ブルーサファイアのアンティークピアスは滅多に出てきません!
1900年頃のフランス製。
ブルーサファイアはアンティークジュエリーの中でもお好きな方の多い宝石ですがそもそもとても数が少なく、しかも出てきましても指輪のことが多いです。
これまで長年ディーラーをやってきて、部分的であってもブルーサファイアの入ったピアスを仕入れることができたかを改めて数えてみましたらこちらのピアスでようやく4つ目でした。
それぐらい少ないのです。
明るい爽やかな綺麗な青色のブルーサファイアです。
アンティークのブルーサファイアは色の調整が施されていないため、もう少し濃かったりあるいは薄かったりすることが多いのですが、とても良い色です。
今の所謂ブルーサファイアの色に非常に似ていますが、僅かに色調の明るい青色。
アンティークのサファイアの色は二つとして同じ色がないのではないかと思うぐらい豊かです。
左右それぞれ6石のダイヤモンドに囲まれています。
ダイヤモンドはローズカットされていて、ゴールドの台座にぐるりと囲まれるように覆輪留めされています。
この覆輪留めが意外なほど高さがあり、ダイヤモンドの更に下までゴールドの筒が伸びています。
ほとんど光など入らない作りなのですが、不思議なほどキラリキラリとダイヤモンドが光ります。
ローズカットで非常に長い覆輪でそれでもここまで光るダイヤモンド、よほどクオリティーが良いのです。
ルーペで見ますとそれなりの内包物を含んでいて色も完全な無色透明ではないのに、それなのにこの煌き。
アンティークのダイヤモンドの輝きはミステリアスです。
星空を思わせる、ミステリアスな美しさ
全体はお花の形になっていますが、星のようにも見えるどこか「宇宙の神秘」を感じさせる美しさです。
小さなピアスの中で、ベースとなる台座部分、ダイヤモンド部分、サファイア部分と3段階に高低をつけています。
更にモチーフの間と間には透かしが入っていて、「高低差x透かしの相乗効果」で他のジュエリーにない独特の空間美が生まれています。
また外縁の台座は表面から、ルーペで見ても驚くほど細かな彫金が施されており、程よくつや消しがされています。
台座を横から見れば、透かしが台座の下にまで入っていることに気づきます。
直径わずか1センチほどの小さなスペースの中で繰り広げられる、ありとあらゆる匠の技、そしてデザインの素晴らしさと宝石の美しさ。
このピアスはぎゅっと凝縮されたような可愛さと美しさに、私自身完全に一目ぼれでした。
フランスアンティークジュエリーらしさがよく出ていて、またシェルシュミディらしいセレクションのジュエリーだと思います。
地金は18金ゴールド。
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ブルーサファイヤとコランダム
アンティークジュエリーの貴石の中で、もっとも高い価値がありもっとも人気があるの宝石の一つがブルーサファイヤ。
9月の誕生石であるサファイアは、ルビーと同じくコランダム系の鉱物の変種です。
赤いコランダム(鉱物名)をルビーと呼び、その他はすべての色名を冠してサファイアと呼んでいます(宝石名)。
色によってピンクサファイア、ブラックサファイア、ブルーサファイアなどと呼びます。
鉱物名がコランダム、宝石名がサファイアになります。
サファイヤと言う人もサファイアと言う人も両方いて、両方正しいです。
アンティークジュエリーで使われているコランダム(サファイア)には、ブルーサファイアとルビー。
そしてピンクサファイア、ブラウンサファイアなど中間色のサファイアもわずかですが存在します。
良いサファイヤとは
良質なブルーサファイヤの特徴は、主に下記になります。
1)透明感があること。
2)色は、深く澄んだ青色やわずかに紫色味を帯びた中明度の青色がもっとも良い。
3)深み
濃い青色ほどよいものとされています。
ブルーサファイヤの加熱処理
現在産出されるブルーサファイヤのほとんどは、日常的に超高温での加熱が行われているので本来の色合いを示すものは少ないです。
ちなみにこの超高温での加熱(1500度ぐらい)によるサファイヤの色の調整が始まったのは1960年頃からであると言われています。
