実はギロシェになっている赤エナメル
19世紀後期のフランス製。
赤いエナメルのハートリング。
当店でもこれまで見たことがないほど、愛らしい指輪です。
ふっくらとした美しいシルエットのハートは、ゴールドで形成して、上部に色鮮やかな赤エナメルを施しています。
このハートのエナメルは実はギロシェエナメルになっていて、ゴールドに線刻模様を彫り、その上に半透明のエナメルをかけているので、エナメルから模様が映りこむのを楽しむことができます。
ハートの部分は横が8ミリで縦が9ミリと言う非常に狭い面積で、しかもハートは平らではなく膨らみがある中で、これだけ細かなギロシェエナメルを施しているのですから、もちろんどこにでもあるようなアンティークジュエリーではないのです。
ハートに架かるダイヤモンドの虹
ハートを斜めに縦断しているのは、6粒のダイヤモンド。
ふっくらとしたハートにまるで虹のように、ダイヤモンド流れています。
丸みのあるハートに2ミリちょっとのゴールドの橋を作っていて、その両側にぴったりとエナメルを施しています。
その作業の緻密さたるや、細やかな細工の多いアンティークジュエリーにおいても傑出しています。
ダイヤモンドは直径1.5ミリ程でローズカットにされていて、小粒ですが透明感があり、きらりきらりとエナメルのレッドをバックに煌きます。
その様はまさに虹のような、橋のような、星のようなで、ロマン溢れる指輪です。
地金は18金ゴールド。
割と落ち着いたイエローゴールドにすることで、赤いハートのジュエリーが甘くなりすぎず、程よい落ち着きが出た大人が着けるに相応しい品格があります。
この美的センスはやはりフランスならではだと思います。
指輪サイズは10.5号(有料でサイズ直し可)。
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ギロッシュ(ギロシェ)エナメルとは
ガラス質は半透明なので、金属に地模様を彫ることで繊細で美しい模様を表現出来ます。
その特徴を存分に活かしたのが、ギロシェエナメルです。
「ギロッシュ(ギロシェ ギヨッシュ)エナメル guilloche」はアンティークジュエリーに使われたエナメル技法のひとつです。
ギロシェエナメルとは、通常のギロシェ(エンジンターンを使って金属にギロシェを施す)の上に、透明あるいは半透明のエナメルをかけて下地の線刻模様を浮き出す技法のことです。
彫金加工された金属の表面に透明から半透明の釉薬をかけます。
金属の表面に同心円、放射状など繊細な模様を彫りこみ、そのうえに半透明のエナメル質をかけるのです。
金属の彫刻の上にエナメルをかけると、彫刻の深い浅いによって、エナメルの色が濃淡が生まれ、色合いの深みにつながります。
ファベルジェのギロッシュエナメル
帝政ロシア時代の奇才ファベルジェ(1846-1920年)の得意とした技法として知られています。
下記は数年前にササビーズに出展されていた、ファベルジェのギロッシュエナメルのシガレットケース(推定1904-1908年)。
これだけの作品ですが銀製です。
エナメルの色合いの美しさと彫りの美しさの両方を楽しむことができる、アンティークジュエリーにおいても非常に愛され、探されているジュエリーです。
カルティエのギロッシュエナメル
カルティエも特に20世紀初頭、時計などを中心にこのギロッシュエナメルを好んで用いています。
下記は推定1920年頃、カルティエのカフスボタンです。
小さな面積の中に美しい、ギロッシュエナメルが施されています。
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