フィリグリー金細工のネックレス
人気の高い「フィリグリー金細工のジュエリー」。
その多くはチェーンですが、このように単品でネックレスとして仕上げられた作品も存在します。
今回はチェーンではなくネックレス、金線に数多くのシードパールが入れられています。
マーユと呼ばれるこのような楕円形のシルエット(このネックレスでは少し角ばった楕円です)は、1880-1900年頃のフランスのフィリグリー細工のチェーンに見られる典型です。
マーユの内側には更にもう一つ横長の楕円形のモチーフを、ゴールドで作り上げています。
金線に通されたシードパール(芥子真珠)
この作品では更に一つずつのモチーフの真ん中に、金線でシードパールを数粒ずつ通しています。
金線にシードパールを通したジュエリーはこの時代に流行しました。
当店でも何度か中にパールが通されたネックレスやブレスレットを扱ってきましたが、状態の良いものを見つけるのは至難の業です。
(そもそもフィリグリー細工のジュエリー自体とても人気があるので入手困難です)
石に穴を開けるということは、その宝石が小さければ小さいほど難しいです。
芥子真珠はもちろん当時の天然のシードパールで大きさも形も完全に一様ではないですから、ほぼ真ん中に穴を開けるというのが当時の熟練した職人さんであってもどれだけ高度な作業であったか。
過去にドラップリータイプで、胸の前のモチーフだけこのように真珠の入ったネックレス入手したことがありますが、このネックレスの場合は全周に同じモチーフが広がっているので更にその手間は膨大です。
全周に同じ大きさのモチーフが連なり、一見チェーンのように見える整然としたデザインがとても使いやすいです。
ネックレスの長さは43センチ。
18カラットゴールド。
1880-1900年頃のフランス製。
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アンティークジュエリーの醍醐味の一つはその手の込んだ繊細な金細工です。
あまりに緻密な細工であるため、時として肉眼では見切れないほどです。
肉眼で見切れないほどの金細工を当時、どのようにして職人さんは製作していたのでしょう?
それは手の感覚だったと言います。
熟練した職人さんは最後は手の感覚で、金細工を仕上げていったのです。
フィリグリー細工とは、金や銀を糸のように細くして巻きあげ模様をつくる金細工の一技法です。
可鍛性(かたんせい)といって、衝撃や圧力で破壊されることなく変形できるゴールドの性質を利用した加工方法です。
繊細な金細工で、20世紀初頭以前のジュエリーに見ることができます。
プラチナがジュエリーの世界で実用化されていくにつれ、このような手のかかる金細工技法は徐々に消えていきます。
フィリグリー細工は作られた時代が長期に及ぶので年代の特定が難しいところですが、下記の「マーユ」と呼ばれ楕円形の編みにフィリグリー細工を施したネックレスやブレスレットの大半は、1880-1900年頃のフランスで作られました。
まるで糸のように自由自在に美しいラインを描いています。
このようなフィリグリー金細工のゴールドあるいはシルバーの「チェーン」はほとんどがフランス製になります。
同時代のイギリスではまず見られません。
下記はやはりフランス製の銀製のフィリグリーチェーンです。
一方、大陸ヨーロッパではフランスの他にも数は少ないですがドイツやオーストリアハンガリー帝国でもフィリグリー細工を用いたジュエリーは作られました。
しかしチェーンではなくブローチ等が多く、作品の雰囲気もフランスのフィリグリー細工とは異なります。
下記はロンドン、ヴィクトリアアルバート美術館所蔵のドイツ製のシルバーフィリグリーのブローチです(1872年製作)。
(c)Victoria and Albert Museum, London 2018
銀製のフィリグリー細工はこの他、ポルトガル、エジプト等でも見られます。
下記はやはりフィリグリー細工のブレスレットで、素晴らしいフィリグリー細工に加えて更に金線に芥子真珠がセットされています。
年月とともにこうした芥子真珠は欠けていくことが多いのですが、非常に状態が良く残った希少な例です。
下記はエナメルと共にフィリグリー細工が施された例です。
特にフィリグリーのアンティークチェーンは皆様から多くのご要望をいただきますが、需要においつけていないアイテムです。
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