色違いの水晶、アメジストとシトリン
アメジストとシトリンと言うのは色はまったく異なりますが、同じ水晶の宝石で黄色の石がシトリン、紫の石がアメジスト。
つまり色違いの兄弟のような宝石です。
「太陽のように明るいシトリン」と「気品ある上品なアメジスト」は、実は特にジョージアン王朝時代後期(フランスで言うところの王政復古時代)に、コンビネーションとして好まれました。
エピソードにも記載しましたが現代では天然シトリンは壊滅状態です。
「紫x黄色」のコンビネーションは色彩的に美しいため、現代のジュエリーメゾンでも例えばブチェラッティなどが取り入れていますが、自然のままに黄色であった艶やかなシトリンとアメジストの組み合わせは、アンティークジュエリーの醍醐味と言えます。
これまで何度かシトリンxアメジストのアンティークジュエリーを現地で見てきましたが、これほど大きなネックレスは初めてです。
あまりの色彩の艶やかさに即決しました。
合計60石もの宝石が用いられています
アメジストもシトリンもそれぞれの石の色が豊かです。
シトリンは同じネックレスの中で黄色が他より濃いめのもの、薄めのものなど幅があります。
実はアメジストも同じ石の中にも多少色のムラが出る宝石であることで知られています。
このネックレスでも、同じ石の中で僅かに紫の濃淡がグラデーションになっている石がいくつかあります。
ナチュラルストーンだけに色がとても豊かで見ているだけで飽きません。
またこれだけの数のシトリン、アメジストがありながら見る限り、全てオリジナルストーンです。
ファセットがいずれの石にも非常に細かく入っていて、光を浴びたときの色彩の美しさは格別です。
留め具部分はゴールド。
閉じるとどこにあるか分からないほど、ネックレスに一体化するように巧みに作られています。
今もパチンと音を立ててしまるほど状態が良いです。
ネックレスの長さは52センチとたっぷり。
石が一つずつ大きいのでこれだけしっかり長さがあると使いやすいです。
一粒の大きさは石によって異なりますが、最大のもので直径が1.6センチ、厚みが1.1センチ程。
最小のもので直径が8.5ミリ、厚みが6ミリ程。
下部のものほど粒の大きな石が用いられています。
糸替え済みですので、安心してお使いいただけます。
数石ごとにノットをいれてもらっています。(オリジナルがそのような形でしたので、そのままの形で糸替えしてもらいました)
19世紀前-中期のフランス製。
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色水晶の代表的なものに「アメジスト」「シトリン」「ローズクォーツ」があります。
水晶の中で紫色のものをアメシスト(アメジスト)、黄色のものをシトリン、薄いピンク色に色づいた水晶のことをローズクォーツと呼んでいます。
シトリンは黄色からゴールド色に色づいた水晶のこと。
その色がトパーズの色に似ていることから過去には「Madeira topaz、Bahia topaz、topaz quartz」といった誤った呼称で呼ばれることもありました。
古代ギリシア人は紀元前4世紀から既にシトリンのことを知っていました。
心臓、腎臓、肝臓、筋肉の不調を直し血の流れをよくする力のある石、また直観力を高め、自己破壊を抑え、クリエイティビティを増す宝石としても知られています。
シトリンはその自然の黄色い色から、太陽のエネルギーを持つといわれています。
シトリンとアメジスト
紫水晶(アメジスト)の色の違いは色のエネルギー準位が違うからです。
下記は同じ水晶の仲間であるアメジストとシトリンのネックレス。
実は「アメジストxシトリン」の組み合わせのジュエリーは、アンティークジュエリーで時々見かけます。
鮮やかな色の対比が素晴らしいです。
シトリンの色を決めるもの
シトリンの黄色の加減を決めているのは、結晶中に含まれる「鉄分」が原因になっています。
結晶中に鉄分が含まれていると、高い熱を受けた時に黄色に発色します。
鉄分が多いとより茶色に近い色になります。
現代のシトリン大半は、アメジストを人工的に加熱することによりシトリンの色に変えたものです。
450-480度の熱で熱すると、アメジストがゴールドからイエローの色に変わるからです。
本来地表に出てきた時にすでに黄色のものこそが、天然のシトリンというべきです。
こうして作られたシトリンは黄色が不自然で、宝石としての美しさはほとんどなく、アンティークジュエリーで見られる天然のシトリンとは別物の宝石のように、価値が異なります。
アンティークジュエリーにおいて、シトリンは高価な宝石です。
かつてはアメジストの色を変化させてシトリンを作るという技術は存在しませんでした。
アンティークのシトリンは天然無加工だけあってさまざまな色合いがあります。
レモンイエロー、トパーズに似た飴色や茶色、黄緑に近いイエローまであります。
下記はレモンイエロー色に近いシトリンです。
下記はオレンジ色の色調が強いシトリンです。
下記は「フォイルバック」で、色調に変化を与えている例です。
光の反射で炎のように挿すオレンジ色は、石の下に入れられた金箔(フォイルバック)のためです。
朝夕など異なる日の光の下でさまざまな表情を見せては変化をします。
シトリンの産地
「天然シトリン(アメジストを熱処理したシトリンではなく天然のシトリン)」の主要な産地はブラジル、マダガスカル、ミャンマーです。
近年ではベトナムからも良質のシトリンが発見されたそうですが、こうした東南アジアでの採掘は後年になってからですので、当時は出てきていません。
シトリンはフランスアンティークジュエリーでは19世紀初頭の王政復古の時代(イギリスではジョージアン後期)に大変希少価値のある宝石としてジュエリーに重用されます。
下記は同時代のフランスで作られたシトリンのネックレス。
この時代ならではの金細工とシトリンの色合いが非常によくあっています。
そしてその後は19世紀末に、今度はルネラリックをはじめとするアールヌーボーの作家性によって、その独特の存在感を魅せつけます。
半貴石の中間色がジュエリーに大胆に取り入れられたこの時代。
その芸術的なジュエリーにおいて、それ以前のイメージとは異なる大胆で新鮮な魅力を発揮します。
シトリンはその中でもとりわけ、アールヌーボーのジュエラーに愛された宝石です。
下記は1905年製作のルネラリックのトパーズとシトリンのペンダント。
上部のオーバルの黄色石がトパーズ、下部のブリオレットカットの黄色石がシトリンです。
(c)2018 Sotheby's
誕生石、記念日のためのシトリン
シトリンはトパーズに並び、11月のもう一つの誕生石である他、日本ではあまり知られていませんが、結婚5周年の木婚式に贈られる宝石でもあります。
木婚式とは「もっこんしき」と読み、ようやく夫婦が1本の木になったことを意味するそうです。
文字通り木製のものなどをプレゼントすることもありますが、宝石の場合はシトリンが木婚式の石になります。
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