ダイヤモンド入りのドルムーズピアス
アンティークピアスで時々見かける、耳たぶの後ろから針を差すドルムーズタイプのピアス(英語名で「スリーパーズ」)です。
かつてはフランスの市場でよく見かけたのですが(ドルムーズピアスのほとんどがフランス産です)、近年見かけることがめっきり減りました。
着けているいるのを忘れるほど軽量なものが多いドルムーズピアス。
このピアスも例外ではなく小さく軽いです。
こうしたドルムーズのピアスはゴールドだけで出来たものが多く、宝石がついているものは真珠以外は少ないですが珍しく真ん中にダイヤモンドが入っています。
小さなローズカットダイヤモンドがきらりと煌めきます。
モチーフはマーガレット
フランス菊(マーガレット)がモチーフになっています。
ゴールドを彫り込むことで付いた窪みで、マーガレットのシルエットを描いています。
軽量で小さいピアスでありながら、深い窪みでくっきりとした輪郭が出ています。
ダイヤモンドがセットされた真ん中部分には高さがあり、小さな面積の中で立体感が出ています。
全体は18カラットイエローゴールド。
19世紀後期-1900年頃のフランス製。
小さな写真をクリックすると大きな写真が切り替わります。
フランスアンティークジュエリーで、たびたびモチーフにされるマーガレット(Margarites)。
マーガレットはアフリカ西北方のカナリー諸島で原産のキク科の花で、17世紀末ヨーロッパに持ち込まれ、フランスで改良されます。
少し紛らわしい話になりますが、日本語ではデイジーは「ひなぎく」、マーガレットは「木春菊」になります。
「マーガレット」は欧米では「フランス菊」を指し英語名で「Ox-eye daisy」、デイジーの花の一種でもあります。
マーガレットとデイジーは似ていますが、一般的にデイジーの方が小さくてマーガレットは1メートルくらいまで伸びて、葉が何本にも分かれているのが特徴です。
日本のマーガレット(木春菊)。
フランスのマーガレット(フランス菊)。
フランス菊(マーガレット)は白ばかりでなく、ピンクや黄色の花もあります。
デイジーの語源は「Day's eys(太陽の目)」。
デイジーは朝にその花びらを開き、夕方には閉じます。
フランスでは、古くからデイジーは愛と関性の高いる花であったため、デイジーもしばしば指輪やネックレスなどのジュエリーのモチーフにされてきました。
下記は当店扱いのマーガレットのダイヤモンドリングで、1850年頃のかなり古い時代の作品です。
デイジー(ひなぎく)はイタリアの国花でもある花で、花弁が多いため、イギリスではその花弁を数えて恋占いに使われたことから、「measure of love (愛の物差し)」とも呼ばれていたそうです。
昔、求婚する若者はデイジー(ひなぎく)をポケットに忍ばせ、枯れるまでに 恋人のもとにたどりつけるかどうかで結婚の正否を占ったそうです。
また「彼(彼女)は、私を愛している?少し?大いに?熱烈に?」と、デイジー(ひなぎく)の花びらを一枚ずつちぎって行う占いもあります。
デイジー(ひなぎく)の花言葉は純潔です。
またアメリカでは女性の名前としても好まれました。
当店でもデイジーをモチーフにしたジュエリーは度々扱ってきましたのでいくつかご紹介しましょう。
下記は両方とも神授を用いたマーガレットのリングです。
関連してフランス語で「Billet doux」と言う言葉があります。
これは英語に訳せば「sweet not」、日本語に無理やり訳せば「甘い切符」と言う意味になります。
かつてヨーロッパでは、当事者たちにしか分からない暗号のようなメッセージを新聞に掲載すると言うことが流行しました。
フランスが発祥のこの言葉、1848年にイギリスの作家ウィリアム・メイクピース・サッカレーの「虚栄の市」と言う小説の中で英語圏にも紹介されます。
この「Billet doux」は、ジュエリーにもなりました。
往々にして花束がそのモチーフになり、禁じられた恋人たちに秘密のメッセージを伝えました。
花束のモチーフによくなったのがバラ、パンジー、デージーです。
また宝石のセレクション(宝石の頭文字によって愛を表現したり)や、ジュエリーのシルエット、彫られた文字で表現された「billet doux」も生まれました。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。