大粒のアメジストをたっぷり使った贅沢なピアス
1820-30年頃、王政復古時代のフランス製。
当時の良質な美しいアメジストを使った贅沢なアメシストピアスです。
大きい方のアメジストは1.2ミリx1.5センチもあります。
合計4つのアメシストにはどれも美しいファセットがつけられています。
アメジストの品質は実にピンきりです。
現在ではアメシストはあまり高価なイメージがないかもしれませんが(現在のアメジストの大半は色を人工的に調整してしまっている宝石としてはほぼ無価値のものが多いので当然です)、天然無加工の品質の良い昔のアメジストはとても高い価値を持つ宝石の一つ。
このピススに使われているように濃すぎない薄すぎず、深い紫色が一様に見えるアメジストは最高のものです。
王政復古時代の華麗な宮廷装飾
全体はポンポンと呼ばれる合金でできています。
ポンポンとは金を含む合金で、金の比率が3分の1前後。
19世紀のフランスのアンティークジュエリーに見られる独特の技法です。
このポンポンに施された彫金細工が典型的な宮廷装飾です。
このピアスが作られた王政復古時代には、18世紀のブルボン王朝が一時的に復活し、優雅なロワイヤルスタイルのジュエリーが再び作られます。
アメジストが15-17つの小さな爪で留められているのですが、その形が様式化された葉の形になっていてとても優雅です。
その外周はやはりお花を様式化したような彫金で、アメジストをぐるっと囲んでいます。
この部分は裏から見ると分かりやすいですが、レポゼと言って裏からゴールドをレリーフ状に打ち出して作っているのです。
こうしたオーセンティックな宮廷装飾様式のアンティークジュエリーは、アンティークジュエリーの中でもとても数が少なく貴重です(作られた時代が本当に限られているので当然です)。
針部分は銀。
お揃いのブレスレットもあるのでぜひあわせてご覧ください。
小さな写真をクリックすると大きな写真が切り替わります。
アメジストの歴史
現代ではアメジストはそこまで高価な宝石といったイメージがないかもしれませんが、かつてアメジストは19世紀末に、南米(ブラジル)でアメジストの鉱山が見つかるまでは、非常に希少な宝石でした。
ダイヤモンドやルビーといった貴石と同じ金銭価値で探されていた宝石でした。
その宝石としての歴史は古代エジプトにまで遡ります。
アメジストの語源も、ギリシャ神話の月の女神「ダイアナ」の女官「アメジスト」に由来し、そのいわれは下記のとおり。
ぶどう酒と酩酊の神「バッカス」は、お酒の上でのいたずらが過ぎて、全能の神ゼウスにひどく叱られてしまいます。
むしゃくしゃの収まらないバッカスは、偶然通りかかった美少女「アメジスト」を虎に襲わせようとします。
それをみた「ダイアナ」が「アメジスト」を石に変えて救ったという神話があります。
そのため古代ギリシャ人は、アメジストを着けていると酔っぱらわないと信じていました。
ヨーロッパでは冷静さを保つ力があると信じられています。
古くはレオナルド・ダヴィンチはアメジストが悪い考えを散らして、そして知性を刺激することが可能であったと書いています。
その紫色のためロイヤルファミリーに愛された宝石で、アメジストを愛した人物には古くはクレオパトラ、エカチェリーナ2世がいます。
下記はかつてエカチェリーナ2世が所蔵していたアメジストのイヤリングです。
ロシアとアメジスト
アンティークアメジストと言えばロシア、ロシア皇族を抜きに語れません。
かつて最上級のアメジストはロシアのシベリアで採れました。
アンティーク市場でも古い時代のロシア産のアメジストなどは、アンティークジュエリーにおいて驚くほど高価に取引がされています。
ロシアンアメジストの中でも特に濃い色のアメジストは「サイベリアン・アメジスト(シベリア産)」と呼ばれることがあります。
サイベンアメジストの色の特徴は、色の濃さそして石の中に赤色の閃光が見えることです。
下記はサイベリアンアメジストとデマントイドガーネットのネックレス。
1908-1917年の間にモスクワで製作されたとされています。
