ジョージアン後期(王政復古)時代ならではの金細工
1820年頃、フランスで言うところの王政復古時代、イギリスではジョージアン後期時代と古い時代まで遡るリングです。
19世紀初頭のこの頃は、金がもっとも高かった時代でした。
この頃に作られたゴールドのジュエリーが、見た目より遙かに軽いのはこのためです。
少ないゴールドで目に麗しいジュエリーを作る必要性から、金細工技術が宝飾史の中でも最高に発達し、緻密でハイレベルの金細工のジュエリーが作られたこの時代。
この指輪も特にショルダー部分に美しい花と草が彫金で施されています。
装飾的なショルダーと美しい3石のガーネット。
ボリュームがあるように見えますが、触れると1グラムほどしかない見た目よりずっと軽量のリングです。
ワインレッドの麗しい3石のガーネット
このように3石のリングが並んだ指輪をトリロジーリングと呼びます。
ガーネットはいずれもワインレッドで、暗い色彩ではなく、明るい色彩が魅力的です。
3石ともスクエアカットにされていて、ゴールドの爪も装飾の一つとなっています。
ジョージアンの頃のこうした細い爪は「飾り爪」としての要素が強く(実際の宝石セッティングは石にぴったりあわせた台座でほとんどできています)、年月と共に欠けているものも多いのですが、この指輪ではいずれも残っているところも良いです。
魅力的な赤色からワインレッドの色彩を持った、透明感あるガーネットが潤いを帯びた色彩の艶やかなリングです。
宝石周りもイエローゴールドだけで、赤いガーネットとイエローゴールドの2カラーだけの色の組み合わせが明るいです。
18カラットゴールド。
1820年頃のフランス製。
指輪サイズは10号(有料でサイズ直し可)。
注:5番目のお写真の少し赤く囲ったところが凹んでいます。
触れた感じも丸みがあり鋭利ではないので、ご使用には問題ないですがこの箇所のためリーズナブルな価格でのご提供になっています。
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ガーネットは、アンティークジュエリーで最も重用されてきた宝石の一つです。
ガーネットには古くから色々な言い伝えがあります。
その中で最も古いのが、「ガーネットはノアの箱舟の灯として使われて、暗闇を照らした」という伝説。
ガーネットの深く赤い石は、古代から疫病に強い効力があると信じられてきました。
古代エジプト人及びローマ人は血液関係の病気の治療にガーネットを使ったそうです。
中世ヨーロッパではガーネットを持つと友情に恵まれ、権力の座につくとされ、支配者層に好まれました。
ガーネットには暗闇でも見通せる、ガーネットを身につけることで洞察力が増すと信じられてきたのです。
ガーネットがジュエリーの表舞台に出はじめたのは18世紀初頭からです。
下記は18世紀のガーネットを用いたフランス、ヴァンデ地方の指輪です。
アンティークジュエリーにおいて、ガーネットほど様々なジュエリーに用いられてきた色石はありません。
硬度が6.5-7.5と比較的高くカラーバリエーションも豊かなガーネットはある時は指輪、ピアス、ブレスレット、そしてカメオやインタリオなどにもされてきました。
(デマントイドガーネットの硬度がおよそ6.5、ロードライトガーネットの硬度が7.5です)
宝石としては十分な硬度がありながらダイヤモンドやコランダムまでは硬くなく、彫り物も可能ということで、ガーネットは細工もののジュエリーにも重用されました。
下記はガーネットにインタリオが施された指輪です。
なぜガーネットと言う一つの宝石で硬度に幅があるのかと言えば、「ガーネット」と言う名称が複数の石のグループの総称で、その中に4つの異なるグループが存在するからです。
その4つとは下記になります。
1)ワインレッドに代表される「アルマンディンガーネット」
現在では、良質なアルマンダインガーネットは滅多に見ることがありません。
2)ルビーに似た鮮やかな赤色の「パイロープガーネット」
パイロープとはギリシャ語で「火の目」という意味です。
チェコスロバキア西部(元オーストリア領)にあるボヘミア地方では中世よりこのような火の目のような深紅色のパイロープが採掘されていました。
3)紫赤ー褐赤色の「ロードライトガーネット」
アンティークジュエリーで見られるガーネットの中で最も多いのがロードライトガーネットです。
ロードライトとは、「バラの花のような」という意味で、この意味の通り、やや紫がかった赤色をもつガーネットです。
バラに近い、紫がかった印象的な赤色のものが高い評価を受けています。
また、透明度も非常に重要視されています。
主な産出国は、タンザニア、マダガスカル、スリランカなどです。
特にスリランカ産は、バラの花を想わせる良質な石が産出されたことで知られています。
4)美しいオレンジ色の「スペサルティンガーネット」
この種のガーネットはアンティークジュエリーではほとんど見ることがありません。
現在では色の調整が行われていますから(アンティークガーネットで見られたような良質のガーネットが現在では枯渇しているため)、これほどカラーバリエーションがあるのはやはり昔の天然無加工だからです。
ピンク色のガーネット
18世紀には特にピンク色のガーネットが、19世紀には明るい赤色の華やかなガーネットがもてはやされました。
シックな色調が魅力的なピンク色のアンティークガーネットは、その大部分が18世紀のヨーロッパで採られました。
この時代であってもピンク色のガーネットはとても産出量が少なく、小さくカットされて大切に使われました。
柔らかいピンクの色は、当時の照明のろうそくの下で、ダイヤモンドの煌めきと同じような光り方をするものが好まれたそうです。
下記はジュエリー自体は19世紀初頭に作られていますが、その色調から判断してピンク色を帯びたガーネットの石そのものは、もっと古い時代のものと推定できます。
ガーネットの産地
ヨーロッパのガーネットの産地というと、ボヘミア(現在のチェコ共和国あたり)のイメージが強いと思いますが、フランスでもガーネットは産出されました。
中でも「ペルピニャンのガーネット」はその質の高さで有名で、色調の明るい赤色がその特徴です。
ペルピニャンは、ピレネー山脈ぞいの、フランス南西部の地中海沿岸の町です。
「ペルピニャンガーネット」については、より詳しく記したエピソードがございますのでご参照ください。
ペルピニャンガーネットとフランス南西部のアンティークジュエリー
現在市場に出回っているガーネットのほとんどはフランス産でもボヘミアのものでもなく、タイ産がほとんどです。
ガーネットと記念日
ヨーロッパには、そんなガーネットを記念日に贈る習慣もあります。
まず結婚18周年。
ガーネットの宝石言葉は「貞操」。
そこから変わらぬ愛を届けるという意味で、この習慣が生まれたのでしょう。
そして初めての記念日。
またヨーロッパでは、最初に子供に与える宝石としてガーネットが贈られることが昔から多いです。
これはガーネットの持つ勤勉な力、人生に忠実であってほしいという両親の願いからでしょう。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
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シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。