アンティークジュエリーで用いられている真珠について

「アンティーク=天然真珠」だと思っていませんか?

アンティークジュエリーに少しでもお詳しい方でしたら「昔は養殖の技術がなかったのだから、アンティークジュエリーで使われている真珠は全て天然真珠ですよ」といったことを聞かれたことがあるでしょう。
これはアンティークジュエリーの業界のセール文句になっているようですが必ずしも正しくはありません。
アンティークジュエリーに使われている真珠の多くが天然真珠です。
しかし全てが天然真珠ではありません。

上記の「アンティーク真珠=全て天然説」はヨーロッパで養殖真珠が本格的に市場に出始めるのは、一般的に1920年代頃からと言われていますからそれに基づいた論拠ということになります。
しかし養殖真珠はそれ以前にヨーロッパに存在し、一説には1880年頃から存在していたと言われています。
実際に1900年頃のヨーロッパのアンティークジュエリーから一部に使われています。
例えば下記をご覧ください。

こちらはフランスの有名なジュエリー専門のオークション会社のカタログから抜粋したものになります。
クリスティーズを初め世界の名だたるオークション会社のジュエリー競売では、真珠に関してきわめて厳密な明記が求められ、専門家が事前調査をしています。
この「真珠とダイヤモンドの指輪」は「1900年頃に製作されたと」推定されていますが、ジュエリーの説明文のところにここに「Perles de culture(養殖真珠)」と言う記載があります。



同じカタログから別の事例をご紹介いたしましょう。
こちらは花綱模様の美しい典型的なベルエポック時代のダイヤモンドと真珠のペンダントです。
こちらは1910年頃の推定と先ほどの作品より僅かに後年になりますが、こちらは「une perle en pampille(天然真珠の房飾り)」と記載があります。
天然真珠になります。



天然真珠の評価がもっとも高かったのは、20世紀の初頭です。
1900-1920年頃は非常に美しい天然真珠のジュエリーが作られた時代であるのと同時に、初期の頃の養殖真珠がジュエリーに使われはじめた時代でもあります。
この時代に天然真珠として最大に近い大きさの最高級の天然真珠を使ったロングネックレスは、現在の貨幣価値に換算して約10億円で取引されたと言う記録が残っています。
1940年代にはもう養殖真珠が凌駕していき戦後は言うに及びませんので、美しい天然真珠が用いられたアンティークジュエリーを探すのであればやはり1930年代頃までというべきでしょう。
また19世紀以前のもっと古い時代のアンティークジュエリーでも後年になって付け替えられた可能性もゼロではありませんから、注意が必要です。

「養殖真珠」といっても本当の初期の頃(20世紀初頭)の養殖真珠は真珠層が厚く非常に出来がいいです。
現代の養殖真珠とは雲泥のレベルの差があり、それはそれで近年では高額に取引をされています。
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上記は当店で販売しました養殖真珠の一連のネックレスです。
このネックレスの真珠は養殖真珠が作られ始めた本当に初期の頃の作品で、当時は真珠層を非常に長い年月をかけて作りましたからこのように天然真珠に見えるほど美しいのです。
養殖真珠としてトップクラスの作品です。
あまりの美しさにため息が出ます。
天然真珠への評価が高まる昨今では、初期の頃の養殖真珠はヨーロッパのオークション等で非常に高価な値段がついてきています。
養殖真珠へのイメージが大きく変わるのではないでしょうか?

良い天然真珠の条件とは

真珠は数千年前から、ありとあらゆる権力者に愛されてきた宝石です。
東西を問わず真珠は富と権力の象徴であり、王族、貴族、宗教者、マハラジャ等々に愛されてきました。
貝の体内から美しい真珠が生まれ出る神秘は世界各地でさまざまな成因伝承を生みだしました。
そしてそしてその想いの深さを証明するように、人々は真珠を多くのロマンティックな言葉で形容詞しました。
代表的なものに「月の雫(しずく)」という表現があります。
古代ローマの博物誌には「月夜に、海面に浮かび上がった貝がひらき天から舞い降りた霧を吸い込んで育てたのが真珠」という幻想的な解説が残されているそうです。
その他にも 天然では産出が稀な真珠は、「天の露」、「人魚の涙」、「小さな月」などと比ゆされます。

