表裏で異なる模様のエナメル
今回の仕入れではいくつもの秀逸なアンティークエナメルのジュエリーを仕入れることができましたが、こちらでラストです。
ブルーの色彩が美しいエナメルロケットペンダント。
表と裏で模様が異なり、どちらを表面にしても美しい、2倍の楽しみがあるペンダントです。
まず表面は花模様。
金細工で花模様の彫りを入れて、上からエナメルをかけています。
半透明のエナメルからにお花の形が浮かび上がり、幻想的な押し花のようです。
裏面はギロッシュエナメルの王道、エンジンターン技法で同心円の模様が描かれています。
表面のお花が少し濃いめのブルーで、裏面が水色に近いブルー。
同系色の2つの濃淡の異なる青を楽しめるのも魅力的です。
全周に真珠が施されたロケットペンダント
表面(花模様側)の外側は小さな真珠で囲われています。
真珠がセットされた、このようなエナメルぺンダントは少ないです。
直径1ミリ程度の極小の真珠で状態もところどころに傷みはございますが、一つも欠けず残っていて、このエナメルペンダントを特別華やかにしています。
ペンダントはロケットになっていて開閉ができ、写真を入れることができるようになっています。
蝶番の状態もよく開閉もスムーズです。
注:チェーンは付いていません。
地金は銀製。
19世紀後期の西ヨーロッパ製。
小さな写真をクリックすると大きな写真が切り替わります。
ギロッシュ(ギロシェ)エナメルとは
ガラス質は半透明なので、金属に地模様を彫ることで繊細で美しい模様を表現出来ます。
その特徴を存分に活かしたのが、ギロシェエナメルです。
「ギロッシュ(ギロシェ ギヨッシュ)エナメル guilloche」はアンティークジュエリーに使われたエナメル技法のひとつです。
ギロシェエナメルとは、通常のギロシェ(エンジンターンを使って金属にギロシェを施す)の上に、透明あるいは半透明のエナメルをかけて下地の線刻模様を浮き出す技法のことです。
彫金加工された金属の表面に透明から半透明の釉薬をかけます。
金属の表面に同心円、放射状など繊細な模様を彫りこみ、そのうえに半透明のエナメル質をかけるのです。
金属の彫刻の上にエナメルをかけると、彫刻の深い浅いによって、エナメルの色が濃淡が生まれ、色合いの深みにつながります。
ファベルジェのギロッシュエナメル
帝政ロシア時代の奇才ファベルジェ(1846-1920年)の得意とした技法として知られています。
下記は数年前にササビーズに出展されていた、ファベルジェのギロッシュエナメルのシガレットケース(推定1904-1908年)。
これだけの作品ですが銀製です。
エナメルの色合いの美しさと彫りの美しさの両方を楽しむことができる、アンティークジュエリーにおいても非常に愛され、探されているジュエリーです。
カルティエのギロッシュエナメル
カルティエも特に20世紀初頭、時計などを中心にこのギロッシュエナメルを好んで用いています。
下記は推定1920年頃、カルティエのカフスボタンです。
小さな面積の中に美しい、ギロッシュエナメルが施されています。
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