マザーオブパールxパールの夢の競演
初めてこの指輪を見つけたときは、衝撃を受けました。
真ん中の大きな楕円形の白い石が何とマザーオブパールで出来ているのです。
こんな指輪は前にも後にも見たことがございません。
7ミリx1.5センチのこの大きなマザーオブパール。
白いマットな色調の中に、真珠層の色彩を見ることができます。
「真珠の母」と呼ばれるマザーオブパールを囲うのは、総計20個の美しい天然真珠。
まさに「真珠の母と子の競演」です。
ご想像の通り、真珠母貝(マザーオブパール)を台座として使用するのには、難しいことです。
まずそれだけの強度を持った母貝を見つけこの形にカットし、手作業で小さな爪で少しずつ留めていきます。
ジュエリーで通常用いられる融点の高い貴金属と異なり、直接火が当たらないようにしなくてはなりません。
当然のことながら現代ではこんなことを行う職人さんはいないでしょう。
真珠はよく見ますと、微妙に石によって大きさが異なっています。
天然真珠ならではの味わいです。
そして石の大きさに合わせて台座が作られています。
こうしたところがアンティークジュエリーの面白さの一つですね。
台座下の金細工の透かしもこの時代のフランスらしく、繊細でセンスが良いです。
白と緑の気品ある色づかい
真ん中の緑石はエメラルドで、小さいですが深い緑の良い色のエメラルドです。
このエメラルドの留め方もユニークで、ゴールドで円筒状に囲んであります。
直径2ミリもない小さなエメラルドなのですが、深いはっきりとした色のエメラルドによってマザーオブパールの白さが一段と映えます。
一方でマザーオブパールの台座が白い背景となり、ぽつんと真ん中に添えられたエメラルドもその美しさが引き立ちます。
マザーオブパール&真珠という「白い石」で、その真ん中にこのような深い緑色を添えるという大胆さ。
色の妙技が実にフランスらしいです。
指輪自体も非常にしっかりとした作りでボリュームもあります。
マザーオブパールがメイン石なので繊細なのではと心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、一切のぐらつきがないとてもしっかりとした作りです。
またマザーオブパールもアンティーク扇の骨などにされるぐらいですので、耐久性もあるのです。
母貝の裏を押さえるゴールドのフレームが頑丈に作りこまれています。
お手入れは真珠と同じように考えていただけましたらけっこうです。
1880年頃のフランス製。
18金ゴールド。
指輪サイズは9.5号(有料でサイズ直し可)。
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真珠には天然真珠、養殖真珠という区分け以外にも産地や組成などにより、たくさんの呼称があります。
アンティークジュエリーでよく出てくる代表的な真珠の呼称をまとめると以下のようになります。
バロック真珠
形成される段階で偶然に変形した歪んだパールのことです。
真珠が形成される初期段階で、核の周りに異物が付着し、そのまま形成されて変形が生じるためであるといわれています。
自然の中での偶然の結果なので、この世に二つと同じ形は存在しないという、魅力があります。
現在では、市場でまわる真珠のほとんどが養殖真珠であるため、皆無になってしまいました。
アンティークジュエリーでは、ルネッサンスの頃から好まれて使用されて、19世紀末頃までのジュエリーに見ることができます。
マベ真珠
母貝をマベ貝とする真珠のことです。
アンティークジュエリーにおいても珍しいですが、時々出てきます。
現代ではマベ真珠はほぼ全てが養殖で、天然のものは皆無ですが、当時はもちろんそんな技術はなく天然です。
養殖の技術は1970年代にTASAKIが開発しました。
貝殻の内側に人口の核や樹脂を貼り付けて、養殖します。
ですので現在ではマベパールは高いイメージがないかもしれませんが天然のマベ貝はまず母貝であるマベ貝の絶対量が少ないこと。
そして激しい潮流の中で生息しているため、小さな異物が入っても体外にすぐに出してしい、他の貝のよりもずっと真珠が出来にくいことで大変希少価値があります。
指輪のマベ真珠には色々な形があります。
そして半球体です。
何ともいえない美しい照りがあり、お探しのコレクターの方も多いです。
シードパール(芥子真珠)
アンティークジュエリーで見られる極小の真珠のことです。
アンティークジュエリーでは時には1ミリにも満たないようなシードパールをネックレスなどに用いていました。
もちろんアンティークジュエリーで使われているシードパールは全て天然真珠になります。
かつて天然真珠は、剥いた貝の身を桶に集めて炎天下に置き、腐敗してどろどろになった頃を見計らって海水で洗い流し、溜まった真珠を取るといったやり方で採集されていました。
そのため大粒の真珠はもとより、小粒のものも確実に集めることができたのです。
