18世紀アンティークジュエリーの特徴と魅力

市場に流通するアンティークジュエリーの多くは、19世紀後期以降のものです

アンティークジュエリーの中でも現在市場に流通するアンティークジュエリーの多くは、19世紀後期以降のものです。
18世紀のアンティークジュエリーというのは、イギリスのアンティークジュエリーでもフランスのアンティークジュエリーであってもきわめて流通量が少ないもの。
どれくらい少ないかというと、現地のアンティークショップに行っても、ほとんどのお店にも一点もないのが普通です。
実際、当ショップでも18世紀のジュエリーは両手で数えられるぐらいしか扱っていません。
出てくることは稀で、高いお金を払おうが払うまいが、滅多に見つけられないのが18世紀アンティークジュエリーなのです。
18世紀といえば1700-1799年。
フランスの18世紀ジュエリーはその大半がフランス革命(1789-1799)に入る前に作られていますから、まさに250年以上前に作られた歴史的遺産です。
ブルボン王家の最盛期から、フランス革命によって王政が滅びた激動のフランス18世紀。
歴史的に見てもとても面白い時代ですし、ご存知のとおり文化的に素晴らしく洗練されて成熟した文化が生まれて、そしてその多くがフランス革命によってフランス国外へ流出してしまいます。

バロック、ロココ様式とは

18世紀と言えば後期バロック、ロココ様式ですね。
バロック、ロココ様式はパステル調の色合いや、曲線を多用しているところが特徴的です。
この時代に作られた主たるジュエリーに、ボタンやバックル、ストマッカー、髪飾り、コサージュピン、ピアス、ネックレス等があります。

下記は1765年頃に描かれたといわれマリア・ルイサ妃の肖像画(画家はアントン・ラファエル・メングス)です。
ロココのプリンセスの衣装とジュエリーがとてもよく描かれています。
髪には5個の星型のダイヤモンド、耳には大きなジランドールイヤリング(ピアス)、黒いリボンをつけたボウ(リボン)・アンド・ドロップ型のペンダント。
胸には十字章をとめるためのリボン飾り、4連の真珠ブレスレット(ミニアチュールが真ん中に入っている)

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ロココ様式はジュエリーにだけ見られるのではなく、例えば下記のような装身具にも見られます。
この時代の扇は、扇の骨と骨の間に大きな隙間があいていると言う特徴があります。
カラフルな箔が印象的です。
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光の時代

装飾芸術のフランス語の文献ではよく18世紀は「Siecle des lumieres(光の時代)」と表現されます。
18世紀はライトとライトネス。
蝋燭(ろうそく)が普及して蝋燭の明かりの下で過ごす時間が増えたことが、ジュエリーに大きな変化をもたらします。
この時代にイギリスやフランスでカントリーハウスも増えたこともあいまり(映画「マリーアントワネット」でも描かれていますね)、昼用のジュエリーと夜用のジュエリーがはっきり分かれるようになります。
このようにして17世紀までのヨーロッパで主流であったエナメルを多用したジュエリーから、ダイヤモンドを中心にする宝石のジュエリーへと大きな変革が訪れます。

ロココ様式ではダイヤモンドのみならず彩り豊かなジュエリー、そして大きめの宝石をセットすることが好まれました。
18世紀にエメラルドやサファイヤ、ルビーなど色のついた宝石がそれ以前の時代に比べて多くジュエリーのセットされるようになります。
18世紀のエメラルドリング(当店にて販売済み)
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宝石以外では、良質な無色の鉛ガラスや色つきのガラスペーストが当時の貴族たちに好まれ、ガラスとは思えないほど美しくセットされたジュエリーが見られます。
こうしたジュエリーはガラスとは言え、非常に高額に取引されていますし気高く美しいジュエリーです。

緑ガラスペーストの結婚指輪
こうした本物の18世紀のジュエリーは、数十年前ならともかく現在パリのアンティークショップを回っても見かけることがほとんどありません。
当店でもこれまで仕入れることのできた18世紀のジュエリーは大抵、懇意にしているディーラーの個人コレクションを売ってもらったものです。
今後、この時代のこうしたジュエリーはますます希少にご紹介しずらくなっていきそうです。

