リアリスティックな象のチャーム
アンティークジュエリーでは様々な動物がジュエリーのモチーフにされていますが、このペンダントは何と象(ぞう)がモチーフになっています
象の中でもこのペンダントのモチーフにされているのはインド象です。
大きな肉体なのに草食で穏やかで賢い動物である象は、数は少ないもののいくつかの有名メゾンが好んでモチーフにしてきました。
特にJean Schlumberger(ジャン・シュランバージェ)がTIFFANYのために製作した象のペンダントはまさにジュエリー史に残る名作です。
かのカルティエも好んで象を題材にしてきました。
この象のチャームも重さが1グラムほどのとても軽量で小さなペンダントなのですが、金の刻印だけでなく工房印が押されています。
明らかにフランスの工房印で、片側のイニシャルが「D」です。
工房がどこのなのか判明しませんが、この技術の高さからいって、高度な技術を持つ工房の作品です。
鼻から尻尾まで素晴らしい金細工
象のすべてが金細工によってのみ表現されています。
先をキュッと曲げた前面に長く伸びた鼻、優しい顔つきに大きな耳、細身のしっぽに至るまで忠実に再現されています。
大きさが横幅1.4センチ(ペンダント通し部分を含まず)、縦幅1.2センチ程の小さい面積であるだけに、その表現力の豊かさに驚かされます。
ボディ部分のゴールドは艶消し(おそらく鏨打ちによります)が施されていて、マットな質感になっています。
これだけの小ささでこの完成度。
1900年頃のフランス製。
18カラットゴールド。
注:チェーンは含みません。
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アンティークジュエリーでは時々、そのモチーフとして動物が登場します。
こうした動物をモチーフにしたジュエリーは、センチメンタルジュエリーの一つです。
ヨーロッパでは愛する人、親しい人を「私の可愛い子猫ちゃん」「私のおてんばなお猿くん」等、動物にちなんだ呼び方をすることが昔から多くあります。
動物のジュエリーが19世紀の後期以降作られたのも、ヨーロッパでセンチメンタルジュエリーが流行した時期と重なります。
造形的に愛くるしい動物のシルエットを持つジュエリーは、ノベルティのように、愛する人への(特に男性から女性へ)プレゼント、記念品にされました。
よくモチーフとされたのは、犬、馬、猿、鹿、虎、狼,猫あたりです。
身近な動物たちが、贅沢で愛らしいジュエリーに仕上げられました。
下記は当店で販売済みの「狼」のペンダントトップ。
下記は当店扱いの「猿(モンキー)」のペンダントトップ。
猿(モンキー)」は東洋では「神聖な動物」とされており、ルネサンス時代以降にインドやエジプトからヨーロッパへ連れてこられ、当時の宮廷で珍重されていました。
イギリスやフランスで特に19世紀後期以降、猿をモチーフにした指輪やブローチ、ペンダントなどが度々作られました。
猿のボディをダイヤモンドで埋め尽くしたものなど、贅を尽くした作りのものも多いです。
下記は数年前にクリスティーズに出展された猿のブローチ。
ローズカットダイヤモンドとオールドヨーロピアンカットがパヴェセッティングされ、目にはピンクサファイヤが入っています。
1890年頃のフランス製。
(c) CHRISTIE'S 2017
下記はウサギをモチーフにしたチャームです。
下記は猫をモチーフにしたブローチです。
1950年前後は、肉厚のゴールドを用いた、旧来のアンティークジュエリーで描かれた動物とは一線を画す、とても明るいテイストのジュエリーが特にグランメゾンを中心に製作されました。
その中でもアイコン的な存在なのが、ヴァンクリーフアーペル社による猫やパンテールのジュエリーです。
下記は1950年代に製作されたヴァンクリーフアーペル社の猫のブローチで数年前にササビーズに出展されたジュエリーです。
目にはエメラルド、鼻にルビー、腹部にカボションカットされたオニキス。
この時代のこうした小動物のジュエリーは、鮮やかなイエローゴールドと宝石がしっかり使われているところがポイントです。
(c) Sotherby's
下記はまた鴨(かも)をモチーフにした指輪です。
一見蛇のように見えるのですが、鴨であるあたりがまた面白くフランスらしいです。
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アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。