フランスベルエポックのハートとイギリスヴィクトリアンのハートジュエリーは異なる魅力があります
フランス、ベルエポック時代に作られたハート型のロケットペンダントです。
アンティークロケットでハート型は定番中の定番ですが、甘すぎず端正な魅力がありますね。
エピソードの欄にちょうどヴィクトリアン中期のハート型のロケットを掲載しましたので比較してご覧ください。
同じ「ハート型」と言えど、ラインが異なるのがお分かりいただけることでしょう。
ヴィクトリアンのハートの方は全体に丸みを帯びた愛らしいハートペンダントですが、こちらのハートはもっと直線に近いシャープなラインのハートペンダント。
シルエットも縦に長めです。
ハートという愛らしいモチーフながら都会の女性にふさわしい洗練されたデザインが、フランスベルエポック時代らしいです。
金細工や金の処理も、この時代のフランスといったレベルの高さです。
ゴールドは美しい半艶消しが施されており、裏面にも施されています。
狭い面積の中でグリーンゴールド、ローズゴールド、イエローゴールドの3色のゴールドが使われているところもこの時代のフランスならではです。
良質なカラーゴールドのジュエリーはフランスアンティークジュエリーにおいてまず王政復古時代に見られ、それから19世紀末のベルエポック・アールヌーボーのジュエリーに見られます。
(アールヌーボーは装飾様式の名前なので時代を示すものではなく、時代としてはベルエポック時代の中のカウンターカルチャーの一つがアールヌーボーでした。)。
アンティークロケットペンダントは常に探していますが、良い物は数が少なく、それだけにこのようなデザイン&作りとも優れたペンダントは希少です。
その「小ささ」がアンティークロケットの魅力
ハート自体の大きさは1.9センチx2.2セントそれほど小粒ではございませんが、注目していただきたいのは細部の小ささです。
まず小さな爪。
前面の全体を縁爪に引っかけて開けるのですが、その爪は気づかないほど小さく、ぱっと見たところ普通のハート型のペンダントにしか見えないと思います。
小さいですが強度があり、今もパチンと音をたててピッタリと閉まるところに 技術の高さを感じます。
「ロケットジュエリー」を現代ジュエリーではなく、アンティークジュエリーでお探しすることをお薦めするのは強度がまったく異なるからです。
このロケットが100年以上経てもこのように開閉がきちんとできるのは、ゴールドを叩いで強さを出しながら仕上げているからです。
同じ18金を使っていれば同じ強さが出るのではなく、負荷のかかるところを考えていかに金属を叩きながら強度をだしているかが、耐久性の違いになります。
またゴールドに深くセットされた3石の天然真珠もその粒の小ささが、愛らしいです。
3つの花は葉をグリーンゴールド、花が天然真珠で描かれていますが、いずれも小さく愛らしいです。
このペンダントに限らず、アンティークロケットでは、セットされている宝石は小さなものが好まれました。
ロケット自体が「秘密」を入れるものだったからです。
しかし宝石のセッティングは小さければ小さいほど難しくなりますし、開閉を伴うロケットジュエリーは非常に高度な技術を要したのです。
注:チェーンはついていません。
1890-1900年頃のフランス製。
18金ゴールド。
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アンティークロケットペンダントは最も人気の高いアンティークジュエリーの一つです。
その歴史は中世のヨーロッパまで遡ります。
この頃は宗教的意味合いが強く、聖像などを収めたりするものでした。
下記は当店扱いの何と18世紀の非常に古い時代のロケットペンダント、何と「鉄」でできています。
ジュエリーとして美しいロケットが出始めるのは、主に19世紀。
19世紀初頭に、イギリスやフランスを中心に大切な人の髪や形見の品などを入れる物としてロケットペンダントが普及します。
宝石をちりばめたものや細工の凝ったものなど、美しいロケットが作られます。
下記はエメラルドと真珠がセットされ、かつエナメルも施された宝飾品としての完成度が高いロケットです。
下記は1900年頃のフランス製のロケットペンダント。
ブルーエナメルと真珠とダイヤモンド、そして葉をモチーフにしたアールヌーボーらしい構図の美しいロケットです。
イギリス・ヴィクトリア時代(19世紀中ごろ)のロケットには積極的に愛のメッセージが込められているのが特徴です。
下記はヴィクトリア&アルバート美術館所蔵の1840年頃、イギリスヴィクトリア時代中期のロケットペンダントです。
ハートの形に南京錠、その鍵が描かれています。
その心は「私の心(ハート)の鍵はあなたが握っている」です。
使われている宝石にも愛のメッセージが込められています。
ルビー、エメラルド、ガーネット、アメジスト、ルビー、ダイヤモンドでその頭文字をとって「Regard」。
(c) Victoria & Albert Museum, London
下記もやはりハートをモチーフにした、こちらはフランスべルエポック時代に作られたロケットペンダント。
前述のヴィクトリアンのハートペンダントほどの重たさはなく、都会的で洗練されたロケットです。
ロケットのモチーフには時に、珍しい題材も選ばれました。
下記は当店で販売済みの、お酒のボトルをモチーフにしたロケットペンダントです。
下記は本に見立てたロケットで、何枚もめくっていける驚きの作りです。
写真を3枚入れることができます。
アンティークロケットでは金細工に優れたロケットが多いですが、金細工やエナメル細工が施されたロケットもアンティークジュエリーならではの醍醐味です。
下記はアールヌーボーの金細工が美しいロケットペンダント。
ギロシェエナメルのロケットペンダント。
ロケットジュエリーの大半はイエローゴールドで作られていますが中には例外もあります。
下記は銀製のロケットペンダント。
またアンティークロケットペンダントも非常に人気があり、常に品薄状態なのですが、それ以上に見つけにくいのが、ロケットリングです。
ペンダントに比べても細工を施す面積が少ない指輪で、このような細工を施すのは非常に大変なことで、作られた数も極めて少ないのです。
下記は当店で販売済みのバラをモチーフにしたロケットリング。
このロケットリングのように無色のガラスの場合、何も入れない状態で着けても美しいですし、押し花のように小さな葉などを入れてもよいと思います。
下記も当店にて販売済みのロケットリングで、ベルトの中を開くとロケットが出てくるという実に精巧な作りです。
とても小さなロケットで、この手の小さなロケットリングは、故人の髪を入れるためのものでした。
また下記は珍しくロケットチャームのついたバングルです。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。