いわゆるダイヤモンドの4Cにあたる、真珠の評価基準は「巻き」「照り(光沢)」「形」「大きさ」「色」「キズ」の6つです。
このうち特に分かりにくいのは「巻き」と「照り」でしょうか。
「巻き」とは、真珠の芯となる核を取り巻く真珠層の巻きつきのことです。
薄巻きのものには真珠本来の美しさがなく、厚巻きのものほど価値があるとされています。
照り〈光沢)」の良い真珠ほど珍重されてきました。
小粒な真珠の場合難しいですが、良い真珠には自分の顔が映るかどうかを見てみるのも良い方法と言われています。

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当店で販売しているガーランドの真珠のネックレスです。
房飾りになった真珠は光沢がありすぎて写真を撮るときに光を反射し、真珠の上部と下部でまるで色が異なるように映ってしまうほどです。(実物はそんなことはないのですが光の干渉です)
(余談ですがこうしたダイヤモンドなどが埋め込まれた豪華な房飾りが付いた真珠は、後年になっても付け替えるのが難しいのでそうした意味でオリジナルの真珠のままである可能性が高いです)


また真珠のクオリティーをあらわす言葉に「イリデッセンス」があります。
イリデッセンスとは英語で「虹色」という意味になります。
「干渉色」とも呼ばれ、真珠の表面に見られる光の波が重なって起こる虹色のことを指します。
もちろん照りの良い上質な真珠にしか見られないものです。
これは光の干渉によって起こります。
私たちが見ることのできる光にはすべて波があり、波なので上がって山となり、次に下って谷となります。
光によってこの周期(波長)は異なりますが、山と山、あるいは、谷と谷が一致するように2つの波が重なり合うと、山の高さが2倍、あるいは、谷の深さが2倍の波になります。
こうして波が重なり合って、強め合ったり、弱め合ったりする現象を干渉と言い、イリデッセンスの原因となります。
名称はギリシャ神話の虹の女神 Iris に因んでいます。

天然真珠と養殖真珠の違い

天然真珠と養殖真珠、その違いは何でしょう?
1)まずは退色の違い
「真珠は退色する」と思ってらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
でもアンティークジュエリーで使われている真珠は100年以上経ても、美しいまま残っていますよね。
なぜでしょう?
真珠を留める時にはまず、真珠に穴を開けますよね。
養殖真珠(現在の真珠で純粋な天然真珠はほぼ皆無ですので=現在の真珠ともいえます)はその穴から核と真珠層の間に大気中のいろいろな物質が浸透して、中から退色が発生するのです。
これに対して天然真珠は核が比べ物にならないほど小さく、そのため内部からの変色がほとんどないのです。
また天然真珠のほとんど全体が真珠層でできているのに対して、養殖真珠は外側の0.01-2ミリが真珠層でその内部(つまり大部分)が人工的な核できています。
当然この核の大きさの違いが、退色の差になります。

2)大きさ
現在ではマーケットに出ている真珠のほとんどが養殖真珠ですので、ある程度大粒の真珠に慣れている方が多いかもしれません。
しかし本来、天然真珠は大きい真珠が非常に稀な存在で、5ミリ以上ある真珠はかなり大粒になります。
5ミリ以上になりますと真珠そのものが宝石としての価値が増し、近年ますますその評価は上がってきています。
それほど価格や価値に大きな影響を及ぼす真珠の大きさですが、現在の養殖真珠では大粒でも小粒でもそれほど値段に開きはありませんね。
なぜでしょう?
養殖、特に現在の養殖真珠は真珠層が0.01mm以下ととても薄いのです。
その内側はすべて人工の核。
それだけ本来の真珠層が薄いのですから、真珠が大きくても小さくてももちろんその価値はほとんど変わりません。
天然真珠ですと、1ミリ大きくなるのにものすごい年月を要し、それだけ数が少なくなります。
そのため昔の天然真珠の場合大きさにより、値段の差があるのです。

指輪やピアスのように1-2粒の真珠は比較的大きな天然真珠が使われているものも少なくないですが、下記のような真珠のネックレスでは大粒の真珠の者だけを集めたものは少なく、 真珠の粒の大きさがグラデーションになっていることが多いです。
それもそのはず、大粒の天然真珠は非常に数が限られていたからです。

