビーは合成(シンセティック)です。
カリブレカットの色石は多くの色石を要するのと、特にルビーのパーティングと言う特性により、一流のジュエリーにも時々シンセティックルビーやシンセティックサファイヤが用いられたものがあります。
また天然宝石とシンセティックの混ざったものもありますので、そのジュエリーを販売している業者さんが全てきちんと調べているか確認することが大事です。
(ご納得された上でご購入されるのであれば、問題はありません。)
下記はブローチです。
1920年頃、カリブレカットした色石はブローチではこのようなバーブローチにされたケースが多いです。
またアールデコより少し後年の1940年代の高級時計にも時々、カリブレカットのサファイヤやルビーがセットされた宝飾時計が作られました。
カリブレカットした宝石を用いたジュエリーは実にデザインが優れたものが多いです。
長方形、正方形、台形など作り上げたいデザインに応じて、小さく面取りしてカットしてレール状の台座にはめ込んでいく、まるで「宝石のパズルのような技法」ですから、当然ともいえます。
カリブレカットによって、アールデコのジュエラーは思い描いたデザインをより自由に大胆に表現することが出来たのです。
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