現存する、数少ないプリカジュールエナメルのアンティークジュエリー
エナメルの一技法である「プリカジュールエナメル(Plique-a-jour Enamel)」。
プリカジュールエナメルは、裏に薄板をあててそこにエナメルを施し、後にその薄板を酸で溶かしとるエナメル技法です。
金属の下地を持たないプリカジュールは、エナメル技法の中でも最も困難な技法です。
その構造的な脆さから良い状態で残ったものがとても少なく、当店でもこの20年で片手で数えるほどしかプリカジュールエナメルのアンティークジュエリーはご紹介できていません。
近年は価格のいかんに関わらず、無傷のプリカジュールエナメルを見つけることがまず難しいです。
緑からピンク、光を通す半透明の美しい七宝
モチーフは花です。
花びらは外側を銀のフレームで囲われていて、葉脈も銀の線で描いています。
葉脈として銀のラインが所々に入ってるおかげで、構造的に繊細なプリカジュールエナメルがこれだけきれいに残っているのだと思います。
中心には真珠。
真珠は裏面から留めています。
プリカジュールエナメルですので、光にかざすと一層美しいです。
花弁の外側に向かって、黄緑からピンクの色のグラデーションが広がります。
光にかざして眺めていると、ヨーロッパの教会の椅子に座って、ステンドグラスを見ているような静謐な気持ちになります。
19世紀後期ー1900年頃の西ヨーロッパ製。
銀製。
注:チェーンは付いていません。
動画は下記をクリックしてご覧ください。
アンティークプリカジュールエナメルのペンダント
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プリカジュールエナメル(Plique-a-jour Enamel)とは
フランス語で「Plique-a-jour Enamel(letting in daylight)」。
金属の下地がなく、金属枠のみによってエナメルを支える特別なエナメル技法です。
熱することで、エナメルが透き通ります。
プリカジュールエナメルとアールヌーボー
プリカジュールエナメルの技術は中世から存在しビザンチン帝国下で発展しましたが、19世紀になるまでにほとんど用いられてなくなっていました。
それが1890年頃に、アールヌーボーのジュエラーによって最高レベルに高められて蘇ります。
プリカジュールエナメルは、アーティスティックな構図を好んだアールヌーボーのジュエリーに特に好んで用いられました。
かのルネラリックはこのプリカジュールエナメルの旗手として有名になりました。
下記は1900年頃
にルネラリックが製作したアクアマリンとダイヤモンド、プリカジュールエナメルのペンダントです。
2019年にクリスティーズで競売にかけられました。
(c) Christies
チャーチウィンドウ
裏から光りを当てるとステンドグラスのように光が透けます。
イギリスではプリカジュールエナメルのことを、「チャーチウインドウ(church window)」と呼ぶことがあります。
そもそもプリカジュールエナメルは、教会のステンドグラスの壮麗な美しさをジュエリーで表現しようと思って出来たエナメルです。
しかしその構造は異なります。
ステンドグラスに使われているガラスは細かくカットすることも薄くすることもできませんから、ジュエリーのような小さな物は作れないのです。
プリカジュールエナメルの色
複数の色合いを用いたり、美しいグラデーションを出すのは至難の技です。
下記は当店で販売済みのプリカジュールエナメルのペンダントトップです。
7色のエナメルが用いられていますが、これは想像を絶する難しさです。
と言いますのも、エナメルは色によって温度を変えて熱を加えていきます。
7回も炉に出し入れをして加熱するわけですから、1-2色のエナメルよりずっと難しくなるのです。
1900年前後にかけて多くの作家、あるいは宝飾メゾンが好んでプリカジュールを用いたハイジュエリーを手がけます。
下記は推定1900年頃、ジョルジュ・フーケのオパールとエナメルのペンダント。
数年前にササビーズ ロンドンに出展され高値で取引されています。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
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シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。