現代ブルーサファイヤに行われている人工的なトリートメントとしては、超高温での熱加工、加熱だけでは変わらないサファイヤに外部からの拡散加熱処理を施すという技術があります。
下記は当店で販売済みの「コーンフラワーブルー(矢車草の花の青色)色」のブルーサファイヤです。
現代のような超高温での加熱が行われていなかった当時のサファイヤは、宝石本来の色を見ることができます。
サファイヤの産地
ブルーサファイヤと言いますと、時々産地についてお客様からお問い合わせを頂きます。
最高級のブルーサファイヤの産地として知られるのは、カシミアです。
ただしカシミールサファイヤは1887年には鉱山が枯渇してしまっていて、アンティークジュエリーでもカシミアさんのブルーサファイヤはまずお目にかかることがありません。
うっとりするような、鮮やかなベルベット調のブルーの色彩は、カシミア地域のサファイヤにしか見られません。
カシミール以外では、セイロンあるいはビルマのものが使われました。
深みのある美しいロイヤルブルーカラーの良質なセイロンサファイアは、サファイアの最高峰である「カシミール産のブルーサファイア」に引けをとらない美しさ。
下記の2点は当店で販売済みのセイロンサファイヤのリングです。
しかしセイロンサファイヤもとても数は少なく、多くのアンティークジュエリーで使われている特に19世紀までのブルーサファイヤの多くがビルマ産です。
そしてビルマ産ルビーも非常に美しいです。
下記は19世紀後期のビルマ産ブルーサファイヤのブローチです。
現代のブルーサファイヤの産地
ちなみに現代ではタイ産のブルーサファイアが多く出回っていますが、アンティークジュエリーにおいてタイ産のサファイヤが使われることはないです。
良質で天然無加工の美しいブルーサファイアを入手したいのなら、アンティークジュエリーの中で、お探しになることをお薦めいたします。
歴史的に有名なブルーサファイヤのジュエリー
フランスアンティークジュエリーにおいてブルーサファイヤと言えばナポレオンの妻、ジョゼフィーヌが有名です。
ナポレオンがドイツ征服に成功したとき、ジョセフィーヌのために手に入れたものに「カール大帝の守護石のサファイア」があります。
(寺院側は敬意を称して見せるだけのつもりだったのですが、ジョゼフィーヌが所望してしまい、やむをえなく寺院側は渡したという話です)。
ジョゼフィーヌはこの宝石の歴史的価値を知らず、単純に宝石好きの夫がさぞ喜ぶだろうと考えてサファイアを所望したということですが、実は「持つ者を必ず皇帝にする」と信じられていた素晴らしい秘宝でした。
カール大帝の父、ピピンがイタリア半島をローマ教皇領として法王に謙譲した時法王からお礼にもらったという歴史的にも超一級の由緒あるものでした。
そんな素晴らしい秘宝をナポレオンは簡単に妻のジョゼフィーヌに渡すのですが、それには理由があったと言われています。
妻の浮気をおさめるためです。
ジョゼフィーヌは大変な浮気性で、サファイアは古来より浮気を封じ込めると信じられていたのです。
そのせいか、ジョゼフィーヌのジュエリーには非常に豪華なブルーサファイヤのジュエリーをいくつも所有していました。
下記は、1806年にHenri Francois Riesenerが描いたジョゼフィーヌの自画像。
胸元にブルーサファイヤとダイヤモンドのネックレスが煌きます。
ブルーサファイヤのエンゲージメントリング
また日本では婚約指輪と言うとダイヤモンドの印象がとても強いですが、ヨーロッパやアメリカではダイヤモンドに次いでブルーサファイヤを婚約指輪にする人も多いです。
イギリス、ウィリアム王子がケイト皇太子妃に贈ったのがやはりブルーサファイヤの指輪でした。
元々はウィリアム王子の亡き母、ダイアナ元皇太子妃のご婚約指輪だったサファイアのご婚約指輪です。
アンティークというほどは古くははありませんが、真新しいブランドの指輪などを贈るのではなく、一家の伝統が刻まれた指輪を受け継いでいくというのはやはりイギリス皇室らしい選択ですね。
ヨーロッパでは、結婚する際に花嫁がブルーの物を身に付けていくと幸せになれるという言い伝えもあるそうです。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。