ピンチベックと呼ばれる幻の合金
イギリスでピンチベック(Pinchibeck、フランスでポンポンと呼ばれるアンティークジュエリーならではの合金で作られたロングチェーンです。
カラットとしては9金以下なので現代の基準では「ゴールド」とは言えませんがゴールドを含んだ合金です。
フランスのポンポンは約3分の1(8金ゴールドとも言える)ほどゴールドを含みます。
19世紀(特に19世紀前半)までのイギリスやフランスで「高価な金の代用品」としてネックレス等に用いられてきた素材です。
ピンチベックは、ロンドンの時計職人ピンチベックが、当時とても高価だった金に代わる金属を発明した合金ですが、詳しい製法は未だに解っていません。
その謎ゆえに、なおさらファンの多い素材です。
金とはまた異なる温かみのある独特な輝きと、ゴールドの他に銅と亜鉛を含みながらも錆び付かず着用感に優れているのも魅力で、ピンチベックのコレクターの方は多いです。
19世紀初頭、あるいはもう少し前に製作された、とても古い時代のロングチェーン
こちらのチェーンは特にとても古い時代、1800-1820年頃のフランスで製作されたと推定できます。
ゴールドがジュエリー史においても最も逼迫していた時代で、上質な作りながらゴールドの代わりにピンチベックを用いているのです。
留め具部分のみ18金ゴールド(刻印あり)になっています。
小さな編みを無数につなげた、気が遠くなりそうなほど手の凝ったハンドメイドのチェーンです。
すべてのパーツに細かく粒金のような模様が施されていて、それを組み替えて輪つなぎで編みこんでいます。
商品写真は一部拡大して撮影していますが1つの輪の幅が3ミリ弱ですから、いかに緻密な細工であるが分かっていただけることでしょう。
こんなに手の込んだピンチベックのジュエリーは、私も初めてみます。
ルーペで見ますと、それぞれのパーツがまったく一様ではなく、一つずつのパーツが手作りであることが分かります。
留め具がいかにもアンティークらしい、小ぶりで挿し口が十字になっているところも、良いです。
長さは125.5センチ。
小さな写真をクリックすると大きな写真が切り替わります。
今さら・・・と思われる方もいるとかもしれませんが、意外によく聞かれる質問なので改めてご紹介させていただきます。
ゴールドの14ct(kt)、18ct(Kt)、24ct(kt)という表示の意味ですが、純金(100%が金でできていて不純物をまったく含まないもの)が24金です。
24/24が100%ですので、18Kは24分の18つまり75%が金でそのほかの25%が他の金属を使用しているという意味になります。
14Kゴールドは、14/24がゴールドで、残りの10/24に銀や銅、パラジウムを使用しています。
アンティークジュエリーに限らず、ジュエリーに使われるゴールドは18カラットゴールドまでのこと、マックスでも22カラットゴールドのことが多いです。
なぜ純金(24金)はジュエリーにされないのでしょう?
理由は純金は軟らかく、傷がつきやすいためです。
一見ゴールドの純度が高いほど丈夫と思われる方も多いかも知れませんが、違います。
銀、銅、パラジューム、ニッケルなど他の金属と「割る」ことで(ゴールドを割る金属のことを「割金」と呼びます)、硬さを得ることができます。
なぜ別も金属で割ることで硬さが得られるかというと、分子構造のためです。
同じ素材だけだと当然分子構造が均一的、ある方向からの力に弱くなります。
別の素材で割ることで、その分子構造が複雑になり、硬くなります。
例えば金と銀であれば、銀のほうが柔らかい金属です。
しかし純金より、銀を多少加えたほうが、その合金は純金より硬くなります。
アンティークジュエリーでは18金以外に、15金(イギリスのみ)、14金(58%ほどがゴールド)、9金(37.5%がゴールド)が多く見られますが、刻印が打たれているのはイギリスでもフランスでも9金ゴールド以上のものになります。
9金以下の金の含有量で作られた合金にもクオリティーのよいアンティークジュエリーは存在します。
フランスアンティークジュエリーでは8/24(つまり3分の1)が金であるポンポン、高度な金メッキであるヴェルメイユ(イギリスで言うところのシルバーギルド)があります。
「ポンポン」そして「ヴェルメイユ(シルバーギルド)」、色合い的には似ている二つですが、組成はまったく違います。
「ポンポン」は、ゴールドをベースにした合金になります。
19世紀にしかみられない独特の技法です。
金を3分の1、銀をもう3分の1、残りを他の金属を混ぜ合わせて作られています。
(完全なレシピは現代では解明されていません、配合分量は工房によってまちまちだったようです)。
金の分量的には8金とも言えるでしょう。
9金にも満たないゴールドの量ですが、見た目はゴールドに近いです。
純金や18Kより落ち着いた風合いがあって品がよいアンティークらしい色です。
限られた時代でしか用いられなかった技術ということで、そうした観点からも貴重です。
ポンポンいわゆる合金なので、変色がないと言うのが一番のメリットになります。
どういうことかと言いますと、金(ゴールド)が金属の内側も外側も均等にはいっています(成分が変わりません)。
年月を経て表面が磨耗して内部の色がでてきても、同じ成分の地金が出ているだけなので変色がしないのです。
下記はポンポンの金細工のネックレスです、ヴェルメイユに対して色に安定感があります。
ヴェルメイユ(vermeil)は、ヴェルメイユとは銀無垢に金をはったもののことを指します。
年月によって塗られた金が薄くなってきていることもあり、そのアンティークジュエリーによってより金の色が強く出ていたり、ほとんど銀のような色だったりと様々です。
下記は比較的ゴールドの色が強く残っているヴェルメイユのブレスレットです。
下記はほとんど銀のようにも見えるヴェルメイユのペンダントです。
ヴェルメイユ(シルバーギルド)はアンティークでよく使われてきた技法です。
銀のずっしりとしたボリューム感と、ゴールド独特の華やかさの両方を生かすため高価な装飾品に用いられました。
また銀の酸化して黒ずむ性質を避けるという、実質的な意味合いもありました。
つまりポンポンとヴェルメイユの決定的な違いは年月と共にゴールドの色が変化するか否かです。
またイギリスで特定の時代にのみ作られたのがピンチベック(Pinchibeck)。
ピンチベックは、ロンドンの時計職人ピンチベックが、当時とても高価だった金に代わる金属を発明した合金ですが、詳しい製法は未だに解っていません。
その謎ゆえに、なおさらファンの多い素材です。
下記は当店扱いのピンチベックのロングチェーン。
フランスアンティークジュエリーで言うところの「ポンポン」とほぼ同じ組成ですが、厳密には「ピンチベック」はピンチベック氏が生み出した技法そのもので作られた合金のみを指します。
金とはまた異なる温かみのある独特な輝きと、ゴールドの他に銅と亜鉛を含みながらも錆び付かず着用感に優れているのも魅力です。
ピンチベックもコレクターの方がとても多い素材です。
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