マリーアントワネット(Marie Antoinette)

18世紀と言えばマリー・アントワネットを思い浮かべる方も多いことでしょう。
この時代のフランスではルイ16世紀の妃であるマリーアントワネットというファッションリーダの下で、多くの秀でた宝飾品が作られます。
マリーアントワネットは、一見さりげなく上品にまとまっているけれど、実は大変高価な類のジュエリーを好んだと言われています。
1788年にお抱えの宝石職人バプスト(Bapst)にワイルドローズと山査子(サンザシ)のブーケをダイヤモンドで作らせています。

またマリーアントワネット(1755-1793)のダイヤモンド事件というものもあります。
18世紀、ダイヤは今よりずっとずっと高価なものでした(1720-50年頃で全世界でまだ30万カラットの産出量しかありませでした。ちなみに現在は、1億2000万カラットほど。)
そんな時代、マリーアントワネットの名前を利用したダイヤモンドの詐欺事件が起こりました。
詐欺師たちが、「160万リーブルもするネックレスをマリーアントワネットが所望している!」と、時の枢機卿に買わせ(お金)を払わせようとしたのです。

デザイン画を見る限り、非常に派手なネックレスです。
首周りに17粒の大きなブリリアントカットダイヤモンド、そこから3本の花綱と4つのペンダントが下がっています。
外側は長い2重のネックレスになり、ダイヤモンドのタッセル(房飾り)がついています。

マリーアントワネットネックレス

この事件、マリーアントワネット本人はそんなことが起きているとは知らず、犯人も結局逮捕されたのですが。
飢餓にあえぐフランス国民は、「こんなに自分たちが苦しんでいるのにヴェルサイユではそんな贅沢が行われているのか?」と怒り、フランス革命を加速化させたという説があります。

実際にマリーアントワネットが所有していたダイヤモンドのネックレスは下記で、30石のブリリアントカットダイヤモンドのリヴィエールの周りに、ぺシェイプダイヤモンドのペン段を間隔をあけて配置したデザイン。
デザインとして派手ではないですが、合計43石のダイヤモンドは総計で180カラットもありました。。
マリーアントワネットネックレス

18世紀=ローズカットダイヤモンド?

ダイヤモンドに関しては、世界の大きな鉱山の発見は19世紀後期以降ですから18世紀はまだまだ絶対量がとても少なく、制限の多かった時代です。
18世紀アンティークジュエリーのダイヤモンドは、ローズカットにされることが多いです。
ここで少しローズカットダイヤモンドについてお話をしたいと思います。
ローズカットダイヤモンドとは、ダイヤモンドの底部が平らで上部を山形にカットしたカッティングのことを言います。
表面に細かなファセットが入っていて、ダイヤモンドの上部にテーブル(平らな面)がなく、バラのつぼみが開いたように見えます。
下記のような形をしています。

皆様驚かれるかもしれませんが、一言で「アンティークダイヤモンドのローズカット」と言っても、実はローズカットも何種類かありそれぞれ異なります。
例えば下記は「ダッチローズカット」と呼ばれるものです。
こちらのダッチローズカットはよくローズカットの見本のように示されていますが、実際のアンティークジュエリーではもっとファセット面が少なく簡略化されたローズカットも多く見られます。

ダッチローズカット
dutchrosecut.jpg(3468 byte)ローズカットダイヤモンド指輪


シンプルローズカット
シンプルローズカットシンプルローズカット

他にも底がちょっと厚みがあるものとか、上部がドーム状にふくらんでいるもの等々、ローズカットも色々違いがあります。

ローズカットは主に17世紀半ばから19世紀半ばにかけてジュエリーに用いられます。
17世紀半ば以前はダイヤモンドはテーブルカットや原石に近いダイヤモンドが用いられており、1850年以降はオールドヨーロピアンカット(ブリリアンカットの一種)が登場します。
しかしながらその後も特に脇石などの小さめのダイヤモンドにはローズカットが施されることも多く、「ローズカット」と言うカッティングだけからそのジュエリー(あるいはダイヤモンド)の年代を特定することは難しいです。
18世紀のダイヤモンドジュエリーにはローズカットを用いたものが主ですが、ローズカットダイヤモンドが使われているから18-19世紀のジュエリーとは限りません。
極端なことを言えばローズカットそのものは現代でもカッティングは可能です。

