ワインを入れていたピシェ
フランス語で「ピシェ(pichet)」と呼ばれる水差しの形をしたペンダントトップです。
基本的には「水差し」と和訳されますが、フランスではピシェにワインを入れて、ピシェからグラスにワインを注ぎます。
昔の絵画でも、ピシェはよく描かれています。
非常に古い時代に作られたペンダントで、王政復古の時代の中でも、特にシャルル10世の時代(1824-1830年)に作られたと推定できます。
「古代色」のようなイエローゴールドに、トルコ石の水色がぴったり合っています。
全体の大きさが横寸1.6センチ(取っ手部分を含む)x縦寸1.8センチ程。
その小さい面積の中で、特にピシェの下部に全周にぎっしりと金細工で模様がつけられています。
金細工技術が栄華を極めていた時代だからこそ生まれたジュエリー
彫金の出来栄えの良さとその独特な世界観から小さいながら存在感のあるジュエリーですが、
手にすると思っていた以上に軽いことに驚きます。
王政復古の時代は非常にゴールドが貴重で逼迫しており、それがゆえに金細工技術が栄華を極めるのです。
19世紀初頭の金細工の技術が、長い宝飾史の中でも特出していることはこれまで何度も申し上げてきましたね。
描かれているのは草花で、粒金を効果的に使っています。
またトルコ石の入っている部分で模様が切り替わり、この部分は縦に線模様を彫金で細かく入れています。
トルコ石の象嵌も見事で、高度な金細工です。
小粒でありながら、王政復古時代の特徴がよく出た作品です。
アンティークジュエリーの中でもひときわ古く繊細なジュエリーが、こうした良い状態で残っていてくれたことに感謝です。
こちらのジュエリーには刻印はないですが、金位をテストしたところ12-14カラットです。
刻印がないのはそもそも刻印制度時代が19世紀を通じて広がってい来ますのでこの時代はまだオリジナルの刻印は打たれていないほうが多いです。
(加えて、2グラム以下ですので、いずれにしましても刻印は免責される重量になります。)
フランスはこの時代からゴールドと言えば18金を用いるのがスタンダードですが、このような立体的なミニチュアは金位を少し落とさないと技術的な面で難しく、14金前後のゴールドが用いられることが多いです。
注:チェーンは含みません。
小さな写真をクリックすると大きな写真が切り替わります。
チャーム(charm)とは腕輪・鎖などにつけて身につける飾りものを指します。
ラテン語の「歌(carmen)」から派生した言葉でフランス語ではシャルムと言います。
チャームという英語の意味は簡単なようで分かりづらいですが、
「人を喜ばせる、魅了するものや資質」、「ネックレスやブレスレットについいている小さな飾り」、「魔法の力が宿ると信じられている物や行動」といった意味があります。
ジュエリーの用語として使うときは、しあわせを叶えてくれそうな魔法の力を持ったお守りのような装身具、といった意味合いになります。
アンティークジュエリーでは実に様々な魅力的なチャームが作られました。
チャームはそれだけでペンダントになったり、 ブレスレットから吊り下げるてチャームブレスレットになったり、小さなチャームが指輪についた「チャームリング」と呼ばれるものも存在します。
細工に長けたアンティークジュエリーではチャームも実に凝った、多用なデザインのものが作られました。
順番に見ていくことにしましょう。
まずは動物編。
ウサギ。
猿。
定番のモチーフとしてハートのチャーム。
やはり定番の球体のボール。
花や葉もチャームのモチーフとして好まれました。
下記は薔薇のチャーム。
変わったものとしては、実用性も兼ねた笛。
運動系では、テニスラケット。
金細工を駆使したものが多いですが、下記はエナメルも秀逸な「手」のチャーム。
小さすぎて履けませんが、見事にリアルな靴。
カンテラ(ランタン)。
チャームをブレスレットに垂らしたスタイルも流行します。
様々なチャームの連なったブレスレット。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。