0.6カラット、燦々と煌くオールドヨーロピアンカットダイヤモンド
1910-1920年頃のフランス製。
燦々と透明に輝くダイヤモンドが印象に残るリング。
指輪自体は繊細な細工の細いラインの指輪でダイヤモンドが大粒です。
直径5ミリ以上、0.6カラットほどあります。
単に大きいだけでなく、プロポーションの良いテーブル面やシャープなクラウンなど、オールドヨーロピアンカットのモデルのような美しいさ。
しかも爪と爪の間から、美しく伸びたキューレットも見ることが出来ます。
(そしてキューレットの最先端だけ軽くカットされているところも、オールドヨーロピアンカットならではの味わいです)
シャープなカット面で状態もとても良いです。
更には色合いも無色透明に近く理想的な色。
透明なのに石の底からわいてくるような力強い輝き、アンティークのダイヤモンドって、どうしてこんなに表情が豊かなのでしょう。
今のダイヤモンドにはその石特有の「顔」みたいなものがないですね、しかしアンティークのダイヤモンドにはそれがある。
ジュエリーだけでなく、石も一つずつがオンリーワンなのがアンティークです。
繊細でセンスの良いプラチナワーク
そしてこのリング、ホワイトゴールドではなく当時実用化され始めたばかりのプラチナで出来ています。
日本のアンティークの業界では「20世紀以降になり、プラチナのジュエリーが出てくる」みたいな文言が一人歩きしていますが。
イギリスに関しては確かに部分的であってもプラチナを使ったジュエリーが増えますが、フランスは20世紀以降のジュエリーもホワイトゴールドを使ったものが多いです。
これはフランス人がそもそもゴールドがとても好きな国民であり(現代でもプラチナのジュエリーは少ないです!)、また新しいものを取り入れるの比較的遅めということもあるのでしょう。
とにかくフランスのアンティークジュエリーでプラチナでできたものというのはとても少ないのです。
両方の良さがありますが、この指輪の繊細で、薄く細いラインの細工はプラチナが見事にマッチしています。
中心のダイヤモンドの左右両脇にそれぞれ3石のダイヤモンドがセットされており。
その四角い石枠に打たれた緻密なミルグレインは、さながら「星の結晶」のように清廉な美しさ。
主役の大粒のダイヤモンドとそれを引き立てる繊細なプラチナワーク、最も人気のあるアンティークリングの一つです。
毎日身に着けるに相応しい堅牢さと手入れのしやすさがあり、デザイン的にも飽きが来ないです。
プレゼントにも向いています。
指輪サイズは9.5号(有料でサイズ直し可)。
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プラチナは金や銀に比べると溶かす温度が高く、19世紀の末まで使用されることはほとんどありませんでした。
皆さんもご存知のようにプラチナが一般的に市場に出てくるのは早くても1910年頃、一般的には1920年代に入ってからです。
もちろんアンティークジュエリーは例外の連続で、稀に19世紀のジュエリーの一部に使われていたなんていうこともあり、一説によると1850年ぐらいから実験的な試みは始まっていたようです。
表面、特にダイヤモンド周りがプラチナで裏面がイエローゴールドバックになったジュエリーは20世紀初頭。
1910年頃のイギリスで言うとエドワーディアン、フランスで言うとベルエポック後期の頃の作品に良く見られます。
下記は当店で販売済みの1900-1910年製作、ダイヤモンドペンダントネックレス。
表面がプラチナでダイヤモンドの透き通った美しさを最大限に活かして、裏面がイエローゴールドになっています。
しかしゴールドパックされていない、全体がプラチナで出来たジュエリーが多く見られるのは1920-1930年代、アールデコ期のジュエリーにおいてです。
この時代、プラチナはジュエリーだけでなく時計のケースにも用いられています。
下記は当店で販売済みの同時代のプラチナダイヤモンドウォッチ。
プラチナの延性
プラチナはよく「延性がある」と表現されるのですが、粘り気があり破壊されずに引き伸ばされる性質を持っています。
少量でも延びるプラチナは小さな爪でダイヤモンドをセッティングすることを可能にし、レースのようなデリケートなプラチナワークを可能にしました。
少量でも延びるプラチナのおかげで、小さな石を完璧に留められるようになり、19世紀以前のジュエリーに比べて特に石周りが明るく垢抜けたジュエリーが多くなります。
メイン石の周りを小さなダイヤモンドが囲んだような、繊細精緻なタイプの秀逸なジュエリーが作られます。
またプラチナと言うとミルグレイン(ミル打ち)と言うほどミル(縁のギザギザ)を打つのに適した金属です。
