両面にオニキスがセットされた贅を尽くしたロケットペンダント
多くのアンティークロケットで宝石が用いられていますが、その大半は宝石をロケットの飾りの一部としてセットしているにすぎません。
このように全面に宝石を配したロケットは、贅沢かつ珍しいです。
このロケットペンダントでは、ロケットの表面にも裏面にもオニキスが埋め込まれています。
これだけ表面積の大きなオニキスをこのような大きなオーバル型にカットしてはめ込んた贅沢な作りです。
「理性の宝石」であると言われているオニキス。
漆黒のオニキスが、くっきりとした輪郭を与えています。
内側に刻まれた美しい記念の文字
ロケットの内側がまた美しいです。
中を開けると左側に美しい手彫りの文字が見えます。
「BL a MD 9 Xbre 1863」
おそらく結婚の時に作られたものなのでしょう。
Xは10ですので1863年の10月9日が記念の日と読めます。
開けて右側も内扉まで良い状態で、この部分を開けて中に写真等を入れることができます。
どの開閉箇所も今もパチンと音を立てて閉めることができる、作りの良さです。
1863年頃のフランス製。
18カラットゴールド。
注:チェーンは付いていません。
小さな写真をクリックすると大きな写真が切り替わります。
理性の石、オニキス
オニキスは、水晶と同成分の瑪瑙(めのう)の一種で、ブラックオニキスはその名の通り黒いオニキスです。
オニックス(ギリシャ語で人の爪)とも呼ばれ、アンティークジュエリーにおいても古代から「魔除けの石」として大事にされてきた宝石です。
古くから司教のロザリオ、またモーニングジュエリー(喪のジュエリー)などに使われてきました。
感情が乱れやすいときや意志の弱いときに身につけると、気持を鎮め理性的な感情になれる、「理性の石」である信じられています。
オニキスとアールデコのジュエリー
石としての美しささが改めて評価され、ハイジュエリーが生み出さるようになるのは、アールデコ時代です。
アールデコジュエリーが作られた1920年代はまさにフランス宝飾界のゴールデンエンジ。
類稀な「才能、嗜好のよさ、お金」がパリに集結。
ジュエラーたちは新たな創造、インスピレーションを、モダン社会に世界に求めました。
中でも偏狂とも言えるほどのオリエント(東洋)へ熱狂し、宝石の選別と装飾様式に顕著に現れていきます。
東洋への憧れの中で一躍注目を集めたのが、エナメル技法、マザーオブパール、珊瑚、オニキス、翡翠。
そして特に「これらの宝石を組み合わせること」でよりエギゾティックでオリジナルな効果が生まれました。
1920年前後は一流ジュエラーがオニキスを好んでそのジュエリーに取り入れました。
ブラックオニキスはアールデコ期に、間違いなくもっとも愛された宝石のひとつです。
下記は当店で販売済みの1920年代のオニキスのブレスレットです。
ジュエリーは黒や黒の背景があると映えるため、ブラックオニキスはルビーなどの指輪と一緒に使われました。
オニキスがなぜ当時の一流ジュエラーに重用されたかというと、以下のような理由です。
1)真っ黒なブラックオニキスが、特にこの時代愛されていたダイヤモンと真珠といった宝石を美しく際出せること。
2)宝石全体の輪郭をはっきりさせ、1920年代に代表されるモダンデザインを作り上げるのにぴったりであったこと。
3)黒いキャンバスのように背景に使うことで、宝石全体に影のように立体感を生むこと。
カルティエやヴァンクリーフアーペルといったメゾンの当時のコレクションにも「オニキスx珊瑚」「オニキスx翡翠」「珊瑚xエナメル」が多く見られます。
下記は当店で販売済みのオニキスと珊瑚のピアス。
やはりアールデコのジュエリーです。
オニキスの層
オニキスはまた真っ黒な石のイメージがあると思いますが、複数の色の層からできた石です。
そのためその色の層の違いを活かして下記のような作品も作られました。
オニキスのカメオや彫刻
オニキスの石は硬度が7で彫り物にもちょうど良く、彫り物が施された作品も見られます。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
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シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。