王政復古の時代のロマンチックジュエリー
イギリスでもフランスでも19世紀の初頭、より具体的には1820-1830年頃は金細工技術が傑出していたというのは共通しています。
フランスで言うと王政復古の時代。
この時代は、ナポレオンがもたらした重々しげな新古典主義が去り、再び貴族的でロマンチックなジュエリーが作られます。
王政復古時代の後半に作られた一部のジュエリーを、「ロマンティックジュエリー」と呼ばれることがあります。
19世紀初頭の装飾様式の変化は特にフランスの場合、めまぐるしく変化します。
1840年代にはこのような軽やかなジュエリーは消えていきますので、非常に短い間だけ見られる装飾様式です。
需要に対して金の供給が逼迫していたため、小さなサイズのジュエリーや、あるいは大きさはあっても金細工の工夫により見かけより軽やかなジュエリーが作られます。
トルコ石で描かれたのは勿忘草(忘れな草)
全体は6個のパーツからなっていますが、これらのパーツがそれぞれクラスターにデザインされています。
モチーフは忘れな草で、花びらはトルコ石。
鮮やかなトルコ石の水色が、18金の明るいゴールドの色に映えます。
そして真ん中の忘れ草の中心にはローズカットダイヤモンドが埋め込まれていて、それ以外の5つの忘れな草の真ん中にはゴールドの小さな突起した粒があしらわれています。
ダイヤモンドはとても小さく、美しいブルーと金の色の中で控えめに反射します。
全体の重量がわずか1ミリで薄い繊細なジュエリーですが、モチーフ一つずつ状態がとても良いです。
トルコ石の一つが少し傷んでいますが、約200年ほど前に作られたこれだけ繊細なジュエリーであることを考えると、奇跡的に良い状態です。
王政復古の時代のフランスのアンティークジュエリー(イギリスで言うところのジョージアンにあたります)は、かつてより日本でもファンの方が増えてきていますが、もともとフランスでもそもそも時代として短いため、非常に数が少ないです。
当店で懇意にしているディーラーさんのお一人がこの時代のジュエリーの権威ということで、これまでかなりの数をご紹介させていただきましたが、前回、前々回あたりからこのディーラーさんのところでも「王政復古時代の良い状態のジュエリー」がまったくと言っていいほどなくなっているのです。
アンティークジュエリーでも特にフランスの19世紀初頭までのジュエリーは、なるべく早めに手に入れられることをお薦めいたします。
1820-1830年頃のフランス。
注:チェーンはついていません。
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忘れな草(ワスレナグサ)は、イギリスもフランスでも19世紀中期〜後期に度々ジュエリーのモチーフにされてきたお花です。
英語では「Forget me not」。
フランス語でも「Ne m'oubliez pas」と英語とまったく同じ表現をします。
その名の由来を説明する伝説もいくつかあります。
最も有名なのが、ドナウの川辺で若者が恋人のため珍しい花みとったとたんに足をすべらし、川に落ち急流に流され、そのときに「僕のことを忘れないで」と言ったというドイツの伝承です。
残された少女は若者の墓にその花を植え、彼の最期の言葉を花の名にしたと言われています。
忘れな草をモチーフにしたアンティークジュエリーはほぼ例外なく、トルコ石がその宝石として用いられています。
下記は当店で販売済みの忘れな草のネックレス。
下記は何とダブルで描かれた忘れな草のリングです。
水色のトルコ石が用いられることが多いですが、下記のように水色のエナメルが用いられていた稀なケースもあります。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。