アールデコらしいロッククリスタルのロングピアス
ロッククリスタルはアールデコ期に重用された宝石の一つです。
透明無色なロッククリスタルが、白や黒などの色のコントラストを好んだアールデコジュエリーをにぴったりだったからです。
またデザイン的にもこのような縦長のロング丈のシルエットは、まさにアールデコジュエリーの典型です。
ギャルソンルックとショートヘアに身を包んだモダンガールが好んだのは、ショートカットに映える下に長く下がるタイプのドロップピアスでした。
この時代、ピアスとネックレスは縦長のものが多いです。
縦幅が何と6.2センチにも及ぶ、すっきりとした潔いシルエットはまさに時代の象徴です。
このピアスは英仏ではなく、1920年頃のオーストリアの作品です。
アールデコはオーストリア、ドイツなど少し中央ヨーロッパ寄りの国でより前衛的なデザイン性を強めます。
フランスのジュエリーにはない、アヴァンギャルドなデザイン性が今見てもしびれるほどかっこいいです。
カンティーユ細工が施された華やかな留め具部分
このピアスのもう一つの魅力は、留め具部分です。
無色透明のロッククリスタルとは対照的な艶やかなイエローゴールドの色の対比も鮮やかです。
留め具には金細工がぎっしり施されており、この部分には非常に手間のかかるカンティーユ金細工が施されています。
カンティーユ金細工は基本的には19世紀前半によく見られた金細工技法ですが、非常に手間がかかる技法ですので、それをこの時代に再現しているのは例外的です。
鮮やかなシルエット、色合いの対比、華やかな金細工。
すべてのコントラストが美しい、見映えのするピアスです。
オーストリアの作品ですので、14カラットゴールドになります。
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ロッククリスタルとは、無色透明な水晶のことです。
ギリシア語で「 krystallos 」は「氷」を意味し、ロッククリスタルの名前の起源になっています。
水晶の内、不透明なものをクォーツ(石英)、透明なものを水晶と呼びます。
透明で無色なロッククリスタルは、古代「氷が化石化」したものと信じられていました。
ロッククリスタルは古代より彫り物をするにも好まれ、古代エジプト、イラク、イランなどそのようなジュエリーが見つかっています。
ヨーロッパでは1650年ぐらいからジョージアン王朝時代に至るまで、宝飾家は表面がフラットになったクリスタルの上に彫りを施して、側面にファセットを入れました。
このようなロッククリスタルをジュエリーは「Stuart Crystals」と呼ばれています。
下記はロッククリスタルに彫りの入ったペンダント。
シャルル1世が描かれています。
(c) Trustees of the British Museum
この時代、ロッククリスタルは指輪のベゼルやピアス、クラスプ部分やカフスに用いられました。
ヴィクトリア時代になると、ロッククリスタルに彫りを施してシール(印章)やカメオ、インタリオにするのが流行しました。
そしてロッククリスタルを語る上で欠かせないのが、アールデコ期です。
幾何学的な形に切りとられたロッククリスタルが指輪やブローチ、ペンダント、ブレスレットのプレートとして重用されます。
ロッククリスタルのプレートの中心にダイヤモンドなどの宝石がセットされることもしばしばでした。
下記は当店扱いのオーストリアのアールデコのピアス。
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