目が醒めるような、見たこともない美しい色のルビー
19世紀中ー後期のフランス製。
目が醒めるようなものすごく美しいルビーです。
何といっても素晴らしいのは、その色。
明るいワインレッドと赤の中間のような艶やかな赤色です。
もうちょっとピンクっぽいルビーや、赤色がくすんだ濃い赤色というのは時々身見かけますが、これだけ絶妙な色は本当に珍しいです。
光を当てた写真撮影ですとややピンクが強く映りますが、実際は更に落ち着きを持った色でもうちょっとピンクが落ち着いて見えます。
色はもちろんのこと艶も素晴らしく、とても滑らかなルビーです。
ボリュームもたっぷりあり、中心のルビーが5ミリx5.5ミリと贅沢な大きさ。
しかもこんなに美しいルビーを5石使った、指一杯に美しいルビーが拡がる、ルビー好きな方にこれほどお薦めな指輪はありません!
完璧に美しいルビーはとても少ないです
ルビーはお好きな方が多い宝石の一つですが、現在よりずっと良質な天然宝石が多かったアンティークジュエリーにおいてさえ、完璧に美しいルビーは驚くほど少ないです。
ちょっとくすんだ赤だったり、もうちょっとピンクが濃い赤が多く(もちろんそれはそれで美しいのですが)、しかもこれ程の大きさとなると、探されている方ならご存知かと思いますがまず出てきません。
「完璧なルビー」が少ないゆえに、より美しいルビーに羨望が集まるのです。
地金は18Kゴールドでややピンク帯びたゴールド(ローズゴールド)が、ルビーの「赤」にしっくり馴染みます。
ルビーを留めるゴールドの爪も細やかで、特に横から見たときなどは爪も一つの装飾のようになっています。
瀟洒なデザインから一見ベルエポックの時代のジュエリーに見えますが、石裏のベゼルのぽっちゃりとした感じなどから、この指輪がもうちょっと前の時代に作られたものであることが分かります。
指輪サイズは12.5号(有料でサイズ直し可)。
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今日宝石といえばまず無色透明のダイヤモンドを浮かべる人が多いですが、ジュエリーの歴史の中でダイヤモンドが宝石の王座を占めるようになったのは僅か数百年前のことです。
古代の人の心を捉えたのは、美しい色を持つカラーストーン。
特にエメラルド、トルコ石、ガーネット、ルビー、サファイアです。
これらのカラーストーンは、カッティング技術が未発達な時代もその美しい色のために珍重されてきました。
後年になってもルビーは「王位」を象徴する石として、ダイヤモンド以上に好まれてきました。
五大宝石のひとつルビーは、サファイアなどと同じで鉱物名はコランダム。
コランダムの内、赤色のものを宝石名でルビーと呼んでいます。
「ルビー」という名前の由来はラテン語で、赤を意味する「ruber」から来ています。
下記は当店で販売済みのルビーの一文字リング。
1880年頃に良く作られたモデルで、ササビーズで非常に類似した指輪が出展されていました。
ルビーは欲望、情熱、権力の象徴であり、ルビーはまたその「愛と情熱を表す明るい赤色」が恋人たちの別れを防ぐ宝石であると語り継がれてきました。
その他、戦士を守り、勇気と忍耐を与えるとか。
病気を治す、家や所持品を守る、富と幸運をもたらすと信じられてきました。
これはルビーの燃えるような赤色に不滅の炎が宿るとされ、そこから満ち足りた気持ちと愛情を与えると信じられてきたからです。
アンティークジュエリーで使われたルビーは古くはスリランカ(セイロン)産、そしてルネサンスの頃までにビルマ(ミャンマー)産ルビーが用いられるようになります。
他の多くの宝石と異なり、ルビーはこの時代に発見されたビルマの、特にモゴーク地方の鉱山がその後800年に渡り重要な産地であり続けました。
アンティークジュエリーでもビルマ産のルビーが主流ですが、それ以外でも数は少ないですが例えばロシア産ルビーなども稀に見ることがあります。
下記はササビーズに出展されていた1910年頃にロシアで製作されたロシアンルビーとダイヤモンドのペンダントです。
1)ルビーの色を決めるもの
一言に「赤色のコランダムをルビーと呼ぶ」と言っても、ルビーには黒っぽい赤色のもの、ピンクっぽいもの、さまざまな色相があります。
ルビーの赤色の原因となっているのは、ルビーの成分の酸化クロムに起因しています。
酸化クロム以外にもルビーは酸化鉄、酸化チタンなどが含まれていて、これらの量が色調の要因となっています。
酸化鉄の量が増えるにしたがって黒味が増し、また酸化チタンの含有量が増えるにしたがって、紫味が強くなる傾向があります。
ビルマ北部は翳りの原因となる鉄分の含有率が低い、地質学的に興味深い土地であると言われています。
下記は数年前にササビーズに出展されていました20世紀初頭のルビーリング。
2)現代行われているルビーの人口処理と加熱
