淡いピンクを帯びたライラック色のアンティークアメジスト
アンティークジュエリーが作られていた時代、良質なアメジストは今日よりずっと希少な宝石でした。
例えば18世紀、アメジストはダイアモンドやルビーといった貴石と同じ金銭価値で探されていました。
非加熱の天然アンティークアメジスト(アメシスト)には一言で「アメジスト」と言っても、「濃い紫」から「薄い紫」まで実に多様な紫が存在します。
このペンダントネックレスのアメジストは私がこれまで見たどのアンティークアメジストより、淡く優しい紫です。
ライラック紫に仄かにピンクの色調が混ざった明るい色
アメジストの紫色の発色原因は、微量に含有された鉄イオンによります。
一般的には「深く色むらのないアメジスト」がもっとも価値があるといわれていますが、やはり珍しい色でそして石自体が綺麗なアメジストに高い価値が認めれらています。、
淡い色のアメジストはもっと色むらがあったり、艶のないことも多いのですが、このアメジストにはまるで水のしずくのような透明感と、なめらかな光沢があります。
そんなうっとりするほどの美しいライラックカラーのアメジストが13石。
オバール型で表面はフラット面が広く取られ、裏面に驚くほど長くキューレットが伸びています。
実に非常に厚みのあるアメジストであることが分かります。
一世を風靡したネックレスデザイン、ドラップリー
首にヒダのように広がるドラップリーネックレスです。
アメジストは13石あるので、正面から見ますと首のほとんどの部分にこの明るいアメジストが吸い付くように広がります。
ドラップリーは20世紀初頭からアールデコ期にかけて特に製作されたネックレスデザインですが、エピソードの欄にも紹介させていただきましたように、カルティエなどはもっと後年にもこのようなアンティークドラップリーを進化させたネックレスを製作しています。
アメジストはいずれの石も揺れるように作られていますが、石と石の間隔は固定されています。
またアメジストは後ろにひっくり返らないように出来ており、あくまで美しいシルエットを保ったまま優美に揺れるようになっています。
中心のアメジストが最も大きく(1.1センチx1.3センチ)、そこから左右対称にアメジストの粒が小さく、グラデーションを描いていきます。
チェーンはシルバーですが、2本の線を順に編みこんだような、アンティークチェーンの中でもとても手の込んだハンドメイドチェーンです。
1910-1920年頃のフランス製。
銀製。
ネックレスの長さは42センチ。
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現代ではアメジストはそこまで高価な宝石といったイメージがないかもしれませんが、かつてアメジストは19世紀末に、南米(ブラジル)でアメジストの鉱山が見つかるまでは、非常に希少な宝石でした。
ダイヤモンドやルビーといった貴石と同じ金銭価値で探されていた宝石でした。
その宝石としての歴史は古代エジプトにまで遡ります。
アメジストの語源も、ギリシャ神話の月の女神「ダイアナ」の女官「アメジスト」に由来し、そのいわれは下記のとおり。
ぶどう酒と酩酊の神「バッカス」は、お酒の上でのいたずらが過ぎて、全能の神ゼウスにひどく叱られてしまいます。
むしゃくしゃの収まらないバッカスは、偶然通りかかった美少女「アメジスト」を虎に襲わせようとします。
それをみた「ダイアナ」が「アメジスト」を石に変えて救ったという神話があります。
そのため古代ギリシャ人は、アメジストを着けていると酔っぱらわないと信じていました。
ヨーロッパでは冷静さを保つ力があると信じられています。
古くはレオナルド・ダヴィンチはアメジストが悪い考えを散らして、そして知性を刺激することが可能であったと書いています。
その紫色のためロイヤルファミリーに愛された宝石で、アメジストを愛した人物には古くはクレオパトラ、エカチェリーナ2世がいます。
下記はかつてエカチェリーナ2世が所蔵していたアメジストのイヤリングです。
アンティークアメジストと言えばロシア、ロシア皇族を抜きに語れません。
かつて最上級のアメジストはロシアで採れました。
アンティーク市場でも古い時代のロシア産のアメジストなどは、アンティークジュエリーにおいて驚くほど高価に取引がされています。
ロシアンアメジストの中でも特に濃い色のアメジストは「サイベリアン・アメジスト(シベリア産)」と呼ばれることがあります。
下記はサイベリアンアメジストとデマントイドガーネットのネックレス。
1908-1917年の間にモスクワで製作されたとされています。
ちなみにロシアンアメジストが必ずしも濃い色なわけではありません。
ラベンダーのような色合いの薄いアメジストも存在します。
下記は19世紀後期、ロシア製作のアメジストとダイヤモンドのブローチ。
淡いロシア産ライラックカラーのアメジストが使われています。
特にロシア女帝キャサリン大女王(Catherine the Great of Russia 1729-1796年)のアメジストに対する情熱は有名です。
ウラル山脈の奥地まで数千人の炭鉱を派遣しました。
またロシアの鬼才ファベルジェは、アメジストをメイン石に据えたロイヤルジュエリーをいくつも手がけています。
アメジストは多くのロシアのロイヤルファミリーに愛されたほか、英ロイヤルファミリーにも愛され、アメジストはロイヤルクラウンにも度々登場します。
下記は1947、カルティエ パリ製作のドラップリーネックレス。
ハート型のアメジストが印象的なこちらのネックレスは、ウィンザー公爵(エドワード8世)がカルティエにオーダーした作品です。
ゴールド、プラチナ、ブリリアンカット、バゲットカットダイヤモンド、カボションカット・トルコ石。
N.Welsh, Collection Cartier (c) Cartier
アメジストの色を決める要因
アメジストの紫色の発色原因は、微量に含有された「鉄イオン」によります。
色は淡いライラック色から濃紫色まで幅広いです。
色帯構造やムラのあるアメジストも多いですが、色が深く一様に見られるアメジストほど良質とされています。
一方で色の淡いアメジストも天然無加工で綺麗な色の石は、やはりとても評価がが高いです。
アメジストの結晶は、火山岩や堆積岩の低温熱水鉱脈から産出されます。
六方晶系に属した六角錐の集まりで発掘されますが、大きな結晶で発見されるのはごく稀ですので、天然の昔のアメジストで大粒のものはそれだけ貴重といえます。
アンティークアメジストの色
アンティークのアメジストは(現代のアメジストと比べて)濃い色をしているか、淡い色をしているかどちらかのことが多い」と言われています。
標準的なアメジストの色は逆に少ないです。
これはなぜかといいますとアメジストの紫色の要因は、微量に含有された鉄イオンによるものなのですが、この紫色は加熱処理することによって色を調整することが可能だからです。
勘の良い方ならもう分かるでしょう。
現代では、色の調整がされたアメジストが非常に多いのです。
低品質なアメジストに熱処理や放射線処理を施して、色を変える事が日常的に行われています。
アンティークジュエリーで見られる天然無加工のアメジストと現代の人口処理が施されたアメジストは、まるで別の宝石のように異なる価値になってしまいました。
「非加熱の天然宝石」と言ったことに関しては、ルビーなどに関しては意識される方も多いと思いますが、アメジストではあまり意識していない方も多いのではないでしょうか。
本来の天然無加工のアメジストを手に入れたいのであれば、やはりアンティークジュエリーででお探しになることをお薦めしたい宝石の一つです。
またアメジストは2月の誕生石ですが、これは聖人ウァレンティヌス(が常にアメジストを着用していたと言ういわれに由来しています。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
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