カルティエ、パリの1968年のメダルペンダント
カルティエのメダル(メダイユ)です。
製作されたのは1968年。
裏面の刻印から1968年6月15日の作品であることが分かっています。
金細工で描かれているのはハインリヒ2世 (神聖ローマ皇帝)で英語表記はSaint Henry。
フランス語では「H」を発音しないのでサン・アンリ(フランス語表記はSaint Henri)と呼びます。
実はこの王様、アンティークジュエリーの人物画として好まれる人物の一人です。
ちょうどこのメダイユを手に入れた前日、別のところエナメル画の指輪をご紹介頂いたのですが、そこで描かれていたのもこのハインリヒ2世でした。
なぜハインリヒ2世が度々ジュエリーに描かれてきたかと言いますと、ハインリヒ2世は神聖ローマ皇帝。
聡明で教会の改革に力を注ぎ、聖堂や修道院を多く建て、理想的なキリスト教の君主として知られているからです。
聖者王(Saint Henry, the King)と称され、1146年にカトリック教会の聖人にされます。
クリスチャンモチーフのジュエリーと言いますと敷居が高いように感じられる方も多いですが、ヨーロッパの方は(基本的に無宗教の方でも)、こうしたモチーフのジュエリーはお守りのように愛でられる方が多いです。
カルティエの中でもかなり珍しい類のジュエリーで、年号だけでなく日付もはいっていることから当時オーダーメイドとして作られたジュエリーでしょう。
ゴールドだけで表現された聖人
今日「カルティエ」と言いますと宝石を贅沢に使ったジュエリーを想像されるかもしれませんが、かつてはこのように金細工に重きをおいたもの、エナメルを主体にしたジュエリーなども作られています。
このような「宝飾技術で魅せるカルティエのジュエリー」は、まさに古い時代ならではのカルティエならではです。
右手に聖槍(せいそう)、左手にボールを手にした聖人の様子が金細工で丁寧に描かれています。
緻密に艶消しがされ、マットなゴールドでハインリッヒの柔らかな顔のシルエット、槍を握り締めている指まで緻密に描かれています。
何とカルティエのオリジナルケースも残っています。
18カラットゴールド。
注:チェーンは付いていません。
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カルチェ(Cartier)は、1847年にフランソワ・カルティエによってオープンした老舗のフレンチジュエラーです。
カルティエの最秀作はベルエポック期のプラチナジュエリーと、アールデコ期の時計とハイジュエリーだと言われています。
カルティエのすごさ、それは常に時代の一歩先を読んでいたところです。
例えば1900年頃、フランスでアールヌーボーが一世を風靡していた頃、カルティエはガーランドスタイルを先取りします。
そして1910年頃、ガーランドスタイルがやはり人気を博すと今度はアールデコを先取りするのです。
(カルティエがアールデコ期に製作したジュエリーの地金のほとんどはプラチナ、そしてプラチナは他のメゾンや工房より10年プラチナを早く取り入れていることでも知られています)。
下記は1930年にカルティエNY製作の花かごのブローチ。
ダイヤモンド(バゲットカットとブリリアントカット)にロッククリスタルとムーンストーンと言う白と透明色の色の組み合わせもまたアールデコならではの色彩です。
やはりアールデコ期、1933年製作のカルティエ社の珊瑚とダイヤモンドのバングル。
効果的な紅色の珊瑚の使い方、幾何学的でダイナミックなアールデコのデザインはいずれもカルティエ社の十八番です。
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下記は当店扱いの「漆(うるし)」を用いた当時のカルティエの化粧コンパクトです。
黒漆(ブラックラッカー)はアールデコ期にこのように額縁のように重用されました。
ギロッシェエナメルも得意としました。
下記は当店扱いのカルティエのボタン、推定1920年頃。
下記は当店で販売済みのちょっと珍しいカルティエのブローチ及びクリップです。
当時の非売品で勤続10年、20年、30年、35年の記念に当時の従業員に与えられて物です。
同じディーラーさんが、同じ方から入手したそうです。
下記も量産品ではない珍しいジュエリーです。
カルティエのメダル(メダイユ)で、製作されたのは1968年。
カルティエは、世界の様々な国に展開をしていきます。
下記はカルティエUSAの製作のヴィンテージのブローチです。
カルティエはまた近年では文化技術促進の活動も積極的に行っています。
先日はモナコ公国王妃を描いた「グレース・オブ・モナコ」で撮影に協力をしました。
モナコ公国の同意のもと、ダイヤモンドの婚約指輪やモナコ王妃が実際に所有していた「カルティエ」の5つのジュエリーをアトリエで完璧に複製。
また、パリのリュ・ド・ラ・ペ13番にある「カルティエ」のブティックが映画で出てくる他、パス・ベガやティム・ロスなどの出演者もさまざまーンで「カルティエ」のアイテムを身に着けます。
グレース・ケリー役のニコール・キッドマンがこれらのジュエリーを身につけています。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。