フランスアールヌーヴォーらしい宿り木のモチーフ
日本でもとても人気のある、フランスアールヌーボーの特徴が出ています。
モチーフはアールヌーヴォー期に愛された宿り木(ヤドリギ)。
一見左右対称に見えるのに、実はアンシメトリーな美しいシルエットの作品です。
フランスの芸術は本来は、非常に規則的で左右対称(シンメトリー)です。
それが大きく変化したの唯一アールヌーボーの時代で、その影響の源は日本です。
当時フランス人は、日本の不完全にも見える(しかし完璧な)空間(間)の作り方に衝撃を受けたそうです。
フランス的で洗練された中にも、和に通じる世界観を垣間見れる。
ヌーボーの巧みな曲線と交じりながら、美しい造形を魅せてくれる作品です。
良質なアールヌーボーのジュエリーが日本人の琴線に触れるのは、必然です。
純白の天然真珠と迫力あるダイヤモンド
宝石も上等なものが使われています、天然真珠とダイヤモンド。
透き通るように白く、透明感のある天然真珠が3石。
上部の2粒の真珠は正面から見ると真円に見えますが、横から見るとわずかに扁平で、左右も完全な対称になっていないことが分かります。
横から見るとダイヤモンドは台座に深く埋め込まれていて、真珠は対照的に凸状になっているのが分かります。
ダイヤモンドは合計22石。
透明度の高いローズカットダイヤモンドです。
台座にこれだけ深く埋め込まれていながら、随所でダイヤモンドがキらリキラリと煌きます。
ローズカットは光らないと思ってらっしゃる方も多いですが、良い石は光ります。
幹となる台座は、太くなったり細くなったり自在に太さを変えています。
そして、各場所の「幅」に合ったダイヤモンドが絶妙に配されています。
これは常々思っていることですが、アンティークジュエリーはラインの強弱が綺麗なものが多いです。
幹の先端には粒金細工が、円形に配されたダイヤモンドの台座にはミルグレインが施されています。
非常に凝っていながら、どこか「空間の間」を感じさせる、すっきりとしたデザインも魅力です。
ブローチであるのと同時に、裏面をよく見ますと小さくフックをかけられる場所が左右それぞれにあり、ここにチェーンの丸かんを通してペンダントとして使えるようになっています。
1900年前後のフランス製。
地金は18金ゴールド。
注:チェーンはついていません。
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知られざるアールヌーボーの本質
しなやかな曲線と自然への感性。
日本でも人気の高いアールヌーヴォー様式ですが、その「本質」は意外に知られていません。
アールヌーヴォーは19世紀末(1900年前後)、あらゆる芸術領域を席捲した装飾様式です。
ジュエリーの世界でアールヌーボーは、「貴石をシンメトリーにセッティングした従来のジュエリー作り」から「宝石的価値ではなく色によって選別した石を、美しく彫金されたゴールドにニュアンスカラーのエナメルと共にセットしたジュエリー」への脱皮をもたしました。
アールヌーボーと言うと柔らかな曲線から「ロマンチックな自然主義」と言うイメージが強いことでしょう。
しかしその根底には世紀末ならではの「デカダンス」があります。
溢れんばかりに花をつけた枝や、豊かに広がりうねる長い髪といったアールヌーボーの典型的な図柄の裏には、「自然の残酷さや死」が念頭にありました。
アールヌーボーのジュエラーとパリ万博(1900)
ジュエリー界でもっとも早く「アールヌーボー」の言葉を使い出したのは、ルネ・ラリック(Rene Lalique)。
下記は1902年にイギリスで発行された「Magazine of Art」に掲載されたルネラリックのジュエリーデッサンです。
女性の顔と睡蓮が描かれたペンダントのデッサンですが、この頃はまだルネラリックはロンドンでは広くは知られていませんでした。
1900年のパリ万博では、ルネ・ラリック、メゾン・ヴェヴェール(Maison Vever/ヴェヴェール工房)、ルシアン・ガリヤール(Lucien Gaillard)の3人がジュエリー部門でグランプリを獲得します。
下記は1900年頃に製作された、ルシアン・ガリヤールの青い鳥の髪飾り。
鼈甲とプリカジュールエナメル、目の部分にダイヤモンドが入れられています。
アールヌーボーは東洋の美意識、特に日本の芸術に強い影響を受けましたが、この作品は私たち日本人が見ても、日本的な美しさを感じる作品ですね。
この万博では、ジョルジュ・フーケ(Georges Fouquet)とウジェーヌ・フィアートル(Eugene Feuillatre)が金賞を受賞しました。
ジョルジュ・フーケは1898年にランの花をモチーフにしたジュエリーでアールヌーボーの作品を初めて手がけます。
そしてポスターアーティストのアルフォンス・ミュシャと一緒に、いくつものプレートをチェーンでつなげたジュエリーを発表します。
下記は1900年にアルフォンス・ミュシャがデザインした、宝石商ジョルジュ・フーケの店舗です。
ステンドグラスやモザイクタイルの装飾等、ミュシャがポスターの中で描いたアールヌーボーのテーマや曲線が再現されています。
今日、このインテリアショップの内装は、パリのカーナヴァル美術館で見ることが出来ます。
また同年代のジュエラーの中でルネラリックと並び賞賛を浴びていたのが、ベルギーのジュエラーであるフィリップ・ウォルファー(Philippe Wolfers)です。
アールヌーボージュエリーに関して更に詳しい情報は、アールヌーボー(アールヌーヴォー)のアンティークジュエリーの特徴と魅力をご参照ください。
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