王政復古の見本のような指輪です
1820年頃のフランス製。
これぞ「ザ・王政復古」と呼ぶべき、この時代のジュエリー製作の特徴がすべてよく出ているモデル的な指輪です。
1)表面面積を大きく、薄めにセッティングされた美しい色石(このリングの場合はアメジスト)。
2)薄めのゴールドでやはり表面面積が大きく展開された、細やかな金細工。
(当時は19世紀の後期以上にゴールドが高価で、少ない量で華やかさを出す金細工が優れていたのです)。
3)2色のゴールド使い
(このリングにも少し黄緑帯びたイエローゴールドとピンク帯びたイエローゴールドの2色が使われています)
4)ショルダーがなく、フレームに直接つながり、そのフレームは線のように太さが均一で細め。
これだけ王政復古の特徴が如実に出た完品のジュエリーは久しぶりです。
それだけで非常に価値のあるリングです。
もちろん美しいアメジストも堪能できます
5つの大小のグラデーションになったアメジストも素晴らしいの一言。
まず色が濃いめの紫色で非常に鮮やかです。
アンティークのアメジストは現代の所謂アメジスト色より淡いか濃いことが多いのですが、この場合濃いです。
そして濃い紫色なのに明るい色調で、石の内側の方からは少しライラックの色が滲んで見えます。
自然の無加工の宝石はこのように、1つの宝石の中で微妙な色のグラデーションが見えることがあり、色がどこまでも均一的な現代のアメジストをまったく格の違う美しさです。
アメジストは正面から見ると大きさのわりに、のっぺりとした石のように見えますが、裏のキューレットは深く取られています。
とても贅沢な宝石の使い方ですね。
アメジスト1石ずつを薄いゴールドで包んだセッティングを見ていると、ゴールドは硬い素材であるはずなのに、まるで宝石をシルクで包んでいるようなデリケートさが感じられます。
宝石周りの粒金の美しさ、台座の透かし等。
その優れた一流の技巧は、ルーペで見ていても「あっ」と息を漏らすほど細やかです。
地金は18金ゴールド。
指輪サイズは20号(有料で可能)。
(サイズ直しは現状のサイズがとても大きいので、12-13号ぐらいまででしたら雰囲気を壊さずに出来そうです。
もっと小さくすることも可能ですが多少円形が潰れたような形にはなります。
現状よりはむしろ少し小さくなった方が、指輪としての雰囲気は出そうです。)
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現代ではアメジストはそこまで高価な宝石といったイメージがないかもしれませんが、かつてアメジストは19世紀末に、南米(ブラジル)でアメジストの鉱山が見つかるまでは、非常に希少な宝石でした。
ダイヤモンドやルビーといった貴石と同じ金銭価値で探されていた宝石でした。
その宝石としての歴史は古代エジプトにまで遡ります。
アメジストの語源も、ギリシャ神話の月の女神「ダイアナ」の女官「アメジスト」に由来し、そのいわれは下記のとおり。
ぶどう酒と酩酊の神「バッカス」は、お酒の上でのいたずらが過ぎて、全能の神ゼウスにひどく叱られてしまいます。
むしゃくしゃの収まらないバッカスは、偶然通りかかった美少女「アメジスト」を虎に襲わせようとします。
それをみた「ダイアナ」が「アメジスト」を石に変えて救ったという神話があります。
そのため古代ギリシャ人は、アメジストを着けていると酔っぱらわないと信じていました。
ヨーロッパでは冷静さを保つ力があると信じられています。
古くはレオナルド・ダヴィンチはアメジストが悪い考えを散らして、そして知性を刺激することが可能であったと書いています。
その紫色のためロイヤルファミリーに愛された宝石で、アメジストを愛した人物には古くはクレオパトラ、エカチェリーナ2世がいます。
下記はかつてエカチェリーナ2世が所蔵していたアメジストのイヤリングです。
アンティークアメジストと言えばロシア、ロシア皇族を抜きに語れません。
かつて最上級のアメジストはロシアで採れました。
アンティーク市場でも古い時代のロシア産のアメジストなどは、アンティークジュエリーにおいて驚くほど高価に取引がされています。
ロシアンアメジストの中でも特に濃い色のアメジストは「サイベリアン・アメジスト(シベリア産)」と呼ばれることがあります。
下記はサイベリアンアメジストとデマントイドガーネットのネックレス。
1908-1917年の間にモスクワで製作されたとされています。
ちなみにロシアンアメジストが必ずしも濃い色なわけではありません。
ラベンダーのような色合いの薄いアメジストも存在します。
下記は19世紀後期、ロシア製作のアメジストとダイヤモンドのブローチ。
淡いロシア産ライラックカラーのアメジストが使われています。
特にロシア女帝キャサリン大女王(Catherine the Great of Russia 1729-1796年)のアメジストに対する情熱は有名です。
ウラル山脈の奥地まで数千人の炭鉱を派遣しました。
またロシアの鬼才ファベルジェは、アメジストをメイン石に据えたロイヤルジュエリーをいくつも手がけています。
アメジストは多くのロシアのロイヤルファミリーに愛されたほか、英ロイヤルファミリーにも愛され、アメジストはロイヤルクラウンにも度々登場します。
下記は1947、カルティエ パリ製作のドラップリーネックレス。
ハート型のアメジストが印象的なこちらのネックレスは、ウィンザー公爵(エドワード8世)がカルティエにオーダーした作品です。
ゴールド、プラチナ、ブリリアンカット、バゲットカットダイヤモンド、カボションカット・トルコ石。
N.Welsh, Collection Cartier (c) Cartier
アメジストの色を決める要因
アメジストの紫色の発色原因は、微量に含有された「鉄イオン」によります。
色は淡いライラック色から濃紫色まで幅広いです。
色帯構造やムラのあるアメジストも多いですが、色が深く一様に見られるアメジストほど良質とされています。
一方で色の淡いアメジストも天然無加工で綺麗な色の石は、やはりとても評価がが高いです。
アメジストの結晶は、火山岩や堆積岩の低温熱水鉱脈から産出されます。
六方晶系に属した六角錐の集まりで発掘されますが、大きな結晶で発見されるのはごく稀ですので、天然の昔のアメジストで大粒のものはそれだけ貴重といえます。
アンティークアメジストの色
アンティークのアメジストは(現代のアメジストと比べて)濃い色をしているか、淡い色をしているかどちらかのことが多い」と言われています。
標準的なアメジストの色は逆に少ないです。
これはなぜかといいますとアメジストの紫色の要因は、微量に含有された鉄イオンによるものなのですが、この紫色は加熱処理することによって色を調整することが可能だからです。
勘の良い方ならもう分かるでしょう。
現代では、色の調整がされたアメジストが非常に多いのです。
低品質なアメジストに熱処理や放射線処理を施して、色を変える事が日常的に行われています。
アンティークジュエリーで見られる天然無加工のアメジストと現代の人口処理が施されたアメジストは、まるで別の宝石のように異なる価値になってしまいました。
「非加熱の天然宝石」と言ったことに関しては、ルビーなどに関しては意識される方も多いと思いますが、アメジストではあまり意識していない方も多いのではないでしょうか。
本来の天然無加工のアメジストを手に入れたいのであれば、やはりアンティークジュエリーででお探しになることをお薦めしたい宝石の一つです。
またアメジストは2月の誕生石ですが、これは聖人ウァレンティヌス(が常にアメジストを着用していたと言ういわれに由来しています。
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