金塗りならぬ、金張り
手の凝った、珍しい作りのロケットペンダントです。
このロケットの素材は何で出来ていると思いますか?
通常のゴールドの色より、純金に近いとても良い色のゴールドをしています。
実際ゴールドのカラットを測る液につけてみますと、20カット以上の判定が出ます。
刻印が打たれているのですが消えかかっていて判読不可で、触った質感にもちょっと不思議な材質でしたので工房の方とじっくりその構造を調べてみました。
銀製あるいは真鍮製の地金の上に、薄く金のプレートを貼り付けています。
似たような製法でシルバーギルド(ヴェルメイユ)を想像する方もいらっしゃると思いますが、このペンダントの場合はゴールドを塗っているのではなく、薄いプレートを貼り付けて一枚板にしてから作業をしているのです。
全ての金細工はその上から行っています。
それで金無垢以上に鮮やかな、純金に近い色が出ています。
その手間を考えれば全部をゴールド(金無垢)で作ったほうが簡単であったかと思うところですが、なぜこんなに手間をかけたかといえばやはり当時、異様にゴールドが高かったからでしょう。
このロケットは刻印がほとんど消えていしまっていますがそのスタイルからして、1840年頃のイギリス製と思われます。
この頃は異様にゴールドの値段が高かったのです。
それゆえに今見ると逆に贅沢な、細工によって高級感を出す職人泣かせの巧みの技が見物のジュエリーが作られました。
板状にゴールドを貼り付けているのでヴェルメイユ(シルバーギルド)以上に、経年による色褪せが出ず、外見的には長い年月にわたって金無垢と同じ色や質感を保ちます。
バチカンに至るまで施された金細工
表面と裏面、それぞれ別の柄の見事なエンジンターンの模様が施されています(6番目と7番目のお写真が分かり易いです)。
エンジンターンとは、金属表面の仕上げとして細かい幾何学的なパターンを刻み込むことです。
話が少しずれますがこのエンジンターン模様の上にエナメルを施したのが、ギロッシェエナメルです。
エンジンターン模様の外側には、更に手彫りによる金細工があしらわれています。
そしてこの彫金はフレームだけでなくバチカンにまで続きます。
エンジンターンがマシンによる幾何学的模様であるためかクールでかっこいい印象を与えるロケットペンダントです。
中の状態もよく、今でもパチンと音を立てて開閉することができます。
注:チェーンは付いていません。
小さな写真をクリックすると大きな写真が切り替わります。
アンティークロケットペンダントは最も人気の高いアンティークジュエリーの一つです。
その歴史は中世のヨーロッパまで遡ります。
この頃は宗教的意味合いが強く、聖像などを収めたりするものでした。
下記は当店扱いの何と18世紀の非常に古い時代のロケットペンダント、何と「鉄」でできています。
ジュエリーとして美しいロケットが出始めるのは、主に19世紀。
19世紀初頭に、イギリスやフランスを中心に大切な人の髪や形見の品などを入れる物としてロケットペンダントが普及します。
宝石をちりばめたものや細工の凝ったものなど、美しいロケットが作られます。
下記はオニキスで作られたロケットペンダント(19世紀)。
下記は1900年頃のフランス製のロケットペンダント。
ブルーエナメルと真珠とダイヤモンド、そして葉をモチーフにしたアールヌーボーらしい構図の美しいロケットです。
イギリス・ヴィクトリア時代(19世紀中ごろ)のロケットには積極的に愛のメッセージが込められているのが特徴です。
下記はヴィクトリア&アルバート美術館所蔵の1840年頃、イギリスヴィクトリア時代中期のロケットペンダントです。
ハートの形に南京錠、その鍵が描かれています。
その心は「私の心(ハート)の鍵はあなたが握っている」です。
使われている宝石にも愛のメッセージが込められています。
ルビー、エメラルド、ガーネット、アメジスト、ルビー、ダイヤモンドでその頭文字をとって「Regard」。
(c) Victoria & Albert Museum, London
下記もやはりハートをモチーフにした、こちらはフランスべルエポック時代に作られたロケットペンダント。
前述のヴィクトリアンのハートペンダントほどの重たさはなく、都会的で洗練されたロケットです。
ロケットのモチーフには時に、珍しい題材も選ばれました。
下記は当店で販売済みの、お酒のボトルをモチーフにしたロケットペンダントです。
下記はサンジャック貝(帆立貝)がモチーフのロケットペンダント。
アンティークロケットでは金細工に優れたロケットが多いですが、金細工やエナメル細工が施されたロケットもアンティークジュエリーならではの醍醐味です。
下記はアールヌーボーの金細工が美しいロケットペンダント。
ギロシェエナメルのロケットペンダント。
ロケットジュエリーの大半はイエローゴールドで作られていますが中には例外もあります。
下記は銀製のロケットペンダント。
またアンティークロケットペンダントも非常に人気があり、常に品薄状態なのですが、それ以上に見つけにくいのが、ロケットリングです。
ペンダントに比べても細工を施す面積が少ない指輪で、このような細工を施すのは非常に大変なことで、作られた数も極めて少ないのです。
下記は当店で販売済みのバラをモチーフにしたロケットリング。
このロケットリングのように無色のガラスの場合、何も入れない状態で着けても美しいですし、押し花のように小さな葉などを入れてもよいと思います。
下記は当店にて販売済みのイギリス・ヴィクトリアンのアンティークロケットリング。
この手の比較的小さなロケットリングは、故人の髪を入れるためのものでした。
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