オパールが花びら、ガーネットが雄しべのパンジー(pensee)
19世紀末、アールヌーボー全盛のころのフランス製。
なんと6つの花びらがオパールで出来ています。
中心の赤石はガーネット、さらに右上と左下のショルダーに真珠が二粒ずつセットされています。
オパールは水色を基色とした美しいオーストラリア産オパールで、小ぶりなのに班模様がくっきりと出ています。
緑糸とピンク色が差し、遊色効果も豊かです。
水色のオパールにガーネットの赤色がワンポイントになった、色彩的にも優れたジュエリー。
まさに世界で一つだけの、美しいパンジーの花です。
膨らみと曲線を活かした、流れるような美しいシルエット
花びらは、オパールの曲線を生かしてふっくらとした膨らみが付けられ、オパールを留めているゴールドの縁には、細かなミルグレインが打たれています。
またよく見ると、ガーネットの周囲のゴールドには窪みがつけらえていて、この部分は星の形をしています。
ショルダーは左右2手ずつに分かれていて、真珠がセットされていない側のショルダーは、ゴールドが絞られ、キュッと流れるようなラインを描いています。
膨らみを持たせるところ、絞るところ、カーブを付けるところ、どれも絶妙なラインが美しく、アールヌーボーが隆盛していた時代の優れた曲線美です。
有機的な瑞々しさと優れた色彩センス、贅沢なオパールリングです。
地金は18Kゴールド。
指輪サイズは12号(有料でサイズ直し可)。
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オパールの歴史
妖艶な美しさを持つオパール。
オパールの語源は、サンスクリット語で「宝石」を意味する「upala」とする説や、ギリシャ語で「目」を意味する「opthalmus」である等、数説存在します。
古代の東洋では神聖なものと考えられていました。
そして古代ギリシャでは、持ち主に洞察力と予言の才能を与えて、病気から守ってくれる石として重宝されます。
幸運と対話をもたらす、物事を変化させる力を持つと言われる、珍しい宝石です。
しかしそんなオパールは18世紀から19世紀にかけては、当時の著名な小説家ウォルタースコットの書いた「ガイエルスタインのアン」(オパールを所持するヒロインがそのオパールを海に投げ捨てるまで不幸に見舞われ続けたという話)の影響で不吉の石と考えられ不評となってしまいます。
オパールとアールヌーボー
再びオパールが脚光を浴びるのは、フランスのアールヌーヴォー期。
ラリックをはじめとるする当時の一流フランスジュエラーの手によって、オパールは随一の人気宝石の地位を取り戻したのです。
下記は19世紀末、アールヌーボー全盛の頃のフランス出作られたオパールの指輪。
赤石はガーネットで、赤色と青色、補色の組み合わせがフランスらしい色彩センスです。
続いて下記はもう少し後、1920年頃のアールデコの影響が強く見られるオパールの指輪です。
同じオパールで時代としても数十年の違いですが、雰囲気がまったく異なります。
オパールはその柔和な中間色から、他の宝石以上にデザインによって大きくその雰囲気を変える宝石です。
オパールの産地
ご存知の方も多いことと思いますが、オパールは産地によって大まかに2つに分類されます。
オーストラリア産のオパール、そしてもう一つがメキシコ産のオパールです。
宝石業界ではオパールといえば、基本的にはオーストラリア産を指すのが普通で、メキシコ産はよく「メキ」などと省略して呼んでいることが多いです。
アンティークジュエリーで使われているオパールの大多数はオーストラリア産です。
しかしながらメキシコ産もほんの時々ですが、見かけます。
一般的には、メキシコ産オパールは、オーストラリア産オパールより品質が落ちますが、アンティークジュエリーでは稀ではありますが、美しいメキシコオパールが使われていることもあります。
メキシコオパールは一般的に、多彩な色合いがなく地色が無色透明に近いです。
水っぽい感じです(そのため「ウォーターオパール」とも呼ばれています)。
特に昔のオパールは現在のような「人工的なお化粧」がなされていませんので、すぐに見分けはつくかと思います。
オーストラリア産オパールは、1878年頃から本格的な輸出が始まっています。
1890-20世紀初頭のイギリスやフランスのアンティークジュエリーに、上質のオーストラリア産オパールを使ったジュエリーがあるのはそのためです。
この頃の良質なオパールは、石によって差はありますが、光に当てることにより赤色のファイヤーを発するものが多いです。
下記は1870-1880年頃のフランス製ですので、非常に初期の頃のオパールの指輪です。
ファイヤーオパール
オパールのファイアーというと「ファイアーオパール」と言う言葉が浮かぶ人がいるかもしれません。
ファイアーオパールとはまたアンティークジュエリーで見られるオーストラリア産オパールとは別のものです。
ファイアーオパールとは地色が燃えるようなオレンジ色をしたオパールのことで、そのほとんどがメキシコ産です。
地色が赤橙系の色のオパールの内、遊色効果を持ったものをファイアーオパールと呼んでいます。
オパールの遊色効果
オパールといえば、まずその美しい色合い、そして異なった角度や光で見た場合の色合いの変化、遊色効果(play of color)で有名です。
ではこの角度によって色が変化する遊色効果は、どうしてオパールにだけ見られるのでしょうか?
それは他の宝石とは異なる、オパールの組成にあります。
オパールは非結晶の宝石です。
ダイヤモンドやサファイア、ルビーといった宝石は、それぞれの成分となる元素が、その化学構造に基づいてしっかりとした結晶を作っているのに対して、オパールは珪素と水が混じりあって出来た粒子(つぶ)が集まって形作られているだけ。
元素同士が結びついてはいないのです。
規則正しい非結晶質の珪酸の球状粒子間を光が通る時に回折干渉して七色の光が遊色効果)が生まれるのです。
一つの石の中に「遊色効果」でいくつもの色調を見れるのが、最大の魅力です。
ローマの歴史家ブリニーは、オパールの美しさを「すべての宝石の美しさを一つにしたもの」と表現しました。
つまり、オパールにはルビーよりソフトな赤色のファイアーがあり、アメジストを思わせるパープルの色が見えることがあり、エメラルドのようなグリーンをみることができるのです。
それらが単に存在するだけでなく、光の加減や角度などによってさまざまな色の組み合わせで輝くのが、まさに花火のようなのです。
下記は当店で販売済みのバングルですが、緑色が比較的強く見えるオパールですた。
オパールは割れやすい?
ところで時々「オパールは割れやすいと聞いて心配なのですが・・・」とおっしゃる方がいます。
しかしアンティークオパールに関してはその心配はご無用です。
「割れるオパール」は第二次大戦後、メキシコから質の悪い石が入ったことがあり、それらの石が割れて問題になったからです。
これはメキシコ産オパールは「ウォーターオパール」と呼んで水分をたくさん含み、急激に内部の水分が蒸発することにより、ひび割れができて起こりました。
これは本当に一部のメキシコ産オパールに起こったことです。
しかし良質のオーストラリア産オパールは、簡単に割れるものではありません(実際100年以上も経ているのに、どのオパールも割れていません!)。
オパールは確かに硬度はあまりありませんが、特に割れやすい石ではありません。
よく「乾燥に弱いオパールは時々水につけたほうがよい」などという説もありませんが、それも必要ございません。
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