そのようにして採取されたシードパールがヨーロッパに渡り、細工を施されてさまざまなシードパールジュエリーが作られました。
シードパールジュエリーは、19世紀のヨーロッパで黄金期を迎えます。
ケシ真珠に穴を明けて細い糸を通し(真珠が小さいだけにきわめて難易度の高い作業です)、マザーオブパールの台座に縫いつけてネックレスにされたり、ゴールドの線を通してペンダントやブローチにされたりしました。
1つのネックレスを作るのに、時には1000粒以上のシードパールが使われれたこともあります。
真珠の価値としましては昔の天然真珠であってもこれほど小さな真珠は単体では、それほど大きな価値は持ちません。
しかしたくさんの芥子真珠をあしらったものはやはりとても希少で、また真珠の数が増えれば増えるほど膨大な手作業を要します。
その作品に対して高い価値が認められています。
淡水真珠
アンティークジュエリーでも淡水パールを使ったジュエリー(主に1920年代以降のコスチュームジュエリー)は時々見られます。
淡水真珠とは海で採れる真珠ではなく、湖や川で採れる真珠のことです。
天然真珠は人工的ではなく自然に異物が貝に入り込み、そこから時間をかけて真珠層が形成されるため石のほとんどすべてが真珠層でできているのですが、淡水真珠も100パーセント真珠層で作られています。
価格的には海の天然真珠にかないませんが、それでも昔の淡水真珠は真珠層が厚く光沢もよく、現代の淡水真珠と比べ物にならないほど美しいです。
時に海の天然真珠と見分けが困難なほどですが、淡水真珠のほうがフラットな輝きであることが多く、隣において見比べますと分かりやすいです。
コスチュームの淡水真珠のアンティークジュエリーは価値的には真珠そのものにあるというより、その時代を反映したデザインや細工の面白さなどが魅力です。
ミシシッピ真珠
淡水真珠の一つでアンティークジュエリーで知られた真珠に「ミシシッピ真珠」があります。
ミシシッピパールは、ミシシッピ川に生息する川真珠貝の二枚貝から偶然採れた天然真珠です。
その形が羽のようなので「フェザーパール」とも呼ばれます。
その独特の形状から多くのジュエラーを魅了し、素晴らしい品を後世に残しています。
下記は当店で扱いのミシシッピパールのピアス。
マザーオブパール
日本語では真珠母貝で、その名の通り真珠を産み出す貝のことです。
現在真珠の母貝として使用されているものは、白蝶貝・黒蝶貝・茶蝶貝・あこや貝・淡水真珠貝・コンク貝等。
マザーオブパールという名前そのものは、複数の貝を指しますが、アンティークジュエリーで出てくるのはほとんどが白蝶貝のマザーオブパールです。
フランスでも古くから重用されて、扇の骨部分やオペラグラス、ジュエリーケースなどに用いられてきました。
しかしジュエリーに用いられたのはほんの少しです。
アバロン貝(アバロンシェル)
マザーオブパールの一種で面白いシェルにアバロン貝(アバロンシェル)があります。
アンティークジュエリーでも非常に珍しい貝です。
アバロンシェルは、アワビ(鮑)の貝殻を利用しています。
黒色ベースに青、緑など様々な色が入ります。
もちろん着色などなく、天然の色の混合です。
その自然が成す美しい色の混合と真珠光沢のため、他にない神秘的な色彩が見られます。
南洋真珠
オフホワイトやクリーム色以外のブラックパールなどの色の付いた真珠は、1845年頃から出始めます。
この南洋真珠をスターダムに押し上げたのがフランス皇帝ナポレオン3世の妻ウジェニー・ド・モンティジョ(Eugenie de Montijo)です。
特に美しい黒色の南洋真珠は、クロチョウガイ(黒蝶真珠)と呼ばれます。
クロチョウガイはアコヤガイ、シロチョウガイと同じウグイスガイ科の二枚貝で、赤道を中心とする南北約30度以内の暖かい地域に生息します。
生息最適水温は24-29度ぐらいで、18度では成長がとまり、11-12度になると死んでしまうデリケートな真珠です。
クロチョウガイには多くの変種があり、その仲間はペルシャ湾、西インド洋、沖縄、ミクロネシア、ポリネシア、カリフォルニア湾へ分布しています。
フランスのアンティークジュエリーで度々目にするのが、フランス領ポリネシア地域のクロチョウガイです。
タヒチを中心にするエリアでもあることからよく「タヒチ真珠」とか「南洋真珠」とも呼ばれることがあります。
現在ではタヒチのクロチョウガイも養殖が多くなっており、他の真珠を染色処理し、黒真珠と呼んでいるものもあります。
黒色真珠の養殖は白色の真珠の養殖よりも更に後年になり、アンティークジュエリーで見られる南洋真珠は取り替えられていない限り天然真珠が使われています。
「ブラックパール」と言っても、黒、緑、グレーを帯びたものなどニュアンスはさまざまです。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
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