フランスアンティークジュエリーと言えば・・・
フランスアンティークジュエリーと言えばこうしたアールヌーボーのゴールドネックレスを思い浮かべる方も少なくはないでしょう。
フランスアールヌーボー期の王道を行く、美しいハイカラット(18金以上)のイエローゴールドの金細工のネックレス。
王道を行くアンティークジュエリーですが、もともと数多く作られたモデルではない上に世界的人気がありますので特にここ数年は非常に見つけずらくなってきています。
お値段も5年前と比べますと軽く2倍は超えてきています。
そしてアールヌーボーのゴールドネックレスであれば何でも良いというわけではなく、この手のネックレスはかなりピンきりです。
安価に売られているものは驚くほど軽量でモチーフが落ち着かず、明らかに着けにくいものもあります。
(レポゼ細工などを取り入れて軽くてもしっかりできているネックレスもありますので、重量だけが重量なのではありません。)
こちらのネックレスは、手にした時に心地よい重量感があります。
そしてチェーンやモチーフが滑らかでデザインのバランスもよく、綺麗なシルエットでストンと落ちてくれます。
モチーフは薔薇(バラ)。
金細工技術としては主に彫金が用いられています。
葉の部分など美しいオープンワークになっていますが、これはそれぞれのパーツを作って溶接して作り上げてるのではなく、糸鋸でくり貫いて仕上げています。
より強度が増しますが、より高度な技術です。
薔薇の花は花びらの重なり合う様子が美しく、葉は僅かな高低がつけられていることで、光が一様にあたるのではなく陰影が異なって見えます。
自然の中で朝の光を浴びている、そんな薔薇の花の瑞々しさが伝わってくるようです。
ゴールドと言う硬い素材でできていることを、しばし忘れてしまいます。
フランスアールヌーボーのハイクラスなジュエリーに見られる、素晴らしい表現力にはいつも惚れ惚れとします。
カボションカットルビーが取り入れられています
こうしたアールヌーボーのゴールドネックレスは、イエローゴールドのみで仕上げられることが多いのですが、なんとルビーが入っています。
ルビーの赤色が、明るいイエローゴールドを背景に鮮やかに煌きます。
オーバルなルビーは、なんとカボションカットされています。
カボションカットにしますとカッティングによる反射が見込めませんので、石そのものが非常に美しいものしかカボションカットにはできません。
これまでいくつものアールヌーボーのゴールドネックレスを扱ってきましたが、このような色石が入ったものは極めて稀です。
真珠の入ったものは比較的見つかりますが、他の宝石は珍しいです。
以前に一度だけ同じようなスタイルのオパールのアールヌーボーのネックレスを扱ったことがありますが、やはり石がカボションになっていました。
美しいルビーをあえて石が目立つようなセッティングにするのではなく、カボションにして宝石の存在感は落ち着かせ、美しい色の対比を楽しむ。
そのような意匠が見事に成功している作品だと思います。
ネックレスの長さは42.5センチ。
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知られざるアールヌーボーの本質
しなやかな曲線と自然への感性。
日本でも人気の高いアールヌーヴォー様式ですが、その「本質」は意外に知られていません。
アールヌーヴォーは19世紀末(1900年前後)、あらゆる芸術領域を席捲した装飾様式です。
ジュエリーの世界でアールヌーボーは、「貴石をシンメトリーにセッティングした従来のジュエリー作り」から「宝石的価値ではなく色によって選別した石を、美しく彫金されたゴールドにニュアンスカラーのエナメルと共にセットしたジュエリー」への脱皮をもたしました。
アールヌーボーと言うと柔らかな曲線から「ロマンチックな自然主義」と言うイメージが強いことでしょう。
しかしその根底には世紀末ならではの「デカダンス」があります。
溢れんばかりに花をつけた枝や、豊かに広がりうねる長い髪といったアールヌーボーの典型的な図柄の裏には、「自然の残酷さや死」が念頭にありました。
アールヌーボーのジュエラーとパリ万博(1900)
ジュエリー界でもっとも早く「アールヌーボー」の言葉を使い出したのは、ルネ・ラリック(Rene Lalique)。
下記は1902年にイギリスで発行された「Magazine of Art」に掲載されたルネラリックのジュエリーデッサンです。
女性の顔と睡蓮が描かれたペンダントのデッサンですが、この頃はまだルネラリックはロンドンでは広くは知られていませんでした。
1900年のパリ万博では、ルネ・ラリック、メゾン・ヴェヴェール(Maison Vever/ヴェヴェール工房)、ルシアン・ガリヤール(Lucien Gaillard)の3人がジュエリー部門でグランプリを獲得します。
下記は1900年頃に製作された、ルシアン・ガリヤールの青い鳥の髪飾り。
鼈甲とプリカジュールエナメル、目の部分にダイヤモンドが入れられています。
アールヌーボーは東洋の美意識、特に日本の芸術に強い影響を受けましたが、この作品は私たち日本人が見ても、日本的な美しさを感じる作品ですね。
この万博では、ジョルジュ・フーケ(Georges Fouquet)とウジェーヌ・フィアートル(Eugene Feuillatre)が金賞を受賞しました。
ジョルジュ・フーケは1898年にランの花をモチーフにしたジュエリーでアールヌーボーの作品を初めて手がけます。
そしてポスターアーティストのアルフォンス・ミュシャと一緒に、いくつものプレートをチェーンでつなげたジュエリーを発表します。
下記は1900年にアルフォンス・ミュシャがデザインした、宝石商ジョルジュ・フーケの店舗です。
ステンドグラスやモザイクタイルの装飾等、ミュシャがポスターの中で描いたアールヌーボーのテーマや曲線が再現されています。
今日、このインテリアショップの内装は、パリのカーナヴァル美術館で見ることが出来ます。
また同年代のジュエラーの中でルネラリックと並び賞賛を浴びていたのが、ベルギーのジュエラーであるフィリップ・ウォルファー(Philippe Wolfers)です。
アールヌーボージュエリーに関して更に詳しい情報は、アールヌーボー(アールヌーヴォー)のアンティークジュエリーの特徴と魅力をご参照ください。
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