アンティークジュエリーでも滅多に見ることのないペアシェイプの天然真珠
ペアシェイプ(洋ナシ形)の天然真珠が美しいブローチです。
「天然真珠で最も良い形は真円で、真円の真珠はネックレスやブローチ、ヘアオーナメントなどに向く。
しかしもしペアシェイプの真珠でそれなりの大きさのものがあったらそれは欠点とはみなされない。
なぜならドロップイヤリングやソリテールリング、その他多くのジュエリーによく合うかもしれないからだ。」
上記は1750年に書かれた「A Treatise of Diamonds and Pearls (David Jeffries著)」に書かれた一説です。
18世紀に既にパールシェイプの天然真珠がしっかり評価されていたことが分かります。
しかしながらアンティークジュエリーで見つけることのできる天然真珠の大半が円形で、美しい雫形(ペアシェイプ)の真珠は滅多に見ることがございません。
そもそも美しい天然真珠は(正確には初期の頃の養殖も含めて古い時代の良質な真珠は)近年ますます希少になり価格が暴騰し、市場に流通する量が激減してきています。
その中でペアシェイプの真珠、しかもこのブローチのように、7石もの雫形の天然真珠と言いますと今後ご紹介できることはまず難しいと思うのです。
夜空の星のように光るダイヤモンド、葡萄のように垂れ下がる真珠
シンプルなバーブローチのようであって、面白いデザインです。
約4センチの細いバー部分に、ところ狭しとぎっしり埋め込まれているのはダイヤモンド。
あまりにさりげなくそして銀の台座に奥深く埋め込まれているので良い意味で目立ちませんが、29石ものローズカットダイヤモンドがセットされています。
この時代の小粒なローズカットダイヤモンドにありがちなカッティングの乱れなどもなく、ファセットも綺麗に入っていますし、2ミリ弱と意外なほど粒も大きいとても綺麗なダイヤモンドです。
ぎっしりと隙間なく埋め込まれたダイヤモンドは夜空に浮かぶ星のようです。
そしてそんなダイヤモンドの密なセッティングとは対照的に、真珠はそれぞれ葡萄のように垂れています。
「真珠=デリケート」というイメージをお持ちの方も多いですから、この宙に浮かんだようなセッティングの真珠は取れてしまうのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれません。
しかし真珠の留め方も、堅牢です。
ネジ針がそれぞれの真珠に深く挿され、決して細くはないその針がバーとしっかり溶接されているのです。
これだけ良質な宝石を贅沢に用いながらも、この時代でしたから銀製です。
銀の渋みとダイヤモンドの透明な煌き、真珠のシルキーな光沢・・・。
過去から届いた贈り物のような小粒ながらアンティークらしい作品です。
19世紀中ー後期のフランス製。
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アンティークジュエリーに詳しい方でしたら「昔は養殖の技術がなかったのだから、アンティークジュエリーで使われている真珠は全て天然真珠ですよ」といったことを聞かれたことがあるでしょう。
これはアンティークジュエリーの業界のセール文句になっているようですが必ずしも正しくはありません。
アンティークジュエリーに使われている真珠の多くが天然真珠です。
しかし全てが天然真珠ではありません。
上記の「アンティーク真珠=全て天然」説はヨーロッパで養殖真珠が本格的に市場に出始めるのは、一般的に1920年代頃からと言われていますからそれに基づいた論拠ということになります。
しかし養殖真珠はそれ以前にヨーロッパに存在し、一説には1880年頃から存在していたと言われています。
実際に1900年頃のヨーロッパのアンティークジュエリーから一部に使われています。
例えば下記をご覧ください。
こちらはフランスの有名なジュエリー専門のオークション会社のカタログからの抜粋です。
クリスティーズをはじめ世界の著名なオークション会社の競売では、真珠に関して天然か養殖か明記します。
この「真珠とダイヤモンドの指輪」は「1900年頃に製作されたと」推定されていますが、ジュエリーの説明文のところに「Perles de culture(養殖真珠)」と言う記載があります。
同じカタログから別の事例をご紹介いたしましょう。
こちらは花綱模様の美しい典型的なベルエポック時代のダイヤモンドと真珠のペンダントです。
こちらは1910年頃の推定と先ほどの作品より僅かに後年になりますが、こちらは「une perle en pampille(天然真珠の房飾り)」と記載があります。
天然真珠になります。
天然真珠の評価がもっとも高かったのは、20世紀の初頭です。
1900-1920年頃は非常に美しい天然真珠のジュエリーが作られた時代であるのと同時に、初期の頃の養殖真珠がジュエリーに使われはじめた時代でもあります。
この時代に天然真珠として最大に近い大きさの最高級の天然真珠を使ったロングネックレスは、現在の貨幣価値に換算して約10億円で取引されたと言う記録が残っています。
養殖真珠が多く市場に出回るようになったのは、1920年頃からです。
1940年代にはもう養殖真珠が凌駕していき戦後は言うに及びませんので、美しい天然真珠が用いられたアンティークジュエリーを探すのであればやはり1930年代頃までというべきでしょう。
「養殖真珠」といっても本当の初期の頃(20世紀初頭)の養殖真珠は真珠層が厚くとても出来がいいです。
例えば下記は、1920年前後に英国で製作された養殖真珠のネックレス。
真珠の粒は0.8センチ程です。
現代の養殖真珠とは雲泥のレベルの差があり、それはそれで近年では高額に取引をされています。
天然真珠への評価が高まる昨今では、初期の頃の養殖真珠はヨーロッパのオークション等で非常に高価な値段がついてきています。
養殖真珠へのイメージが大きく変わるのではないでしょうか?
アンティーク真珠に関して更に詳しい情報は、アンティーク真珠についてをご参考ください。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
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シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。