下記↓は面白いケースです。

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19世紀の半ばに作られた南仏のジュエリーですが、ステップカットのダイヤモンドが使われています。
これはどういうことかというと、ダイヤモンドの絶対数も少なかった当時、もっと古い年代のダイヤモンドジュエリーから石を外して使っているからなのです。
アンティークジュエリーの年代がダイヤモンドのカッティングからだけでは推定できないという好例です。

もちろんダイヤモンドのカッティングは年代を特定する大事な要素の一つには違いありません。
18世紀のローズカットと19世紀のローズカットには違いも見られます。
一般的に18世紀のローズカットのカッティングは19世紀のそれよりずっと平坦で、またダイヤモンドももっと中に黒い内包物の見られるものが多いです。
この時代のダイヤモンドは黒い内包物が見られることが多いですがその絶対的な迫力と力強さ、そしてダイヤモンドジュエリーでさえも派手さがない抑えた美しさが魅力的です。

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18世紀=必ず銀のセッティング?

18世紀のダイヤモンドジュエリーではダイヤモンドの周りは銀が用いられていることが一般的です。
しかしながらゴールドで直接セッティングされている例外もあります。代表的なものが下記のようなダイヤモンドのクロスです。
この手のアンティーク十字架は、17世紀のものですらダイヤモンドが直接イエローゴールドにセットされているものがあります。
 アンティークダイヤモンド十字架(18世紀)

また「18世紀のジュエリー=地金はすべて銀」と思われている方が多いのですが、フランスジュエリーにおいてはそれは異なります。
フランスは、18世紀からジュエリーでゴールドが使われています。
しかも既に18Kゴールドが実用されています。

しかしここで注意していただきたいのは、存在していたのはイエローゴールドのみという点です。
18世紀はホワイトゴールドもプラチナも存在しませんでした。
ですからダイヤモンドジュエリーのセッティング部分は(それ以外のところはもちろんイエローゴールドを使うことも頻繁でした)、銀が使われることが一般的でした。
また指輪は裏がクローズドになっているのが一般的です。
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こちらの指輪のショルダーは、「スプリットショルダー」と呼ばれる、ベゼルとの設置面がいくつかに別れているショルダーです。
この時代に流行したショルダーデザインの一つです。

18世紀のアンティーク指輪はフェイス部分がオリジナルでも、ショルダーやフープの部分が後年に作り変えられたものも多いですが(磨耗などによる原因もありますし、ペンダントなどが19世紀に指輪にされたと言うケースもあります)、それは裏面や接合部分を見ると分かりやすいです。
18世紀の良いオリジナルのアンティークの指輪は、このように接合面が綺麗で不自然さがまったくありません。

フランス王家とダイヤモンド

フランス17-18世紀を代表するダイヤモンドについての話をいくつかご紹介したいと思います。
フランスのブルボン王家、特にルイ14世はダイヤモンドの大コレクターとして有名でした。
ダイヤモンドというと、現在では女性の永遠の憧れとステータスというイメージが強いですが、昔は男性の権力の象徴でもありました。
残念ながら、フランスの王侯貴族が誇る誇るダイヤモンドで17世紀前半までのものは、あのフランス革命によりかなりの量が海外に流出してしまっています。
しかしながら当時のダイヤモンドをいまだにまとめて見れる場所があります。
意外にもそれはルーブル美術館です。
ブルボン朝時代のもの、ナポレオン帝政時代のものなどかなりの点数が陳列されています。
またダイヤモンドと言えば、フランス17世紀のフランスに生きたジュールマザラン(1603-1661)がいます。

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マザラン枢機卿は、ルイ14世治世の宰相などは絶対王政の地均しをしたその政治的手腕でも有名ですが、当時の超一流のダイヤモンドのコレクターでもありました。
1661年になくなったときには、合計で18個の大きなダイヤモンドが彼の元にあったそうです。
しかももっとも大きなダイヤモンドはなんと53カラット。
そのすべてはルイ14世に寄贈され。今でも一番大きいダイヤモンドはルーブル美術館に所蔵されています。

