アールヌーボーのジュエリーで、指輪とピアスは特に希少です
「ザ・アールヌーボー」と言うべき、アールヌーボーの王道を行く薔薇をモチーフにした金細工のピアスです。
業界の常識として「アールヌーボーのジュエリーはネックレスやブローチで多い」というのがあります。
ピアス、特に指輪は実はとても少ないです。
花弁や葉、すべてが金細工で表現されています。
アールヌーボーのジュエリーは金細工で魅せるものが多いですが、それはまさに高い技術があってこそ叶うことです。
金という基本的には硬い素材で、みずみずしい植物の一瞬を捉えていることに驚かされます。
大小2つの薔薇
左右各2つの薔薇が描かれています。
上の小さな薔薇は固定され、下部の大きな薔薇が揺れる作りです。
花部分は花びらの重なり合う様子や、花びらが端の方で折れた部分までが、みずみずしく描かれています。
葉は葉脈まで彫金で描かれています。
花は中心部に向かって盛り上がっていて、この盛り上がったドーム状の形状は「レポゼ」と呼ばれる金細工が用いられています。
レポゼは打ち出しですので、見かけより軽量です。
また全体的にゴールドが用いられいるのに落ち着いた風合いがあるのは、ひだになった所以外ピアスの大半に艶消しが施されているからです。
金細工の長けたジュエリーこそ、アンティークジュエリーの醍醐味です。
1890年頃のフランス製。
18カラットゴールド。
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アンティークジュエリーの大きな醍醐味の一つはやはりその手の込んだ繊細な金細工の数々でしょう。
あまりに緻密な細工であるため、時として肉眼では見切れないほどの細かさです。
肉眼で見切れないほどの金細工を当時、どのようにして職人さんは製作していたのでしょう?
それは手の感覚だったと言います。
熟練した職人さんは最後は手の感覚で、金細工を仕上げていったと言います。
さて金細工といっても色々な種類がありますが、アンティークジュエリーに見られる細工を大まかにご紹介します。
まずは
1)フィリグリー(金や銀を糸のように細くして縒って模様をつくる金細工)
2)レポゼ(打ち出しの技法、金を表面から装飾するのではなく、裏面から打ち出すことで模様を作っていく方法)
3)カンティーユ技法(細い金線を蝋付けしく技法、線条細工)、グラニュレーション(粒金細工)があります。
今回は「カンティーユ」と「レポゼ」について、詳しくご説明します。
カンティーユ技法
カンティーユ(Cannetille)とは「金の刺繍」と言う意味で、細かい金の粒で装飾する技法のことです。
小さな金の粒を、一粒ごと熱をかけて留めてゆく、アンティークジュエリーで使われた金細工の中でも特に繊細な技法です。
金という素材が今以上に希少であった時代に少ない金で見栄えのある作品を作るために使われた手法です。
フランスでは19世紀初頭の王政復古の時代のジュエリー、イギリスでも同時期のジョージアンの時代に見ることが多い技法です。
下記は当店で販売済みのフランス王政復古の時代のカンティーユのブレスレットです。
下記は一般的にカンティーユ技法のジュエリーが作られた19世紀初頭よりかなり後年の作品になりますが、やはりカンティーユ技法が用いられたペンダントです。
美しく特徴的な金細工ですのでとても探されていますが、カンティーユ技法の用いられたアンティークジュエリーはフィリグリー細工以上に数が少ないです。
レポゼ
レポゼとは金細工の一種で、「打出し技法」、レリーフ状に打ち出す鍛金技術のことです。
古典的な打ち出しの技法で、もっとも古い金属加工法のひとつと言われています。
元々は古代メソポタミア文明の宝飾品にその歴史は遡ります。
下記は当店で販売済みのアールヌーボーのゴールドネックレスで、隆起した薔薇のモチーフはレポゼ技法によって表現されています。
後にレポゼを復活させて有名になったのが、あのカステラーニ一族です。
まずへこみ台にあて、地金裏面を叩き出します。
それから表面もヤニ台に当て、鏨で細工することで、まるで鋳型を取って裏抜きしたような肉盛りされたようなボリュームが出ます。
立体的にすることでボリュームがあるように見えるので、金が現在以上に貴重であった昔に使われた技法です。
下記は様々な金細工技術が駆使されたカステラーニのペンダントです。
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