大粒の濃い紫色のカボションカットアメジスト
アメジストのアンティークリングで、大粒で美しい作品というのは実はなかなかないです。
アメジストは私たち日本人が好きな宝石の一つです。
そのため特にリングやピアスはよく探しているのですが、アメジストのジュエリーはなぜか圧倒的にブローチとネックレスが多いのです!
大粒で横長のオーバルのアメジスト。
カボションカットにされています。
カボションカットは、ファセットによる光の反射に頼ることができない分、より資質の良い宝石が必要となります。
オパールのような半透明の宝石では比較的見るものの、アメジストのような透明石でカボションカットは希少です。
実際アンティークジュエリーでもなかなか見つけることができません。
くっきりとした濃い紫色から、このアメジストはおそらくロシア産だと思います。
ロシア製、あるいはオーストリア製
他にないエギゾチックな雰囲気が漂っています。
西ヨーロッパのジュエリーとは一線を画すアメジストのリング。
台座とショルダーが一体化した独特のカーブが特徴的です。
こちらのリングを譲ってくださったフランス人ディーラーさんの見解では、「間違いなくロシア製」とのこと。
刻印がないので断定はできません。
ただ14カラットゴールドであることからもロシア製あるいは、オーストリア製あたりだと思います。
カボションカットされたサファイヤと、高さのあるセッティングが高貴な雰囲気を漂わせています。
アメジストの上下左右に配されたダイヤモンドも、脇役ながら存在感があります。
指輪サイズは8号(有料でサイズ直し可)。
14カラットゴールド。
1900年頃のロシア製、あるいはセントラルヨーロッパ。
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アメジストの歴史
現代ではアメジストはそこまで高価な宝石といったイメージがないかもしれませんが、かつてアメジストは19世紀末に、南米(ブラジル)でアメジストの鉱山が見つかるまでは、非常に希少な宝石でした。
ダイヤモンドやルビーといった貴石と同じ金銭価値で探されていた宝石でした。
その宝石としての歴史は古代エジプトにまで遡ります。
アメジストの語源も、ギリシャ神話の月の女神「ダイアナ」の女官「アメジスト」に由来し、そのいわれは下記のとおり。
ぶどう酒と酩酊の神「バッカス」は、お酒の上でのいたずらが過ぎて、全能の神ゼウスにひどく叱られてしまいます。
むしゃくしゃの収まらないバッカスは、偶然通りかかった美少女「アメジスト」を虎に襲わせようとします。
それをみた「ダイアナ」が「アメジスト」を石に変えて救ったという神話があります。
そのため古代ギリシャ人は、アメジストを着けていると酔っぱらわないと信じていました。
ヨーロッパでは冷静さを保つ力があると信じられています。
古くはレオナルド・ダヴィンチはアメジストが悪い考えを散らして、そして知性を刺激することが可能であったと書いています。
その紫色のためロイヤルファミリーに愛された宝石で、アメジストを愛した人物には古くはクレオパトラ、エカチェリーナ2世がいます。
下記はかつてエカチェリーナ2世が所蔵していたアメジストのイヤリングです。
ロシアとアメジスト
アンティークアメジストと言えばロシア、ロシア皇族を抜きに語れません。
かつて最上級のアメジストはロシアのシベリアで採れました。
アンティーク市場でも古い時代のロシア産のアメジストなどは、アンティークジュエリーにおいて驚くほど高価に取引がされています。
ロシアンアメジストの中でも特に濃い色のアメジストは「サイベリアン・アメジスト(シベリア産)」と呼ばれることがあります。
サイベンアメジストの色の特徴は、色の濃さそして石の中に赤色の閃光が見えることです。
下記はサイベリアンアメジストとデマントイドガーネットのネックレス。
1908-1917年の間にモスクワで製作されたとされています。
下記は当店で販売済みのリングですが、やはりロシア製と思われます。
印象的な大粒の濃い紫色のアメジストがカボションカットにされています。
ちなみにロシアンアメジストが必ずしも濃い色なわけではありません。
ラベンダーのような色合いの薄いアメジストも存在します。
下記は19世紀後期、ロシア製作のアメジストとダイヤモンドのブローチ。
淡いロシア産ライラックカラーのアメジストが使われています。
特にロシア女帝キャサリン大女王(Catherine the Great of Russia 1729-1796年)のアメジストに対する情熱は有名です。
ウラル山脈の奥地まで数千人の炭鉱を派遣しました。
またロシアの鬼才ファベルジェは、アメジストをメイン石に据えたロイヤルジュエリーをいくつも手がけています。
アメジストとロイヤルファミリー
アメジストは多くのロシアのロイヤルファミリーに愛されたほか、英ロイヤルファミリーにも愛され、アメジストはロイヤルクラウンにも度々登場します。
下記は1947、カルティエ パリ製作のドラップリーネックレス。
ハート型のアメジストが印象的なこちらのネックレスは、ウィンザー公爵(エドワード8世)がカルティエにオーダーした作品です。
ゴールド、プラチナ、ブリリアンカット、バゲットカットダイヤモンド、カボションカット・トルコ石。
N.Welsh, Collection Cartier (c) Cartier
アメジストの色を決める要因
アメジストの紫色の発色原因は、微量に含有された「鉄イオン」によります。
色は淡いライラック色から濃紫色まで幅広いです。
色帯構造やムラのあるアメジストも多いですが、色が深く一様に見られるアメジストほど良質とされています。
一方で色の淡いアメジストも天然無加工で綺麗な色の石は、やはりとても評価がが高いです。
アメジストの結晶は、火山岩や堆積岩の低温熱水鉱脈から産出されます。
六方晶系に属した六角錐の集まりで発掘されますが、大きな結晶で発見されるのはごく稀ですので、天然の昔のアメジストで大粒のものはそれだけ貴重といえます。
アンティークアメジストの色
アンティークのアメジストは(現代のアメジストと比べて)濃い色をしているか、淡い色をしているかどちらかのことが多い」と言われています。
標準的なアメジストの色は逆に少ないです。
下記は1900年ころのイギリス製のアメジストリングですが、かなり濃い紫色をしています。
下記のペンダントは淡い、ライラック色に近い紫色です。
これはなぜかといいますとアメジストの紫色の要因は、微量に含有された鉄イオンによるものなのですが、この紫色は加熱処理することによって色を調整することが可能だからです。
現代では、色の調整がされたアメジストが非常に多いです。
低品質なアメジストに熱処理や放射線処理を施して、色を変える事が日常的に行われています。
アンティークジュエリーで見られる天然無加工のアメジストと現代の人口処理が施されたアメジストは、まるで別の宝石のように異なる価値になってしまいました。
「非加熱の天然宝石」と言ったことに関しては、ルビーなどに関しては意識される方も多いと思いますが、アメジストではあまり意識していない方も多いのではないでしょうか。
本来の天然無加工のアメジストを手に入れたいのであれば、やはりアンティークジュエリーででお探しになることをお薦めしたい宝石の一つです。
またアメジストは2月の誕生石ですが、これは聖人ウァレンティヌス(が常にアメジストを着用していたと言ういわれに由来しています。
カメオやインタリオなど彫り物とアメジスト
アメジストの硬度は7。
硬すぎず柔らかすぎず、ガーネットと並んでアンティークジュエリーでカメオやインタリオをはじめとする彫り物に重用されてきた宝石です。
下記はカーブドアメジストのペンダント。
パンジーの花の形にアメジストが彫られています。
下記はかのカステラーニによる、アメジストのカメオです。
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