エドワーディアンジュエリーの王道の一つ
エドワード王朝時代のイギリスでよく見られるジュエリーの一つがこうしたフラワーモチーフのペンダントです。
当時「色石x小さめの真珠」を組み合わせた、このようなガーランド様式の優美なペンダントが好まれました。
このペンダントで用いられているのはガーネット。
エピソード欄でも書きましたが、宝石のセッティング技術も格段に向上したこの時代。
ガーネットは3石使われていますが、それぞれの形にあわせて、いずれもコレットセッティングがなされています。
その全周に美しいミルが打たれているのも(ミルグレイン)、いかにもエドワーディアンらしい仕上げです。
3石の内、2石がラウンドカット。
真ん中のガーネットが、この時代ダイヤモンドでよくされたオールドマインのカッティングのように、スクエアを帯びた形になっています。
ガーネットのカッティングは通常ラウンドカットが多いので、スクエアの上質なカッティングが新鮮です。
ロココ様式を回顧した装飾スタイル
ガーネットはバイオレットピンクの色調の明るい石がが用いられており、それが明るいローズゴールドとよく調和して、色彩も麗しいネックレスです。
真珠も小粒ながら、いずれも艶のあるしっかりとした石が用いられています。
もちろん天然真珠です。
長い年月を経ても、退色などをしていない状態の良さも素晴らしいです。
中心のスクエアガーネットから三方向に、真珠と金細工で美しい草花が作られています。
円形の螺旋部分に配された3石の天然真珠は、空間的なバランスの取り方が秀逸です。
曲線がレイヤーのように入り組んで展開する、エドワーディアンらしい優美なラインは、お好きな方が多いことでしょう。
チェーンもオリジナルで、触れたときも心地のよいアンティークチェーン。
チェーン部分も含めて全体が9ctゴールドです。
それにしてもこのような完品のエドワーディアンの美しいペンダントでこのお値段は、コストパフォーマンスが良過ぎですね。
シェルシュミディではいつもリーズナブルに良質なアンティークジュエリーをご紹介できるよう努力しているつもりですが、やはりタイミング(今回はブレグジット価格なので特別です!)には影響を受けます。
チェーンの長さは42センチ。
そこからペンダントトップが下がりますので、あまり長すぎない方が良いです。
チェーンの長さの調節はご相談ください。
9ctゴールド
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1901年にヴィクトリア女王が死去し1902年、エドワード7世は60歳のときに即位します。
アルバート・エドワードは、ヴィクトリア女王とアルバート公の長男。
ヴィクトリア女王の御世が長かったことから、エドワード7世はイギリス王室で最も長く王太子(プリンス・オブ・ウェールズ)の地位にありました。
優れた外交センスで英仏協商、英露協商を成功させ「ピースメーカー」とも呼ばれました。
エドワード王の在位は1901-1910年までですが、「エドワーディアンのジュエリー」とは、1890年頃から1920年頃までにイギリスで作られたジュエリーを指します。
隣国フランスのベルエポック時代とほぼ重なります。
なぜこのように「エドワーディアン」と「ヴィクトリアン」が部分的に重なっている期間があるかと言うと、ヴィクトリア王朝時代の末期に既にエドワーディアンのジュエリーの特徴が見られ始めるからです。
例えばエドワードの妻アレキサンドラは皇太子妃時代から、ドッグカラーと呼ばれるチョーカー(dog collar choker)を流行させています。
ドッグカラーとは、首にピッタリの短めのサイズが特徴のネックレスで、アレキサンドラ妃はほぼ常に、ドッグカラーを単品あるいはロングネックレスと合わせて着用していました。
エドワーディアンのジュエリーを一言で言えば、「18世紀ジュエリーへの回顧」です。
この時代、まだアールヌーボーやアーツアンドクラフツの影響が残っていましたが、アーツアンドクラフツのように「クラフトマンシップ」に重きをおくのではなく、エドワーディアンのジュエリーは、宝石のセッティングに重きを置きました。
特にダイヤモンドのセッティングです。
この時代ちょうど19世紀後半からの新大陸でのダイヤモンド鉱山の発見を受け、ダイヤモンドカッティングの技術も大幅に向上していました。
エドワード王朝時代に流行したのはフィリグリーのリング、シングルダイヤモンドの結婚指輪(ホワイトゴールドを使ったものも含む)、彫りの入った紋章のリングや誕生石の指輪等です。
色使いの点でも大きな変化が見られます。
エナメルやミクロモザイク等に代表されるヴィクトリア時代のカラフルな色使いから、単色のジュエリーが好まれました。
下記は当店で販売済みのイギリスエドワーディアンのダイヤモンドリング。
宝石はダイヤモンドだけ。
単色使いの端正さが際立つリングです。
デザイン、装飾様式としてはエドワーディアンのジュエリーは言うまでもなく、18世紀のロココ様式に影響を受けています。
ジュエリーモチーフとして再び、リボンやタッセルが好まれ、隣国フランスと同様に「ガーランド」と呼ばれる独特の花綱様式が流行します。
その先駆者であったのがカルティエ社。
そしてファベルジェはこの時代にエナメルを施した、そして裏面を幾何学的なギロッシュで覆ったジュエリーで一躍有名になります。
花綱模様(ガーランド)様式のネックレスでこの時代によく作られたのが、トルマリン、真珠、ルビーなどを配したペンダントトップに短めのチェーンをつけたスタイルのものです。
下記は当店で販売済みのアメジストのペンダントネックレスです。
「ガーランドx色石x短めのチェーン」とエドワーディアンの典型的なペンダントネックレスです。
ゴールドのカラットとしては、エドワーディアンの初期の頃1900年頃まではまだ9ctゴールドも見られますが(9ctゴールドの使用はイギリスで特に1880-1900年頃に見られます)、特に20世紀に入ってからは18ctゴールドで作られたジュエリーが多くなってきます。
15ctゴールドもまだ僅かながら見られる時代です。
「白い金属」としては、19世紀からホワイトゴールドの使用が見られますが、1900年以降はプラチナが部分的にではありますが好んで用いられるようになります。
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