1970年代らしい斬新なデザイン
シェルシュミディにしては珍しい、戦後1960-1970年頃のトルコ石のリングです。
実はこの時代のヴィンテージのジュエリーは、ヨーロッパで今一番注目を集めています。
私も親しくしていただいているディーラーさんがこの時代のジュエリーのイギリスでの先駆者で、いち早く手掛けたことが功を奏して今ではその一人者として大きな成功を収めています。
1920-1930年代のアールデコのデザインをよりアバンギャルドに変化させたのがこの時代のジュエリーの特徴です。
世界的に経済発展に恵まれたよき時代であった世相を反映して、思い切りのよいデザインが特徴です。
その先端を行くデザインは、今見ても今より逆によりモダンに見えます。
横から見るとそのデザインが特に面白く、ジオメトリックな3つのひし形の爪が前衛的です。
その間に、まるでペンの先のようなシルエットのトルコ石をきゅっと入れこんでいます。
フレームは、極力平坦にして、爪との高低差を強く打ち出すことで、デザインのコントラストを効かせています。
今見てもゾクゾクするほど新しいデザイン、70年代のデザインの面白さを堪能できるリングです。
70年代の良く出来たジュエリーは既にかなり高額になってきていますので、良質のものでお気に召していただけるデザインのものは早めに手に入れられることをお薦めいたします!
もちろん70年代であれば全て良いわけではなく、良質のものは極一握りです。
良質のトルコ石と、古代色のゴールド
見るからに美しい、空色の美しいトルコ石が用いられているの魅力的です。
トルコ石はアンティークジュエリーでは古くから重用されてきた宝石ですが、戦後1950-1970年頃も一流ジュエラーたちに重用された宝石の一つです。
エピソード欄にも記載しましたがルネ・ボワヴァン等も、この時代にトルコ石を用いた素晴らしい作品を残しています。
あえて斑点のあるトルコ石を用いているのも特徴的です。
自然のトルコ石には石基(周囲の岩石の残留物)の模様が走っていることもあり、「クモの巣トルコ石」と呼ばれることがあります。
比較的細身のこのリングのトルコ石に、うまく斑点のあるトルコ石を用いているのが憎いです。
トルコ石は、古代色のゴールドに色彩的によく合います。
このリングでも純金に近い色の古代色のゴールドを用いています。
指輪サイズは11.5号(有料でサイズ直し可)。
フランスの18金ゴールドのほかに、工房印も残っているのですが残念ながら工房印のイニシャルが読めません。
かなり優秀なジュエラーの作品でしょう、手にした時にも心地よい重厚感があります。
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トルコ石は古代より愛されて、最も古くから宝飾品に重用されてきた宝石のひとつです。
トルコ石は、古代エジプトではオシリス神とイシス神に捧げられる石でした。
その大空のような水色から、「神聖なる石」とされてきました。
古くから危険や邪悪なエネルギーから持ち主を守ると言われています。
「出世の石」としても有名で、古くから権力者に愛されてきたのも、そうしたトルコ石の力のためだったのかもしれません。
トルコ石には、さまざまな伝説があります。
中でも天然トルコ石には危険が迫ると色が変わり、持ち主に災厄を知らせる力があるといういい伝えは有名です。
色が変わるだけでなく、時には持ち主の身代わりとなって砕け散ることもあったという言い伝えがあります。
邪悪なものや、迫り来る危険から守ってくれるトルコ石は、やがて旅のお守りなどに用いられるようになります。
昔のトルコ石と現在のトルコ石は、別の石と言ってよいほど大きく価値が異なります。
トルコ石は、硬度がダイヤモンドを10(最強)の十段階にて換算して4〜7程。
天然強度が5〜7のトルコ石は全体の生産量の1割から2割ほどしかとれないのです。
もちろん宝石を用いる人がごく一部の人に限られた昔、アンティークジュエリーに使われているトルコ石には、まずこうした超良質のトルコ石が使われています。
しかし現在、流通しているトルコ石は、4以下の物が大半。
硬化剤の入った樹脂を含浸していることがほとんどです。
柔らかすぎる為にそのままの状態では宝石として成り 立たないのです。
現在流通しているトルコ石のほとんどは、液体プラスチックと共に青い塗料を入れて気圧をかけていたり、一度石を粉にして、樹脂、塗料を混ぜて固め直していたりされています。
トルコ石の色艶が違うのは当然で、別の宝石と考えるべきです。
また産地も大きく異なります。
アンティークジュエリーで用いられている昔のトルコ石は主にイラン産です。
トルコ石と呼ばれていますが、トルコで産出されたわけではありません。
イラン産のものがもっとも良質であると言われています。
一度、仕入れの際にアンティークのイラン産トルコ石でとても大粒で球体のトルコ石を数珠のようにつなげたネックレスを見せてもらったことがあるのですが、その美しさには言葉を失いました。
またその高価さにも言葉を失いました(笑)。
そのネックレスに使われていたような直系1センチを超すようなボリュームのアンティーク・イラン産トルコ石は、目が飛び出るほどお値段も高くなるのです。
現在トルコ石はそれほど高価なイメージはないかもしれませんが、良質な昔のイラン産(あるいは中東産)のものはそれだけの高い価値を持つ宝石です。
下記は1950年頃とアンティークと呼ぶほど古い時代のジュエリーではないですが、ルネ・ボワヴァン(Rene Boivin)製作の素晴らしい大粒のトルコ石を用いたネックレスです。
数年前にパリで開催されたクリスティーズのオークションカタログからの抜粋です。
こうした大粒の良質なかつてのトルコ石の値段の高騰はまさに止まることを知りません。
色は青から緑の色を持つ不透明な鉱物で、強い空色のものがもっとも価値があるといわれています。
水色は大地を潤す水を象徴し、心に健全さを取り戻す力があるのだとか。
もっとも美しい色は、ロビンエッグカラー、「こまどりの卵の殻の色をした空青色とされています。
この空青色の主因は、主成分として含まれるCu(銅)ですが、その他Fe(鉄)の含有や多孔質の程度により、緑がかったものから白がかったものまで色調には多少の個体差が見られます。
アンティークジュエリーにおいて、トルコ石は大小さまざまなサイズのものが指輪、ネックレス、ブレスレット、ピアスあらゆるジュエリーに取り入れられてきました。
特に19世紀のパリュール(ジュエリーのセット)などでは圧巻の作品が見られます。
下記は当店で販売済みのネックレス、指輪、ピアスのセットです。
またモチーフとしてはその可憐な水色を生かして勿忘草(forget me not)に見立てられることが多かった宝石です。
下記は当店で販売済みのわすれな草の指輪です。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。