見たこともない大きさのプリカジュールエナメルのペンダント
久しぶりに入手したプリカジュールエナメルのペンダントトップ。
以前にも少し似たタイプのペンダントをご購入いただきましたが(エピソード欄をご参照ください)、なんと言いましても今回のものは直径3.3センチほどと、大きさがあるのです。
大きさもあり厚みもかなりしっかりありますので、時々見かけるこのタイプのプリカジュールのペンダントに比べて堅牢さもあります。
プリカジュールエナメルはエナメルの裏側を金属で塞がないで表現する技法です。
光を当てると透けて色が綺麗に見えます。
1番目、4番目、6番目、7番目のお写真は光にかざして撮影しています。
光にかざさなければこうした透け感はでないですが、チェーンに通してペンダントとして用いる時はその背景の色や素材によって表情が変わる所も魅力です。
緑、赤、オレンジ、青、4色のプリカジュールエナメル
色は主に4色使われていて、モチーフは花になっています。
中心や花弁に赤色、ブルー、緑、オレンジと広がっていきます。
それぞれのエナメルが小窓のように区切られた「金線」の中に広がり、そのくっきりとした輪郭の美しさから、非常に良い仕事がなされたプリカジュールエナメルであることが分かります。
一番外側のオレンジのエナメルまで、メインモチーフでもないのに金線で細かく仕切りを入れています。
こんなに細かいところまで丁寧に仕事がされていることをお分かりいただけるでしょう。
盛っているエナメル質の厚みの違いでなだらかな凹凸が出ています。
側面から見た時に特に、その微妙な立体感を楽しんでいただけます。
素材は18金イエローゴールド。
注:チェーンはついていません。
小さな写真をクリックすると大きな写真が切り替わります。
プリカジュールエナメル(Plique-a-jour Enamel)とは
フランス語で「Plique-a-jour Enamel(letting in daylight)」。
金属の下地がなく、金属枠のみによってエナメルを支える特別なエナメル技法です。
熱することで、エナメルが透き通ります。
プリカジュールエナメルとアールヌーボー
プリカジュールエナメルの技術は中世から存在しビザンチン帝国下で発展しましたが、19世紀になるまでにほとんど用いられてなくなっていました。
それが1890年頃に、アールヌーボーのジュエラーによって最高レベルに高められて蘇ります。
プリカジュールエナメルは、アーティスティックな構図を好んだアールヌーボーのジュエリーに特に好んで用いられました。
かのルネラリックはこのプリカジュールエナメルの旗手として有名になりました。
下記は1900年頃
にルネラリックが製作したアクアマリンとダイヤモンド、プリカジュールエナメルのペンダントです。
2019年にクリスティーズで競売にかけられました。
(c) Christies
チャーチウィンドウ
裏から光りを当てるとステンドグラスのように光が透けます。
イギリスではプリカジュールエナメルのことを、「チャーチウインドウ(church window)」と呼ぶことがあります。
そもそもプリカジュールエナメルは、教会のステンドグラスの壮麗な美しさをジュエリーで表現しようと思って出来たエナメルです。
しかしその構造は異なります。
ステンドグラスに使われているガラスは細かくカットすることも薄くすることもできませんから、ジュエリーのような小さな物は作れないのです。
プリカジュールエナメルの色
複数の色合いを用いたり、美しいグラデーションを出すのは至難の技です。
下記は当店で販売済みのプリカジュールエナメルのペンダントトップです。
7色のエナメルが用いられていますが、これは想像を絶する難しさです。
と言いますのも、エナメルは色によって温度を変えて熱を加えていきます。
7回も炉に出し入れをして加熱するわけですから、1-2色のエナメルよりずっと難しくなるのです。
1900年前後にかけて多くの作家、あるいは宝飾メゾンが好んでプリカジュールを用いたハイジュエリーを手がけます。
下記は推定1900年頃、ジョルジュ・フーケのオパールとエナメルのペンダント。
数年前にササビーズ ロンドンに出展され高値で取引されています。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
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シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。