全長3.5センチのドロップ型イヤリング(ピアス)
シャープな縦ラインが印象的な、ドロップタイプのアンティークピアスです。
手にするとずしりとした心地よい重みがある高級感のある作りで、実際に一般的なアンティークピアスの2倍ほどの重量があります。
トップのルビーから下部のダイヤモンドへと、ラインが膨らんでいきます。
ルビーとダイヤモンドはそれぞれ円状にセットされ、ドロップラインはトライアングル。
アールデコならではの幾何学的デザインです。
こうしたアールデコの直線的なデザインはシンプルなようでいて、ラインの長さ一つ変わるだけで、このようなスリリングな美しさは見られなくなってしまいます。
ダイヤモンドの大きさ、トライアングルの角度や長さ・・・・絶妙な長さ&バランスの上に成り立った美しさがあります。
いかにもフランスのアールデコといった、センスの良いピアスです。
宝石、デザイン、技術、ジュエリーにかかわる全ての領域でのクオリティーの高さ
先端のダイヤモンド部分の細工が精巧です。
この部分は1石のダイヤモンドを8石のダイヤモンドが囲んでいます。
お花のようにも見えますが外周は完全な円形で、ドーム状に盛り上がったそのシルエットはむしろ「宇宙」を表現しているように見えます。
ダイヤモンドはいずれもローズカット。
いずれのダイヤモンドも球体の台座にピッタリと埋め込まれるようにセットされ、その間と間には埋め尽くすように彫金が施されており、遠くからはそのすべてが「星」のように煌いて見えます。
アールデコ期には中心に向かってふくらみを帯びたボンブリングが指輪では作られたのですが、同じスピリットです。
ダイヤモンドも小粒ながらいずれも透明感があり、ルビーもピンクを帯びた明るい赤色で良い色です。
宝石、デザイン、技術のいずれにおいてもクオリティーの高さが伝わってきます。
1920年頃のフランス製。
18金ゴールド。
フランスの18金の刻印あり(6番目のお写真をご参照ください)。
動画も撮影しています。
アールデコダイヤモンドピアス(ドロップ型イヤリング、ルビー、1920年代)
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1930年、著名なデザイナーであったポール・イリブ(Paul Iribe)はアールデコのジュエリーについて以下のように述べています。
「キュービズムとマシンデザインのために、花を犠牲にしている」。
アールデコ期にも以前として花や葉っぱなどの自然主義のモチーフのジュエリーも存続しつづけますが、「抽象的なジェオメトリックなデザインの台頭」なしにこの時代の動きは語れません。
下記は1927年、Lacloche Freres(当時美しいアールデコのジュエリーを多く生み出したスペインのメゾン) によるサイプレスの枝を描いたピンです。
同じく葉や枝をモチーフにしたジュエリーでも、19世紀のものとは一線を画したジュエリーであることが一目瞭然です。
アールデコを生み出した社会要因
ではなぜそのようなラディカルな変化がデザインの世界に起きたのでしょう?
パリで「アールデコ」という新しい芸術が発祥した理由は、まずなんと言っても第一次世界大戦によって古い価値観が崩れ、女性の社会進出をはじめとした社会革新が起きたことです。
社交界で豪華なジュエリーを付けるのは前世紀から変わりませんが、当時の富裕な女性たちは、デザインの面で大きく変化したジュエリーを好むようになります。
化粧をしたりタバコもすったモダンな富裕な女性たちのライフスタイルの変化が、ジュエリーのデザインにも変化をもたらします。
彼女たちの求めた洋服やジュエリーは、第一次大戦前までの貴族社会の中で続いてきたものとは全く違うクリエイションによってもたらされています。
ドレスデザイナーたちは第一次世界大戦後のこの時代によりシンプルなラインのドレスを作り始めました。
下記は当時活躍したファッションイラストレーターGeorges Lepapeのデッサンです。
当時の女性のイメージが掴めるでしょうか?
加えて時の経済・金融事情も新しい装飾芸術を後押しした要因のひとつでした。
1914年以前のフランスは安定した金利に支えられた安定経済だったのに対し、20年代は毎日のようにフランの価値が下がっていく激動の時代でした。
超インフレが起こり、毎日のように通貨の価値が落ちて生きます。
1919年時に5.45フランだったアメリカドルは、1926年7月にはなんと50フランに!
このような状況のもと、人々は自分の財産を換金性の高いものへ、つまり絵画・宝石・芸術品に投資していきます。
こうしてアールヌーヴォーが陰りを見せはじめた1900年ころから冷え込んでいた宝飾業界に再びお金が流れ、活気が戻り始めるのです。
アールデコジュエリーに関して更に詳しい情報は、アールデコジュエリー その特徴と魅力をご参考ください。
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