いくつかの限られらた確実な産地からしかルビーが採られていなかった時代では、色調である程度の産地が想定することが可能でした。
しかしながら現在ではルビーを高温を加熱して、透明度も良くしたりすることが日常的に行われています。
例えば余分な黒色などを除去して、いわゆる「ルビーらしい色」に近づけるよう人工的な調整が行われています。
近年では、アフリカやアジアの様々な地域で次々と新しい鉱山が発見されておりそれほど品質の良くないルビーに関しても加熱処理、あるいは人為的にフラクチャーなどを埋める充鎮などで「トリートメント」が施されているため、現在のルビーでは「本来の色」は見ることができないものがほとんどです。
こうした人工的なトリートメントは代表的なものに「石をガラスによって補填する」、「石を染める」等があります。
ルビーの加熱に関しては、現在のような高温での加熱処理が始まったのは戦後1970年頃になります。
ルビーの加熱というのは、一般的に1600度の高熱を用いた加熱のことを指します。
鉱山から採掘したルビーを研磨したり、適度な温度で加熱して切り出す処理は、数千年前から行われており、これはよく言われるルビーの加熱やトリートメントとは異なります。
石の価値を下げるものでもありません。
鉱山から採掘したばかりのルビーを本当になにもしなければ、例えば下記のような輝かないルビーになります。
3)合成ルビー(シンセティックルビー)
1920-1940年頃のジュエリーではハイクラスな作品にも時々、シンセティックルビーが用いられていることがあります。
これはルビーのパーティング(中心から外側へ向かう力)する特性から、技術的に天然ルビーを四角くカッティングすることが困難であったからであると考えられます。
アールデコ期にはスクエアカットのルビーが好まれて用いられましたが、ベルヌイ技法による合成ルビーが全ての石あるいは時々一部分に用いられていることがあります。
(当店ではもちろん全ての石を外部の宝石鑑別書に委託の上、鑑別してもらい、合成の場合にはその旨をわかりやすく正確に記載させていただいております)
当時は合成ルビーにこうしたスクエアカッティングを施すのにも、天然ルビーを使う以上のコストがかかったそうです。
特に1940年代は、ージャスなハイジュエリーでも合成ルビーが使われているケースが度々見られます。
これは戦火近づく中、極東からの輸入が困難になったということも関係しているでしょう。
下記は当店扱いの40年代のシンセティックルビーのカクテルリング。
4)ルビーと類似する色を持つ、レッドスピネル
一方アンティークジュエリーでルビーに類似する宝石として忘れてならないのは、
レッドスピネルです。
スピネルは長年、その鮮やかな赤色のためにルビーと同じ石と思われてきました。
2つの宝石の混同は、1783年にフランスの鉱物学者Jean Baptiste Louis Rome de Lisle(ジャン・バティスト・ルイ・ローマ・デ・ライル )がルビーとスピネルを別の宝石として鑑別するまで続きました。
実際この2つの宝石は、見分けが困難です。
ルビーは酸化アルミニウム、スピネルは酸化マグネシウムアルミニウムの結晶からなる鉱物で、共に赤い色は石の中に含まれるクロムが起因しています。
ルビーもレッドスピネルも熱と圧力によって石灰岩が変形することによって生成され、しかも多くの場合一緒に見つかると来ては、長年混同されてきたのもうなずけます。
ルビーとスピネルが混同された事例は多く、1853年に東インド会社から、ヴィクトリア女王に献上された170カラットの黒太子のルビー(こくたいしのルビー Black Prince's Ruby)も含まれます。
現在、大英帝国王冠にセットされている「黒太子のルビー」は実は後年になりルビーではなくスピネルであることが判明しました。
スピネルは、真珠とダイヤモンドと共にロイヤルジュエリーで用いら、ロシアの「Great Imperial Crown」でも412.25カラットのレッドスピネルがその頂に配されてます。
5)近年ますます高まるナチュラルルビーの価値。
「king of precious stones(貴石の王様)」と呼ばれ、長きに渡って多くの人々の垂涎の的でしたが近年、ナチュラルルビーの価格の上昇はもはや天井なしといったところです。
下記はかつてカルティエが製作した25.59カラットのビルマ産ルビーのリング。
2015年5月のササビーズのオークションで何と約36億5200万円で落札されています。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
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シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。