ザ・アールデコのシンプルでいて飽きの来ないデザイン
1920年頃のフランス製。
初期のアールデコの特徴がとても良く出ている、シンプルでマニッシュなデザインが魅力的です。
「シンプル」と言っても勿論それは素材の良さや技術の高さがあってのこと。
ダイヤモンドは直径5ミリととても大粒。
19世紀までのダイヤモンドと異なり、内包物の一切ない、非常に透明度の高い美しいクッションシェイプのダイヤモンドです。
脇石などは一切用いず、シンプルに大粒のダイヤモンドだけを中央に配した潔いデザイン。
まさに大人の女性ならではの贅沢です。
ハイクラスな存在感がありながらも、場所をあまり選ばずに毎日身に着けることもできる指輪ですので、記念日のプレゼント、婚約・結婚指輪としてもお薦めです。
シンプルなラインを美しく見せるのは、技量が問われます
このシンプルなデザインに、現代でも作れそう?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
でもこうした初期のアールデコのシンプルなジュエリーほど、再現するのは難しいものです。
まず高いレベルのクッションシェイプダイヤモンド、そのちょっと角ばったダイヤモンドに隙間なくぴったり作られた台座。
ダイヤモンドをゴールドの台座に深く埋め込むスタイルも現在ではあまり見ることがなく、またこのぴったり感は卓越した職人さんしかできないハンドメイドならでは技です。
フレームはややぽっちゃりしていて手にしたときに程よい重厚感がありながらも、フレームの内側は前面にかけてゴールドを彫り出しています。
フレームからフェイスにつながる部分にスリットように、ゴールドの盛り上がりを作っています。
シンプルな自然なラインに見えますが、裏面から見るとこの部分の裏側はその形にあわせて空洞になっています。
どうやって作ったのだろうと思うような難しいことを、実にとてもさり気なくやってしまうところがこの時代のジュエリーの素晴らしさです。
地金は18金ゴールド。
指輪サイズは10.5号(有料でサイズ直し可)。
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1930年、著名なデザイナーであったポール・イリブ(Paul Iribe)はアールデコのジュエリーについて以下のように述べています。
「キュービズムとマシンデザインのために、花を犠牲にしている」。
アールデコ期にも以前として花や葉っぱなどの自然主義のモチーフのジュエリーも存続しつづけますが、「抽象的なジェオメトリックなデザインの台頭」なしにこの時代の動きは語れません。
下記は1927年、Lacloche Freres(当時美しいアールデコのジュエリーを多く生み出したスペインのメゾン) によるサイプレスの枝を描いたピンです。
同じく葉や枝をモチーフにしたジュエリーでも、19世紀のものとは一線を画したジュエリーであることが一目瞭然です。
アールデコを生み出した社会要因
ではなぜそのようなラディカルな変化がデザインの世界に起きたのでしょう?
パリで「アールデコ」という新しい芸術が発祥した理由は、まずなんと言っても第一次世界大戦によって古い価値観が崩れ、女性の社会進出をはじめとした社会革新が起きたことです。
社交界で豪華なジュエリーを付けるのは前世紀から変わりませんが、当時の富裕な女性たちは、デザインの面で大きく変化したジュエリーを好むようになります。
化粧をしたりタバコもすったモダンな富裕な女性たちのライフスタイルの変化が、ジュエリーのデザインにも変化をもたらします。
彼女たちの求めた洋服やジュエリーは、第一次大戦前までの貴族社会の中で続いてきたものとは全く違うクリエイションによってもたらされています。
ドレスデザイナーたちは第一次世界大戦後のこの時代によりシンプルなラインのドレスを作り始めました。
下記は当時活躍したファッションイラストレーターGeorges Lepapeのデッサンです。
当時の女性のイメージが掴めるでしょうか?
加えて時の経済・金融事情も新しい装飾芸術を後押しした要因のひとつでした。
1914年以前のフランスは安定した金利に支えられた安定経済だったのに対し、20年代は毎日のようにフランの価値が下がっていく激動の時代でした。
超インフレが起こり、毎日のように通貨の価値が落ちて生きます。
1919年時に5.45フランだったアメリカドルは、1926年7月にはなんと50フランに!
このような状況のもと、人々は自分の財産を換金性の高いものへ、つまり絵画・宝石・芸術品に投資していきます。
こうしてアールヌーヴォーが陰りを見せはじめた1900年ころから冷え込んでいた宝飾業界に再びお金が流れ、活気が戻り始めるのです。
アールデコジュエリーに関して更に詳しい情報は、アールデコジュエリー その特徴と魅力をご参考ください。
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