ナチュラリズム(自然主義)のアンティークジュエリー
19世紀中ごろ(1960年頃)のフランスのアンティークジュエリーで、この時代に見られる「自然主義(ナチュラリズム)」が見られる作品です。
自然主義のアンティークジュエリーはエピソードでも詳しく記しましたように、イギリスではヴィクトリアンの時代に多く作られますが、フランスでは顕著にナチュラリズムの特徴が出た作品はそう多くはありません。
忘れな草の花と葉をモチーフにした典型的な自然主義のジュエリーで、房のように花が垂れる構図になっています。
純潔、涙を表した真珠
この時代、真珠は純粋な気持ちや純潔、涙を表しました。
小粒ではありますが艶のある、真珠が所狭しと、花と葉に敷き詰められています。
少しグレイッシュ帯びた真珠が、まるで秘め事のような奥ゆかしさです。
特に葉の部分を見ると分かり易いですが、葉っぱの形に合わせて大小さまざまな真珠を合わせています。
真珠が主役のペンダントですが、ダイヤモンドも3箇所にセットされています。
小さいながらこちらもとても透明感のある良質な石が使われていて、朝露のような清涼な美しさ。
ダイヤモンドの台座はイエローゴールドになっているのも面白いです。
グレイッシュ帯びた真珠は銀の台座でセッティングされていて、「光と影の対照」が引き立ちます。
トップにつながるゴールドの輪が、花をまとめていて、花束を下に受けたようなイメージです。
自然主義ならではの、自然の表現の仕方が現れています。
この輪の部分や茎部分もイエローゴールドで、真珠の台座のみが銀になっています。
ペンダントの通し輪の一つ前の輪部分にフランスの18金の刻印あり。
注:チェーンはついていません。
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19世紀のアンティークジュエリーの一部に、自然主義(ナチュラリズム)と呼ばれる、花やフルーツをモチーフにしたジュエリーが見られます。
もともとこうしたロマンチックなジュエリーの流行は、19世紀の初頭に遡り、その流行は数十年の間続きます。
1820-1830年頃に流行したロマンチックジュエリーはその特徴として、小さくそして繊細です。
これらが19世紀の半ばにかけてもっと大きく、そして構造が複雑になっていきます。
自然主義のジュエリーが当時、一世を風靡した理由は、まず何と言ってもデザインが可愛らしいこと。
そしてお花や葉の形をしたジュエリーが着けやすかったこと、そしてこの時代にガーデニングへの熱狂があったからです。
新しいエギゾティックな植物がヨーロッパにもたらされ(このことは前世紀から続いていたことですが)、19世紀の間中ずっとガーデニング熱が下火になることはありませんでした。
19世紀の半ばに特に好まれたのは薔薇、フクシア、西洋菊、ダーリア、そして新たにパンジーが加わります。
これらはそのままジュエリーのモチーフにもよくされました。
特定の花には特定の意味が込められて、このようにしてジュエリーは高貴さや感情のシンボルにもなりました。
例えば忘れな草に込められたメッセージは「真実の愛」、百合なら「幸せの再来」、アイビーは「友情や誠実」といったようにです。
このようにしてお花がモチーフになったナチュラリズムのジュエリーは、贈り物としても好まれました。
下記は1845-1850年に製作された、ヒルガオが描かれたブローチ。
花びらはパヴェセットされたトルコで作られています。
ヴィクトリアアルバート美術館所蔵。
(c) Victoria & Albert Museum, London
1851年のロンドン万国博覧会では、こうした自然主義のお花のジュエリーの傑作画集いました。
自然主義のジュエリーはイギリスとフランスで比べれば特にイギリスで大きなサイズのものが作られていますが、万博ではパリのジュエラーであるフランソワ・ デジレ・フロマン=ムーリス(1802-1855)が優勝します。
下記は1850年頃のフロマン=ムーリス製作のブレスレット。
現在ヴィクトリアアルバート美術館所蔵です。
銀が一部シルバーギルドが施され、また一部にエナメルが用いられています。
この時代らしく葉がモチーフになっています。
(c)Victoria & Albert Museum, London
フランスではウージェニー皇后が特にナチュラリズムのジュエリーを好み、1850年代にフランスのクラウンジュエリーの石を使って、ナチュラリズムのパリュールを作らせます。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
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