大きな石はロッククリスタル
アンティークジュエリーでも特に古い時代に遡る、珍しいジュエリーです。
製作されたのは18世紀後期から19世紀初頭。
大きな曇りがかったような石はロッククリスタル。
重みもある非常に大きなロッククリスタルは、インタリオ「沈み彫り」が施されています。
インタリオはカメオが凸状に彫刻が施されているのに対して、凹状に彫刻が施されています。
インタリオは印章(シール)と呼ばれる手紙等の封蝋に押すスタンプ(ファブ)などに施されることが多く、このペンダントもシールファブです。
インタリオは両面に施されています。
表側が大きな麦の束と鳥。
そして「FIDELE ET SECRET(faithfulness and secrecy/忠実と秘密)」という文字が彫られています。
Fideleというフランス語は恋人の関係で相手に忠実である(浮気をしていない)という意味で使われますから、秘めたそして忠実な関係を示唆していると思います。
裏面にJDBの文字がモノグラムになっています。
当時は印鑑がわりであったフォブ。
持ち主のイニシャルだと思われます。
開き、そして回転します
ペンダントの枠を持ちながら、ロッククリスタルのボディ部分を押すとパチッと開きます。
そして半回転、くるりと回転します。
フレームから外してインクをつけるためでしょう。
これほど長い年月を経たフォブですが、今でもパチッと開け閉めすることができます。
大きなロッククリスタルは、その全周をゴールドのフレームで覆われているのも安心感があります。
実際、状態が非常に良いです。
ゴールドフレームは表面も裏面も両方に、縒り細工が施されています。
古代文明を思わせる、独特の高度な金細工です。
太めの通し輪ももちろんオリジナルで、ここがこれだけ大きいのは、回転する構造を支えるためでもあります。
通し輪部分の内側にも3列の縒り細工が施されていて、非常に高価な作りです。
使われている宝石の大きさはや完璧なインタリオ。
凝った構造と彫金。
当時の高貴な人の持ち主であったのは間違いありません。
刻印はあるものの読めるような状態ではないです。
18世紀後期あるいは19世紀初頭のフランス製。
18カラットゴールド。
注:チェーンは付いていません。
動画も撮影しています。
アンティークシール(印章)フォブ ロッククリスタル
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カメオやインタリオといった彫り物のジュエリーの歴史は古く、カメオ彫刻の技術は実に古代エジプト(紀元前3000年頃)まで遡ります。
カメオやインタリオといった彫り物のジュエリーは、古代ギリシャ、古代ローマ時代へと受け継がれていきます。
そしてルネサンス期、17世紀、18世紀と発展をし、宝飾彫刻技術の最後の繁栄は、ナポレオン1世の登位からナポレオン3世の治世で終焉します。
フランスのアンティークジュエリーでは、イギリスほどカメオやインタリオのアンティークジュエリーはそれほど多くありませんが、第二帝政時代はフランスの宝飾史でその数少ない彫り物のジュエリーが比較的よく見られる時代です。
現在市場に出ているアンティークインタリオでは、19世紀初-中期にフランスないしイギリスで作られたものが多いです。
フランスの彫り物のアンティークジュエリーで素晴らしいのは、センスのよい彫り物のジュエリーが見られるところです。
インタリオ
インタリオとは沈み彫りの総称です。(浮き彫りを施したものはカメオ)。
インタリオは元々は、印章(シール)と呼ばれる手紙等の封蝋に押すスタンプ(ファブ)などに施されました。
下記は当店扱いのシール(印章)フォブで、製作されたのは18世紀後期から19世紀初頭です。
大きなロッククリスタルにインタリオを施したフォブです。
それからインタリオは指輪やペンダント、ブローチにも施されるようになります。
アンティークインタリオでよく使われる宝石は、ガーネット、カルセドニー、アメジスト、コーネリアン、アーゲート、オニキス、ロッククリスタル等です。
下記は当店扱いのカルセドニーのインタリオリングです。
難易度は、その宝石の特質や硬度によって異なります。
例えばシトリンやアメジストといった水晶系の宝石は結晶化された宝石なので本来、彫刻は難しい宝石です。
シェルやストーン、また金や銀に直接施されることもありました。
強度が低いガラスなどに施した珍しいインタリオもあります。
下記はアメジストにインタリオを施したリング。
カメオ
カメオとは浮き彫りの総称です。
紀元前からある技法ですが、19世紀初頭までは男性向けの美術品で女性向けのジュエリーとして普及したのは、イギリスのヴィクトリア時代からです。
日本の市場で流通しているカメオも、イギリスヴィクトリアンの頃のものが大半です。
皆さんが思い浮かべるアンティークカメオの典型的な貝殻を使用したシェルカメオなどもこの頃から登場します。
当店は主な仕入れがフランスということもあり、典型的なアンティークカメオはあまり扱っていませんが、細工として面白いものは僅かながら仕入れています。
下記は珍しいフランス製のオニキスのカメオのピアス。
2008年に箱根の彫刻の森美術館で「カメオ展」が開かれたのですが、この時カメオはもちろんのこと非常にバリエーション豊かなインタリオも展示されていました。
展示会はもちろんもう既に終了してしまっていますが、その時に「カメオ展 宝石彫刻の2000年」というカタログが販売されて、彫りものがお好きな方はこれだけ彫りモノのアンティークジュエリーを網羅した本は日本に他にないと思いますので、手に入れることが出来たらお薦めいたします。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。