ジャルディネッティ、ダイヤモンドの小さな庭
イギリスやフランスを訪れますと、歴史ある建物以上にその美しい庭園に目を奪われます。
庭園がヨーロッパで流行し始めたのは18世紀後半から19世紀初期にかけてです。
この時代に庭園でお茶を飲んだりしながら珍しい植物を鑑賞することが、ブームになりました。
この様子は映画「マリーアントワネット」でも描かれていますね。
そしてジャルデネッティ(庭園)と呼ばれるリングやペンダント、ブローチが作られます。
イタリア語で「リトルガーデン」を意味するジャルディネッティ。
お花をモチーフにしたジュエリーでは通常、花部分だけがフォーカスされがちですが、ジャルディネッティのジュエリーでは庭全体を眺めるように花全体、あるいはブーケが描かれます。
カラーストーンを取り入れて色とりどりの花が描かれることもあれば、このブローチのようにダイヤモンドだけで一色でまとめられたものもあります。
このブローチでは、マーガレット(忠実な愛)が描かれています。
左右対称、ロココ文化らしい上品で王道を行くデザイン
全体は銀でできており、長い年月も経て落ちついた色合いです。
すべての花と葉の真ん中にはダイヤモンドが深く埋め込まれており、ダイヤモンドはこの時代ならではの浅いカッティングのローズカット。
マーガレットの花は、どこを見てもやわらかな曲線を描き、自然で美しい造形を形作っています。
ルーペで見ると分かりやすいですが、葉脈を銀のスリットでやわらかく描き、一枚の葉の中にも少し高低差がついています。
葉と葉の間や花びらの間の細かな部分をオープンワークにしているところも面白いです。
職人の手作業でシルバーをくり抜いて作ったパーツを、数箇所でそれらを溶接しています。
流れるような自然なラインでありながら、全体は左右対称で整然としたシルエット。
この時代の宮廷文化を思わせる、王道をいくデザインです。
19世紀にぎりぎり入ったころ、1800-1820年頃のフランス製。
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アンティークジュエリーの魅惑的なジュエリーデザインに「ジャルディネッティ(Giardinetti)」があります。
ジャルディネッティとはイタリア語で、「小さい庭(リトルガーデン)」を意味します。
18世紀後半はフランスを中心にヨーロッパでは「花」がありとあらゆる芸術領域で流行します。
流行はジュエリーに限らず、洋服や香水、庭園、陶磁器といった様々な芸術分野に及びました。
時にアンシメトリーにデザインされた「庭園と花々」はロココ文化の中で花開き、ジュエリーの世界では大きな花束(フラワーブーケ)をデザインしたジュエリーが作られるようになります。
下記は1762年のフランスの「Traites des pierres precieuses(貴石について) 」に記載されていたジュエリーデッサンです。
大きなサイズのジュエリーが流行し大きなものは何と20センチにも及ぶことがありました。
かのマリーアントワネットもフランス革命も近づく1786年に、ワイルドローズとサンザシのブーケのジュエリーをオーダーしています。
そして各国の宮廷で流行したこれらの豪華絢爛な花束のジュエリーが、少しサイズダウンしたのがジャルディネッティ。
18世紀から19世紀初頭にジャルディネッティの指輪やペンダント、ブローチが作られました。
花籠やブーケといった小さな世界を、ダイヤモンドやルビーを使ってデザインします。
下記は当店で販売済みの18世紀のジェルディネッティのペンダント。
やはりダイヤモンドとルビーが用いらています。
花びらはルビー等の色石が好まれたほか、もっと淡い色を出したいときは、ダイヤモンドの裏に「フォイルバック」と言って色のついた金属の破片を入れることもありました。
ジャルディネッティのジュエリーには、ダイヤモンドだけのものや、数種の色石が使われているものの両方があります。
色石はゴールドで、ダイヤモンドは銀でセットされました。
下記は18世紀半ばに製作されたジャルディネッティの指輪です。
下記は当店扱いの大きなサイズのジャルディネッティのブローチです。
こちらはダイヤモンドだけが使われています。
まるで指元に胸元に花が咲いたような、楽しい気持ちにさせてくれる愛らしいアンティークジュエリーです。
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