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3)形
アンティークジュエリーで見る天然真珠は真円のものばかりではありませんね。
なぜでしょう?
天然真珠は大きくなればなるほど歪になりがちです。
そのほとんどが大きな丸い核でできている現在の「真珠」では、真円は当たり前のように作れますが、天然真珠は、中までそのほとんどが真珠層。
とてつもなく長い時間をかけて真珠層が作られるので、天然真珠は大きくなればなるほど歪になりがちです。
自然のものですからそれが当たり前なのです。
天然真珠を使ったアンティークジュエリーで特に指輪などをじっくり観察してみますと、一見真円に見えるけれどよく見ると真珠の形が扁平だったり少しいびつな形をしていることが多いです。
天然真珠では完璧な真円の真珠は、大きくなればなるほど少ないもの。
完全な真円の真珠と言うのが稀になっていきますのでそこでセッティングの妙で、正面からみたときに真円に見える見えるように、絶妙な位置に穴を開けて真珠をセットしているのです。
この絶妙な按配がさすが昔の職人ならではです。
大きめの天然真珠を使ったアンティークジュエリーに出会ったら、横から見てみるのも面白いです。

例えばこちらは当店で販売済みの真珠とダイヤモンドのクロスオーバーリング。
正面から見たときはほぼ真円に見えますが・・・。

大粒ダイヤモンドと真珠トワエモワ
横から見ますとかなりいびつな形であることが分かります、これもまた味わいでセッティングの妙です。

大粒ダイヤモンドと真珠トワエモワ
簡単に言えばそれは天然真珠は養殖真珠と比べ物にならないほど長い年月を経てできたものだということです。
養殖真珠が数ヶ月で膨らむのに対して、天然真珠は何十年何百年という年月を経て(それも偶然の産物で)ようやく生成されるものなのです。
養殖真珠はそもそも人為的に核をいれているので、外側だけが真珠層。
内側はどんどん人工的な力で大きく膨らんでいくので、生成のために要するのは3ヶ月ほどです。
それから2年間ほど乾燥して(最近ではこの過程をもっと縮小した養殖真珠も多いよう)、2-3年後には商品として並んでいるのです。
一方の天然真珠は、あこや貝などの真珠層に偶然入った小さな異物を核にして、長年の年月を掛けて真珠層が形成されます。
これは何十年以上要するものなのです。

天然真珠と養殖真珠の見分け方

天然真珠の見分けは熟練したディーラーさんでも100%は難しいです。
人によって色々なことをおっしゃいますので、いくつかご紹介ましょう。

1)ちょっとユニークな方法で「舐めると分かる」とおっしゃる人はけっこういます。
天然真珠は少しざらっとした感覚があるようです。
でも衛生的ではないですし、何か嫌ですよね。
私は目の前で「舐めて確かめよう!」とするディーラーさんは、厳しく制御してますのでご安心ください(笑)

2)結び目(ノット)を見る
特にネックレスの時は私もチェックする項目です。
天然真珠は概して穴が小さめのことが多く、真珠と真珠の間に結び目(ノット)が入っていないか、入っていても小さめであることが多いのです。
絶対的とは言えず、天然真珠でもノットの入れたものはありますが結び目から見える穴は見てみる価値があります。
下記は当店で販売済みの天然真珠のネックレス。
こちらのネックレスは真珠の粒が小さめということもあり、ノットは入っていません。

天然真珠ネックレス(細身)

3)色や艶
これは当たり前ですが、もちろん見るべきポイントです。
天然真珠の場合、複数の真珠が使われている時に微妙に形や色が異なる場合が多いです。
また真円ではない真珠は形だけでもう天然真珠と判断できるので判別が簡単な例です。
例えば下記のような真珠は明らかに天然真珠で分かりやすいです。

ダイヤモンドと真珠のアンティーク指輪
養殖の真珠ではあまり見られない色合いも存在します。
例えば下記の指輪のクリーム帯びた色の真珠は、養殖の初期の頃には作られなかった色です。
またこちらの真珠は非常に光沢があり、真珠に自分が映りこみそうなぐらいです。

 2色の天然真珠指輪(シャンパン、オフホワイト)

4)X線にかける
私が現地で真珠博士として慕っているディーラーさんは上記等の方法で判別に悩む場合はX線にかけるのは有効な方法です。
医療用のX線で十分で彼女は知り合いに頼んでかけてもらうそうなのですが、日本では中々そのような融通はきかなそうですが・・・。
X線をかけることで核の状態を見ます。
もっともこれも養殖の初期の頃は核が小さく真珠層が厚いため、ある程度見慣れていないと難しいです。
またそれなりにお金のかかる方法ですので、ある程度大きな真珠にお薦めの方法です。