18世紀の地方ジュエリー

18世紀はまた豊かなフランス地方ジュエリーが作られた時代です。
下記↓はヴァンデ地域の指輪です。

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下記↓は南仏プロヴァンスのストマッカーです。
ストマッカーと言うとノルマンディーのイメージが強いかもしれませんがプロヴァンスでも作られており、装飾様式が微妙に異なります。
アンティークストマッカー(南仏プロヴァンス)

18世紀の鉄のジュエリー(カットスティール)

鉄も18世紀アンティークジュエリーで見られる素材の一つです。
鉄のジュエリーは17世紀初期にイギリスで始まりフランスではフランス革命前の18世紀にその全盛を迎え、その流行は19世紀前半まで続きます。
現存する鉄のアンティークジュエリーは18世紀のジュエリーか19世紀初頭のジュエリーが多いです。
当時、鉄とカットスティールでさまざまな宝飾品が作られました。
「カットスティール」とは、磨いた鉄を鋲状にして、それをぎっしりとプレートの上に敷き詰めたで作られた技法のことです。
表面が鈍い光できらめくのが味わいです。
また当時の鉄を使ったアンティークジュエリーには、カットスティールよりずっと小さな鉄にビーズのような穴を開けて、一つの布のようにしたものもあります。

アンティークロケットペンダント(18世紀、鉄製)

 鉄製セミロングネックレス(18世紀)

当時のフランスは、鉄のジュエリーの地位は非常に高く、多くの王侯貴族に愛されていました。
後年のダイヤモンドの代用品としての「マルカジット」と異なり、鉄のジュエリーは貴石や貴金属が使えない「庶民の代用品としてのジュエリー」ではないのです。
例えばナポレオンの妻のユージェニー后妃なども鉄のジュエリーを愛した一人です。
彼女の死を惜しんで作られた記念のジュエリーには、目を見張る煌びやかな貴石の宝石と共に、カットスティールのセットジュエリーが2つも入っています。
また当時の鉄のジュエリーの人気を物語るもう一つのエピソードに、鉄のジュエリーのイミテーションとして銀で鉄のジュエリーが度々作られたという話もあります。
ヴァンクリーフアーペル社の1809年製造のコレクションにも、18世紀の鉄のジュエリーを模した銀製の櫛が残っています。

18世紀のピアスについて

18世紀のピアスと言いますと、時々「そんなに古くからピアスは存在していたのですか?」と驚かれるお客様も少なくありません。
「はい、数は少ないですが18世紀からピアスは存在します(正確に言いますと17世紀で既に存在しています)」
しかし非常に少なく、また18世紀のピアスのシステム自体は着けにくいものなので後年に取替えられていることも多いです。
18世紀の指輪も見つけにくいですが、ピアスはもっと少なく大変希少です。
また18世紀のピアスはそのままでは現代では使えないことが多く、ピアスの持ち味を生かしたきちんとした修理であれば大きくマイナスにはなりません。

よく見るのが下記のような耳たぶの後ろからピアス針を通すタイプのシステムです。
針部分があまりに太かったので(18世紀のピアス針は驚くほど太いことが多いのです!)オリジナルのシステムではありますが針部分は多少削らせて頂いております。
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下記はフランス18世紀の「poissarde(フランス語で「猟師の妻」)」と呼ばれるピアスデザインです。
もちろん当時はごく一部の特権階級だけがジュエリーを身に付けることができたので、実際に猟師の妻のために作られたピアスということではありません。
18世紀と言えば後期バロック、ロココ様式で、パステル調の色合いのジュエリーも好まれました。
このピアスの色石はペーストガラス、白い部分はマザーオブパールです。
エメラルドやルビーなどの色石も用いられましたが、18世紀にはこのようなペーストガラスで色を出したジュエリーも多く作られます。
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下記は18世紀の「girandole」と呼ばれるピアスデザインです。
ダイヤモンドは、銀でセッティングされています。
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下記は当店で販売済みの18世紀のピアスですが、システムのところは後年に着けやすいものに変えられていると思われます。
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