完璧なアールデコジュエリー
1920年代のイギリス製。
イギリスでもこの時代、数こそ少ないですが、素晴らしいアールデコジュエリーが製作されました。
肉眼でもその細工の細かさと緻密さに、すぐに目が行くはず。
プラチナと思うような細いラインですが、すべて18Kホワイトゴールドで作られています。
ミルグレインがとても細かいのです。
リボンというふっくらとしたなだらかな曲線の上にミルを打つといういうのは、平面に打つよりその難易度はさらに高いです。
カリブレカットサファイアと78粒のダイヤモンド
次に目を引くのが、鮮やかなブルーサファイア。
深みのある青なのに澄んだ、素晴らしい宝石が豊かに手に入った20世紀初頭ならではの良質なサファイアです。
カリブレカット(作り上げたいデザインに応じて、長方形、正方形、台形など自由自在に形を決めていくカッティング技術)はまさにアールデコの時代に、特にブルーサファイアにおいて好まれた技法です。
そしてホワイトゴールドのリボンに、空間を埋め尽くすようにセットされているダイヤモンド。
その数、何と78個。
これも、やはり豊かな宝石に恵まれた20世紀初頭ならではの贅沢。
その魅力があますことなく伝えられているのは、当時の宝飾技術もやはりまたその絶頂にあったからです。
間と間を空けずに埋めこんで宝石をセットするのは、アールデコ時代の宝飾品の一つの特徴。
アールデコの王道を行く、アンティークジュエリーにおいても滅多に見ることがない素晴らしい完成度のジュエリーです。
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カリブレカットとはフランス語でCalibre cut(カリブレカット)。
カリブレカットは20世紀に入ってから登場する石留めの技術で、特にアールデコ期のジュエリーにセットされた宝石に見られるカッティング技法です。
カリブレカットは石を留めるのに爪を使わずに、石の両側の縁をわずかに倒して留めます。
アールデコ期(1920年代)に同じ色の同じ形の連続する石を留める時に用いられた技法で、主にアクセントカラーとなる色石に用いられました。
希代のアールデコのジュエラーは、カリブレカットした宝石を用いた対照色が美しい作品を残しています。
下記はJ.E Coldwellのカリブレカットルビーとダイヤモンド、オニキスのブローチ。
下記は当店で販売済みのカリブレカットルビーに珍しくアクアマリンを合わせたリングで、補色の色の組み合わせが美しいです。
カリブレカットが施された代表的な宝石がブルーサファイアとルビーです。
しかしカルティエなどの一部のグランメゾンはエメラルドのカリブレカットで素晴らしい作品も残しています。
下記はジョルジュ・フーケのエメラルドとカリブレカットサファイヤ、ダイヤモンドのブレスレット(1925年作)。
下記は当店扱いのカリブレカットエメラルドのリング。
宝石を幾何学的な形にカットしスッキリとしたラインを強調することで、アールデコらしいシャープなラインが生まれます。
カリブレカットのメリットは何とっても石と石の間に爪が見えないこと。
小さな石を連続してラインを作る時、宝石がすっきりとして見えるのが魅力です。
その端正なラインは、非常に高い宝飾技術によって支えられています。
シャープでモダンなアールデコのアンティークジュエリーは世界的にとても人気がありますが、カリブレカットが施された宝石が配されたものはとりわけ探されています。
アールデコ期に作られたカリブレカットのジュエリーは指輪がもっとも多いですが、下記のようなネックレスやブローチなどでも見られます。
ちなみにこちらのネックレスのカリブレカットルビーは合成(シンセティック)です。
カリブレカットの色石は多くの色石を要するのと、特にルビーのパーティングと言う特性により、一流のジュエリーにも時々シンセティックルビーやシンセティックサファイヤが用いられたものがあります。
また天然宝石とシンセティックの混ざったものもありますので、そのジュエリーを販売している業者さんが全てきちんと調べているか確認することが大事です。
(ご納得された上でご購入されるのであれば、問題はありません。)
下記はブローチです。
1920年頃、カリブレカットした色石はブローチではこのようなバーブローチにされたケースが多いです。
またアールデコより少し後年の1940年代の高級時計にも時々、カリブレカットのサファイヤやルビーがセットされた宝飾時計が作られました。
カリブレカットした宝石を用いたジュエリーは実にデザインが優れたものが多いです。
長方形、正方形、台形など作り上げたいデザインに応じて、小さく面取りしてカットしてレール状の台座にはめ込んでいく、まるで「宝石のパズルのような技法」ですから、当然ともいえます。
カリブレカットによって、アールデコのジュエラーは思い描いたデザインをより自由に大胆に表現することが出来たのです。
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