シェルシュミディでも、真珠ジュエリーの買い付けは、宝石の中でも一番神経を使います。
初期の頃の天然真珠と本物の天然真珠、相当ベテランのアンティークディーラーでも100%見分けられる人はまずいないです。
当店が現在取っている対策としては、一つには明らかに形状などで天然と分かるボタンパールなどのみを仕入れる。
それ以外の判別が難しいタイプの真珠に関しては(例えばオフホワイトの大粒の真円に近い真珠の場合)真珠博士ともいえるほど真珠に詳しいディーラーさんからのみ仕入れるようにしています。
彼女は判別の難しいものは、必ずX線をかけるからです。
天然真珠は実に買い付けの時に神経を使う宝石ですが、それでも良い天然真珠を手に入れたときの喜びは格別です。

アンティークでしか存在しないハーフ真珠(ハーフパール)

ハーフパールとは、真円真珠を半分にカットしたもの。
真珠の種類ではなく技法のひとつです。
基本的にはアンティークジュエリーでしか見つけることができない宝飾技術です。
養殖真珠が作られ始める前、真珠は現在では考えられないほど稀少な存在でした。
天然真珠があまりにも高価なものだったため、真珠を2つにカットしてジュエリーに用いられました、それがハーフパール(ハーフ真珠)です。
ブローチ等の場合、真円真珠は穴をあけて接着剤を付けて針に刺してセットしますが半円真珠の場合はそれが出来ないため、小さな爪で留めてセッティングを行います。
真珠をカットするだけでも大変な技ですが、それを留めるには更に高度な技術を要します。
最近では「アンティーク風」のものが流行しており、稀に「ハーフ真珠」と唄っている商品を見ることがありますが、アンティークジュエリーで見つかる天然真珠のハーフパールとは別ものです。
質の良いハーフ真珠がアンティークジュエリーでしか存在しないその理由は主に3つ挙げられます。

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1)天然真珠を真二つにカットするということは(もちろん手作業でやります)、とても高度な技術を要します。
真珠は硬度はそれほど高い宝石ではありせんし、自然の産物である天然真珠はそもそも完全な真円ではないですからなおさら難しいです。

2)何十年、何百年と持つようなハーフパールをセットするのが、至難の業だからです。
円形の真珠であれば穴を開けて針を刺すということができます。
これも非常に難しい技術ですがハーフパールの場合はそれができないため、すべて爪で留める必要があります。
天然真珠は小ぶりのものが多いですから、その一粒ずつを全て小さなゴールドの爪でセッティングする必要があるのです。

3)もう一つ大事なことは、アンティークジュエリーの良質なハーフカット真珠は100年経ても退色していないということです。
現代の養殖真珠ですと、真珠の大方は人工的な核ですから、当然半分などにしてしまえばほどなくして退色が始まってしまうでしょう。
本物のハーフ真珠は、良質な天然真珠と、当時の高度な宝飾技術の両方があってようやく出来るものなのです。

様々なアンティーク真珠(バロック、淡水、マザーオブパール、クロチョウガイ)

真珠には天然真珠、養殖真珠という区分け以外にも産地や組成などにより、たくさんの呼称があります。
アンティークジュエリーでよく出てくる代表的な真珠の呼称をまとめると以下のようになります。

1)バロック真珠

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形成される段階で偶然に変形した歪んだパールのことです。
真珠が形成される初期段階で、核の周りに異物が付着し、そのまま形成されて変形が生じるためであるといわれています。
自然の中での偶然の結果なので、この世に二つと同じ形は存在せしないという、魅力があります。
現在では、市場でまわる真珠のほとんどが養殖真珠であるため、皆無になってしまいました。
アンティークジュエリーでは、ルネッサンスの頃から好まれて使用されて、19世紀末頃までのジュエリーに見ることができます。

2)マベ真珠。
母貝をマベ貝とする真珠のことです。
アンティークジュエリーにおいても珍しいですが、時々出てきます。

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現代ではマベ真珠はほぼ全てが養殖で、天然のものは皆無ですが、当時はもちろんそんな技術はなく天然です。
養殖の技術は1970年代にTASAKIが開発しました。
貝殻の内側に人口の核や樹脂を貼り付けて、養殖します。
ですので現在ではマベパールは高いイメージがないかもしれませんが天然のマベ貝はまず母貝であるマベ貝の絶対量が少ないこと。
そして激しい潮流の中で生息しているため、小さな異物が入っても体外にすぐに出してしい、他の貝のよりもずっと真珠が出来にくいことで大変希少価値があります。
この指輪のマベ真珠は真円に近いですが、色々な形があります。
そして半球体です。
何ともいえない美しい照りがあり、お探しのコレクターの方も多いです。

3)シードパール(芥子真珠)
アンティークジュエリーで見られる極小の真珠のことです。
アンティークジュエリーでは時には1ミリにも満たないようなシードパールをネックレスなどに用いていました。