下記は当店で販売済みのリングですが、やはりロシア製と思われます。
印象的な大粒の濃い紫色のアメジストがカボションカットにされています。
ちなみにロシアンアメジストが必ずしも濃い色なわけではありません。
ラベンダーのような色合いの薄いアメジストも存在します。
下記は19世紀後期、ロシア製作のアメジストとダイヤモンドのブローチ。
淡いロシア産ライラックカラーのアメジストが使われています。
特にロシア女帝キャサリン大女王(Catherine the Great of Russia 1729-1796年)のアメジストに対する情熱は有名です。
ウラル山脈の奥地まで数千人の炭鉱を派遣しました。
またロシアの鬼才ファベルジェは、アメジストをメイン石に据えたロイヤルジュエリーをいくつも手がけています。
アメジストとロイヤルファミリー
アメジストは多くのロシアのロイヤルファミリーに愛されたほか、英ロイヤルファミリーにも愛され、アメジストはロイヤルクラウンにも度々登場します。
下記は1947、カルティエ パリ製作のドラップリーネックレス。
ハート型のアメジストが印象的なこちらのネックレスは、ウィンザー公爵(エドワード8世)がカルティエにオーダーした作品です。
ゴールド、プラチナ、ブリリアンカット、バゲットカットダイヤモンド、カボションカット・トルコ石。
N.Welsh, Collection Cartier (c) Cartier
アメジストの色を決める要因
アメジストの紫色の発色原因は、微量に含有された「鉄イオン」によります。
色は淡いライラック色から濃紫色まで幅広いです。
色帯構造やムラのあるアメジストも多いですが、色が深く一様に見られるアメジストほど良質とされています。
一方で色の淡いアメジストも天然無加工で綺麗な色の石は、やはりとても評価がが高いです。
アメジストの結晶は、火山岩や堆積岩の低温熱水鉱脈から産出されます。
六方晶系に属した六角錐の集まりで発掘されますが、大きな結晶で発見されるのはごく稀ですので、天然の昔のアメジストで大粒のものはそれだけ貴重といえます。
アンティークアメジストの色
アンティークのアメジストは(現代のアメジストと比べて)濃い色をしているか、淡い色をしているかどちらかのことが多い」と言われています。
標準的なアメジストの色は逆に少ないです。
下記は1900年ころのイギリス製のアメジストリングですが、かなり濃い紫色をしています。
下記のペンダントは淡い、ライラック色に近い紫色です。
これはなぜかといいますとアメジストの紫色の要因は、微量に含有された鉄イオンによるものなのですが、この紫色は加熱処理することによって色を調整することが可能だからです。
現代では、色の調整がされたアメジストが非常に多いです。
低品質なアメジストに熱処理や放射線処理を施して、色を変える事が日常的に行われています。
アンティークジュエリーで見られる天然無加工のアメジストと現代の人口処理が施されたアメジストは、まるで別の宝石のように異なる価値になってしまいました。
「非加熱の天然宝石」と言ったことに関しては、ルビーなどに関しては意識される方も多いと思いますが、アメジストではあまり意識していない方も多いのではないでしょうか。
本来の天然無加工のアメジストを手に入れたいのであれば、やはりアンティークジュエリーででお探しになることをお薦めしたい宝石の一つです。
またアメジストは2月の誕生石ですが、これは聖人ウァレンティヌス(が常にアメジストを着用していたと言ういわれに由来しています。
カメオやインタリオなど彫り物とアメジスト
アメジストの硬度は7。
硬すぎず柔らかすぎず、ガーネットと並んでアンティークジュエリーでカメオやインタリオをはじめとする彫り物に重用されてきた宝石です。
下記はカーブドアメジストのペンダント。
パンジーの花の形にアメジストが彫られています。
下記はかのカステラーニによる、アメジストのカメオです。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。