モチーフは神聖な動物、狼(オオカミ)
こうしたユニークでオリジナルなアンティークジュエリーを見つけてしまうと胸が高鳴ります。
愛らしいので犬の顔のようにも見えるかもしれませんが、このペンダントのモチーフは狼。
「狼(オオカミ)」と言いますと怖い印象があるかもしれませんが、オオカミは古代ローマの建国神話にも出てくる神聖な動物。
現代でもローマの町の象徴は、狼のお乳を飲む双子の像で、アンティークジュエリーで時々、登場します。
そんな神聖な狼が、このペンダントでは19世紀後期のフランスらしく何とも美しく描かれています。
狭い面積の中に豊かな宝石の数々
ピンクの色調を帯びた明るいルビーは、当時の典型的ないビルマンルビー。
ものすごく大きいわけではありませんが、ペンダントが小粒な割りに存在感があり、綺麗です。
そして狼の目もルビー、ユニークです。
ルビーだけでなく、ダイヤモンドも意外なほど大きさがあります。
狼の顔は多くのダイヤモンド(大小いずれの石もローズカット)と銀による粒金と、そして銀による彫金で実に立体的にたくみに描かれています。
小さい面積の中に宝石が豊かに配され、ぎゅっと凝縮されたような可愛さがあります。
またオオカミの額に入ったローズカットダイヤモンドは、ちょっとドキッとするほど大きくハートのような独特の形をしており、堂々たる存在感。
チェーン部分には天然真珠も入っています。
ペンダントのチェーン部分は少し左右でアンシメトリーになっていて、これはオリジナルでの意匠のようです。
オオカミのモチーフ部分が銀製、大粒のルビーの周り、チェーン部分などが18金です。
この時代らしい少しピンクを帯びた艶やかな色のゴールドです。
19世紀後期のフランス製。
注:ネックレスチェーンはついていません。
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アンティークジュエリーでは時々、そのモチーフとして動物が登場します。
こうした動物をモチーフにしたジュエリーは、センチメンタルジュエリーの一つです。
ヨーロッパでは愛する人、親しい人を「私の可愛い子猫ちゃん」「私のおてんばなお猿くん」等、動物にちなんだ呼び方をすることが昔から多くあります。
動物のジュエリーが19世紀の後期以降作られたのも、ヨーロッパでセンチメンタルジュエリーが流行した時期と重なります。
造形的に愛くるしい動物のシルエットを持つジュエリーは、ノベルティのように、愛する人への(特に男性から女性へ)プレゼント、記念品にされました。
よくモチーフとされたのは、犬、馬、猿、鹿、虎、狼,猫あたりです。
身近な動物たちが、贅沢で愛らしいジュエリーに仕上げられました。
下記は当店で販売済みの「狼」のペンダントトップ。
下記は当店扱いの「猿(モンキー)」のペンダントトップ。
猿(モンキー)」は東洋では「神聖な動物」とされており、ルネサンス時代以降にインドやエジプトからヨーロッパへ連れてこられ、当時の宮廷で珍重されていました。
イギリスやフランスで特に19世紀後期以降、猿をモチーフにした指輪やブローチ、ペンダントなどが度々作られました。
猿のボディをダイヤモンドで埋め尽くしたものなど、贅を尽くした作りのものも多いです。
下記は数年前にクリスティーズに出展された猿のブローチ。
ローズカットダイヤモンドとオールドヨーロピアンカットがパヴェセッティングされ、目にはピンクサファイヤが入っています。
1890年頃のフランス製。
(c) CHRISTIE'S 2017
下記はウサギをモチーフにしたチャームです。
下記は猫をモチーフにしたブローチです。
1950年前後は、肉厚のゴールドを用いた、旧来のアンティークジュエリーで描かれた動物とは一線を画す、とても明るいテイストのジュエリーが特にグランメゾンを中心に製作されました。
その中でもアイコン的な存在なのが、ヴァンクリーフアーペル社による猫やパンテールのジュエリーです。
下記は1950年代に製作されたヴァンクリーフアーペル社の猫のブローチで数年前にササビーズに出展されたジュエリーです。
目にはエメラルド、鼻にルビー、腹部にカボションカットされたオニキス。
この時代のこうした小動物のジュエリーは、鮮やかなイエローゴールドと宝石がしっかり使われているところがポイントです。
(c) Sotherby's
下記はまた鴨(かも)をモチーフにした指輪です。
一見蛇のように見えるのですが、鴨であるあたりがまた面白くフランスらしいです。
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