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もちろんアンティークジュエリーで使われているシードパールは全て天然真珠になります。
かつて天然真珠は、剥いた貝の身を桶に集めて炎天下に置き、腐敗してどろどろになった頃を見計らって海水で洗い流し、溜まった真珠を取るといったやり方で採集されていました。
そのため大粒の真珠はもとより、小粒のものも確実に集めることができたのです。
そのようにして採取されたシードパールがヨーロッパに渡り、細工を施されてさまざまなシードパールジュエリーが作られました。
シードパールジュエリーは、19世紀のヨーロッパで黄金期を迎えます。
ケシ真珠に穴を明けて細い糸を通し(真珠が小さいだけにきわめて難易度の高い作業です)、マザーオブパールの台座に縫いつけてネックレスにされたり、ゴールドの線を通してペンダントやブローチにされたりしました。
1つのネックレスを作るのに、時には1000粒以上のシードパールが使われれたこともあります。
真珠の価値としましては昔の天然真珠であってもこれほど小さな真珠は単体では、それほど大きな価値は持ちません。
しかしたくさんの芥子真珠をあしらったものはやはりとても希少で、また真珠の数が増えれば増えるほど膨大な手作業を要します。
その作品に対して高い価値が認められています。

4)淡水真珠
淡水パールチョーカーネックレス

アンティークジュエリーでも淡水パールを使ったジュエリー(主に1920年代以降のコスチュームジュエリー)は時々見られます。
淡水真珠とは海で採れる真珠ではなく、湖や川で採れる真珠のことです。
天然真珠は人工的ではなく自然に異物が貝に入り込み、そこから時間をかけて真珠層が形成されるため石のほとんどすべてが真珠層でできているのですが、淡水真珠も100パーセント真珠層で作られています。
価格的には海の天然真珠にかないませんが、それでも昔の淡水真珠は真珠層が厚く光沢もよく、現代の淡水真珠と比べ物にならないほど美しいです。
時に海の天然真珠と見分けが困難なほどですが、淡水真珠のほうがフラットな輝きであることが多く、隣において見比べますと分かりやすいです。
コスチュームの淡水真珠のアンティークジュエリーは価値的には真珠そのものにあるというより、その時代を反映したデザインや細工の面白さなどが魅力です。

5)マザーオブパール。
日本語では真珠母貝で、その名の通り真珠を産み出す貝のことです。
現在真珠の母貝として使用されているものは、白蝶貝・黒蝶貝・茶蝶貝・あこや貝・淡水真珠貝・コンク貝等。
マザーオブパールという名前そのものは、複数の貝を指しますが、アンティークジュエリーで出てくるのはほとんどが白蝶貝のマザーオブパールです。
フランスでも古くから重用されて、扇の骨部分やオペラグラス、ジュエリーケースなどに用いられてきました。

マザーオブパールレース製扇
しかしジュエリーに用いられたのはほんの少しです。
http://antique-jewelry.jp/jewelry/ring/ring-j01035.html

6)南洋真珠
オフホワイトやクリーム色以外のブラックパールなどの色の付いた真珠は、1845年頃から出始めます。
この南洋真珠をスターダムに押し上げたのがフランス皇帝ナポレオン3世の妻ウジェニー・ド・モンティジョ(Eugenie de Montijo)です。
特に美しい黒色の南洋真珠は、クロチョウガイ(黒蝶真珠)と呼ばれます。

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クロチョウガイはアコヤガイ、シロチョウガイと同じウグイスガイ科の二枚貝で、赤道を中心とする南北約30度以内の暖かい地域に生息します。
生息最適水温は24-29度ぐらいで、18度では成長がとまり、11-12度になると死んでしまうデリケートな真珠です。
クロチョウガイには多くの変種があり、その仲間はペルシャ湾、西インド洋、沖縄、ミクロネシア、ポリネシア、カリフォルニア湾へ分布しています。
フランスのアンティークジュエリーで度々目にするのが、フランス領ポリネシア地域のクロチョウガイです。
タヒチを中心にするエリアでもあることからよく「タヒチ真珠」とか「南洋真珠」とも呼ばれることがあります。
現在ではタヒチのクロチョウガイも養殖が多くなっており、他の真珠を染色処理し、黒真珠と呼んでいるものもありますので、注意が必要です。
色真珠の養殖は白色の真珠の養殖よりも更に後年になり、アンティークジュエリーで見られる南洋真珠は取り替えられていない限り天然真珠が使われています。
「ブラックパール」と言っても、黒、緑、グレーを帯びたものなどニュアンスはさまざまです。

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