プラチナの硬質な白い輝きは、それ以前のアンティークジュエリーとはまた異質の輝きで、その細くシャープなラインが現在見ても「時代の最先端の息吹」を感じさせてくれます。
そして特にプラチナを好んだのはカルティエです。
(カルティエがアールデコ期に製作したジュエリーの地金のほとんどはプラチナ、そしてプラチナは他のメゾンや工房より10年プラチナを早く取り入れていることでも知られています)。
下記は1930年にカルティエNY製作の花かごのブローチ。
ダイヤモンド(バゲットカットとブリリアントカット)にロッククリスタルとムーンストーンと言う白と透明色の色の組み合わせもまたアールデコならではの色彩です。
プラチナのジュエリーとゴールドのジュエリー
ちなみにプラチナが市場に出てきたからといっても、すべてのジュエリーの地金にプラチナが使われたわけではありません。
あいかわらずイエローゴールドも、ホワイトゴールドも(1875年頃から実用化)、銀のジュエリーすら作られ続けています。
特にフランスのアンティークジュエリーの場合、フランス人が歴史的にゴールドが好きな民族であるせいか1930年以降のジュエリーにおいてもプラチナを使ったものはごく一部です。
プラチナの刻印
フランスの刻印は非常に数が多く、18金ゴールドでも非常にたくさんの種類の刻印があります。
私たちディーラーでも全ての刻印を覚えていることはできず(主だったものだけを皆さん覚えています)、珍しいものがあると専門の本があるのでそれを見ながら「あーでもない、こーでもない」と盛り上がっています。
(しかもフランスの刻印は2ミリほどと非常に小さく、年月の磨耗もあり非常に見ずらいのです)。
そんな中で比較的シンプルなのがプラチナの刻印。
「犬の頭」の形をしています。
プラチナは後年に出てきたもののせいか、ゴールドと比べると刻印のバリエーションはずっと少なく、アンティークジュエリーに出てくるプラチナの刻印はほぼこの一つといってよいでしょう(もちろん外国製のもの等、例外を語りだせばキリはないのですが・・・)。
プラチナの産出量と価格
プラチナは現在では全世界の産出量の75%が南アフリカ共和国で採れるのをご存知でしょうか?
中でも南アフリカ最大規模の鉱山がラステンブルグ鉱山。
ここでは月間およそ110万tのプラチナ原鉱石を採掘しているそうです。
1トンの原鉱石の山から抽出されるプラチナは、たったの3グラム。
掘り出されたプラチナ原鉱石は近くの精錬所に運ばれ、8週間かけて純プラチナが抽出されるそうです。
プラチナの値段の動きは、ゴールドに比べて大きくなることが多いです。
値段があがるときは大きくあがり、下がるときは大きく下がるということです。
これはなぜかといえば、プラチナの市場規模が金に比べるとはるかに小さいためです。
プラチナの供給量は実に金の5%にも満たないのです。
プラチナが実用化されておよそ100年経ていますが、それでも尚、貴金属の中でも最も貴重な金属なのです。
またプラチナの生産が一部の国に偏っているものもう一つの要因です。
南アフリカのシェアが圧倒的に高く、全世界のプラチナ生産高の7割以上を占めています。
ついでロシアが生産地とあげられます。
両国と経済的に不安定な地域ということもあり(例えば政治的に何かこの地域で勃発すると値段が急騰したりします)、プラチナ市場は変動幅が大きくなっています。
アンティークのプラチナジュエリーがこれらの価格の影響を受けるかといえば、そこまで急激に連動している感じではありません。
アンティークのプラチナジュエリーは素材そのものというより、繊細なプラチナワークやその時代のトップレベルの宝飾技術が評価されていることの方が多いからです。
しかし緩やかではありますがやはり地金の価格が高騰すると、アンティークジュエリーそのものも全体として価格が高騰する傾向にあります。
そしてやっかいなのは一度価格が高騰してしまいますと、元々新たに作られることのない希少なものなので、例えその後に地金そのものの価格は下がってもアンティークジュエリーの価格は高止まりしたままになってしまいます。
プラチナのアンティークジュエリーは作られた期間がとても短く(非常に早いもので1910年代、多くは1920-30年代、そして1940年代にはもう終わってしまうので非常に短いのです)、それだけに元々非常に希少なアンティークジュエリーです。
残念ながら今後は、値段は上がることはあっても下がることはないでしょう。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
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